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バイデン氏当選が世界に与える影響 - トルコ

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バイデン氏当選に喜べないトルコ

昨日、バイデン氏当選がサウジアラビアにとって悪夢である事をお伝えしますが、そのサウジアラビアと中東地域において激しく対立しているのはトルコです。

イスラム教スンニ派の盟主の地位を争う両国の対立は最近益々激しさを増しています。

敵の敵は味方という理屈からすれば、サウジアラビアと溝が深まるバイデン政権はトルコにとって好都合な様な気がしますが、実はそうでもありません。

バイデン政権誕生は、トルコにとっては、具合が悪そうです。

その理由は主に二つあります。

バイデン政権が最も重視しそうなのは欧州との和解です。

トランプ時代に傷ついた欧州との関係修復に注力する事は、選挙戦中もバイデン氏の口から何度も聞かされました。

バイデン候補当確の報に真っ先に反応したのは、フランスのマクロン大統領でした。

トランプ氏との激しい口論に辟易していたマクロン氏にとってみれば、バイデン氏の登場は願ってもない事でしょう。

このマクロン大統領と、最近中東、アフリカ地域においてことごとく、対立しているのが、エルドアン大統領です。

主なものだけでも次の様な問題で対立しています。

  1. アゼルバイジャンとアルメニアの武力衝突
  2. リビア内戦
  3. シリア内戦
  4. キプロス近海の天然資源問題

これに加えて、先日のイスラム教風刺画事件では、表現の自由を唱えるマクロン大統領の事を「精神鑑定を受けた方が良い」とまでエルドアン大統領は批判し、フランス製品のボイコット運動がトルコから他のイスラム系諸国に広がっています。

バイデン氏はおそらくマクロン大統領の肩を持つと思われますので、トルコは不利な立場に追い込まれそうです。

もう一つトルコにとって気がかりな点は、クルド族に対するバイデン氏の見方です。

シリアの内戦では、米国の意を受けて、アサド政権に戦いを挑み、多くの犠牲者をクルド族は出しましたが、最後にはトランプ政権に裏切られた格好になりました。

バイデン氏はクルド族に好意的ですので、トルコでテロを繰り広げるクルド労働党(PKK)と気脈を通じるシリアのクルド系組織に支援を与える可能性が高いと思われます。

トルコの抱える内憂

実は、エルドアン大統領は、現在、国内でも深刻な問題に直面しています。

トルコリラは下落を続け、遂に1ドル8リラを突破しました。

エルドアン大統領は中央銀行総裁を更迭しました。

中銀の総裁の首を挿げ替えるのは、これが初めてではありませんので、今回もこれで一旦事態は落ち着くかと思いましたが、事は思いがけない方向に展開しました。

自らの娘婿であるアルバイラック財務大臣が体調不良を理由に辞任を表明したのです。

このアルバイラック財務大臣の突然の辞任は、トルコ社会に大きな衝撃を広げている様です。

この問題を取り上げた仏紙Les Echosは次の様に伝えています。

仏紙Les Echos記事抜粋

「更迭された中銀総裁は、年初から自国通過防衛の為に、膨大な外貨準備金を流出させ、その額を半分にしました。

しかし、その様な試みにも拘らず、 今年トルコリラは30%下落し、金曜日に1ドルあたり8.5という歴史的な最低値を記録しました。」

 

2015年から2018年に財務省次官の時代に投資家から高く評価されたNaciAgbal(52歳)の中銀総裁任命から数時間後、2018年から財務大臣を務めたエルドアン大統領の義理の息子であるアルバイラック氏が辞任しました。

同氏は、2003年以来権力を握っているエルドアン大統領の後継者候補として見なされていた為、国内に大きな衝撃をもたらしました。」

米外交の限界

これまでも幾多の修羅場を潜り抜けてきたエルドアン大統領にとってしても、今回直面している問題は相当難度が高いと思われます。

しかし、エルドアン大統領にとって救いがあるとすれば、バイデン氏が中東やアフリカといった地域において、本腰を入れるかと言えばかなり疑わしい点です。

オバマ大統領が始め、トランプ大統領が継承した中東離れをバイデン候補は加速化すると思われますので、米軍が本国から遠く離れた地域の紛争に介入してくる可能性は少ないと思われます。

バイデン候補の中東、アフリカ地域への関与は口先介入に終わる可能性が高いのです。

 

そうなれば、ロシアやトルコと言った地域大国にしてみれば、やりようがあります。

そんな現実を象徴する様なニュースが飛び込んできました。

昨日、アゼルバイジャンとアルメニアの間に停戦合意がなされたのです。

この合意は事実上、アゼルバイジャンの勝利であり、ロシア、トルコの介入により決定されました。

アメリカやフランスの影は極めて薄かったのが印象的でした。

バイデン政権下でも、この例が示す様に、米国はもはや世界の紛争の仲介役をこなす事は困難になっていくでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございます。