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失われた米国投票システムへの信頼- オンライン投票の導入は必要か

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法廷闘争の可能性も

昨日のブログで、「敗者は潔く負けを認めるべきだ」と書きましたが、トランプ大統領は、たとえバイデン候補が勝敗ラインである270人に達したとしても、「今回の選挙には不正があった」として、大統領の座を譲るつもりはなさそうです。

降りない理由はご本人の性格もありますが、彼が強気になるのは、今回同時に行われた連邦議会選挙の結果が背景にあります。

上院で過半数を維持する可能性が高い上に、大手メディアが議席を減らすと予想していた下院では逆に議席を伸ばしているのです。

議会選挙と大統領選挙は別物ですが、議会選挙にトランプ大統領の影響があったことは否めません。

バイデン候補が今回の選挙で勝ちたいのであれば、大差で勝たなければならないと言われていましたが、まさにその通りになってしまいました。

これだけ僅差の勝負になってしまいますと、法廷闘争に巻き込まれる可能性が出てきます。

同候補も法廷闘争を覚悟した様で、「史上最大の弁護団を用意した。献金をお願いする。」と述べました。

史上最大の弁護団の為に献金を依頼するとは、本当にお金の無駄遣いですね。

英誌Economistに依れば、バイデン候補は既に史上最大の10億ドル(1,000億円)を超える政治資金を使っているんですよ。喜ぶのは弁護士とメディアだけでしょう。

それにしても、今回の大統領選を見ていて、米国の選挙システムが旧態依然としている事に驚きました。

郵便投票のなりすましを防止する手立ては全く十分ではありませんでした。

この脆弱なシステムを至急改善しなければ、本当に民意を反映できるとは言えません。

この問題について、米紙「Foreign Policy」が「After This U.S. Election, the Case for Online Voting Is Stronger Than Ever」という記事を掲載しましたので、ご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要約

米国の選挙結果をめぐる対立は、有権者にとって苛立たしく、アメリカ人にとって恥ずかしいことであり、世界の民主主義に大きなダメージを与えています。

世界最古の民主主義国家(米国は200年以上前から憲法上の民主主義を継続的に維持している唯一の国です)として、米国は民主主義が機能している事を世界に示す義務を負っています。

今回の大統領選で民主主義が機能したかどうかは議論の余地があります。

最終的な結果がどうであれ、選挙プロセスについて提起された問題は引き続き検討する必要があるでしょう。

 

米国はテクノロジーを活用して民主主義を復活させる必要があります。

オンライン投票は、透明性が高く、高速で、信頼性の高い結果を提供できます。

また、投票率を高めることもできます。

2016年の選挙で投票した30歳未満の有権者(投票ブースよりもスクリーンを好む年齢層)の投票率は50%以下です。

今回、彼らの投票率は高くなる可能性がありますが、それでも西側の民主主義国において特に高いとは言えません。

様々な階層の投票者が投票しなければ、民主主義が機能しているとは言えません。

 

一部の批評家たちは、オンライン投票が、詐欺を引き起こし、ロシアや中国のハッカーが選挙を致命的に混乱させる恐れが高まると主張します。

しかし、プロセスを安全に保つためのテクノロジーはすでに存在しています。

私たちはオンラインで銀行を利用していますが、口座残高が突然ゼロになったりはしません。

米国にはネットワーク化された原子力潜水艦があり、それらがハッキングされるのを防ぐ方法を既に確立しています。

 

その様な軍事レベルの技術を、投票についても採用する事ができます。

オンライン投票は試験段階ではありません。

エストニアは2005年以来、有権者全員にオンライン投票を実施しています。

この国はロシアのハッカーの標的になっていますが、徹底的なテストとエンドツーエンド(通信データが全て暗号化される技術)の検証により、システムの整合性に関する懸念が薄らいでいます。

米国では、ウェストバージニア州とデラウェア州が予備選挙のオンライン投票をすでに実施しており、詐欺やハッキングのケースは見当たりません。

 

オンライン投票を採用することにより、米国は有権者に投票システムへの信頼を与えることができます。

有権者は数日(または数週間)ではなく、数時間で結果を知ることができます。

そのようなシステムは、通常は投票しない人々が政治に関与することを可能にし、米国は政治システムの見本として再び世界をリードする立場に立つでしょう。

 

オンライン投票にはもう1つの利点があります。

それは、BigTech(巨大IT企業)がその社会的目的を見つけることを可能にする事です。

ますます、BigTechは政治的な主張を押さえつけたり或いは拡散させる役割を果たす様になっていますが、彼らのユニークな能力は、アメリカの民主主義を機能させるためのインフラを提供するためによりよく使われるでしょう。

その選挙システムは、中立的なオブザーバーだけでなく、民主、共和両党によるリアルタイムの監査に開放されます。

今回の選挙を見れば、アメリカの民主主義は変革が必要であることは明らかです。

多くの組織がデジタル化を経験している今、米国政府自身が参加する時が来ました。

デジタル化の必要性と乗り越えるべき障害

米国は現在の旧式の選挙システムを早期に変革すべきと思います。

コロナの為に例外的に郵便投票する投票者が増えた今回の大統領選は、調べれば調べるほど不正が見つかると思われ、これは投票結果への疑念を国民に抱かせます。

投票システムへの不信が高まれば、多数決の結果に従うという民主主義の根幹を揺るがす事になりかねません。

 

この観点から言えば、オンライン投票はすぐにでも取り入れるべき対策と思います。

技術的には既に十分可能と思いますが、幾つか乗り越えるべき障害もあると思います。

先ず、本人認証をどうするかという点です。

全体主義国家である中国などであれば、簡単に顔認証を取り入れる事が可能ですが、民主主義国家である米国は個人情報の扱いに慎重ですので、本人認証をどうするかという問題を解決する必要があります。

もう一つは、パソコンやスマホの扱いに不慣れな人、特に老人や障害者に対する対応です。

今回の選挙でも老人ホームなどで、投票用紙をかき集め、老人の代わりに郵便投票するVote Harvestingが横行したらしいですが、パソコンになると老人にとっては更にハードルが上がります。

パソコンの取り扱いを手伝うと偽って老人の代わりに投票を行う詐欺も増えるかも知れません。

 

幾つか問題はありますが、即座にこの問題解決に取り掛かってもらいたいと思います。米国で民主主義が機能しなければ、他国での民主主義も揺らぎます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。