祝電を送らない理由
バイデン氏に祝電を送らない国の一つに中国があります。
バイデン氏に祝電を送らない理由を、中国共産党系の英字新聞である「Global Times」は、「中国は米国大統領選のごたごたに巻き込まれない様に距離を置く必要がある」と説明しています。
一方、米誌Foreign Policyは次の様に伝えています。
「中国政府はトランプ政権が最後まで何をやるか心配で、対立候補のバイデン氏に祝意を表明する事を避けている様です。
中国政府を更に神経質にさせたのは、トランプ大統領によるエスパー国防長官の更迭でした。
中国の通信社Sofuは『国防長官の更迭はトランプ政権が、最後に、イランなど他国への攻撃を企てている事を意味している』と伝えました。
中国はトランプ大統領の企てに疑心暗鬼になり、最高水準の警戒を払っています。」
確かに突然のエスパー国防長官の更迭は意外であり、中国のみならず北朝鮮やイランの政府も疑心暗鬼になっているものと思われます。
そんな中国にポンペオ国務長官が強烈な一撃を浴びせました。「台湾は中国の一部では無い」と発言したのです。
この国務長官の発言は、中国を更に不安にさせていると思われます。
中国政府は、バイデン候補の当選を、内心どの様に見ているのでしょうか。
米誌Foreign Affairsが「Hopes and Doubts in Beijing」(北京の希望と疑念)と題して論文を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Foreign Affairs論文要旨
北京が米国大統領選挙の結果にこれほど細心の注意を払った事はかつてありません。
中国の指導者たちは、ホワイトハウスを誰が占領しても、米中の競合関係は変わらないと認識しています。
しかし、彼らは一方で、トランプ大統領に対するバイデン氏の勝利は、両国の憂慮すべき衝突を少なくとも遅らせる事が出来ると信じています。
悪化した両国関係
トランプ大統領の任期中、両国の関係は驚くべき速さで悪化しました。
貿易戦争は摩擦の最も顕著な例でしたが、より大きな戦略的緊張も紛争のリスクを高めました。
中国の指導部は、トランプが主導権を握っている限り、米国との関係を改善する見通しについて悲観的です。
台湾に対するトランプ政権の行動は、中国人にとって特に懸念されてきました。
中国政府は、冷戦時代に、米国がソ連を打ち負かしたのとほぼ同じ方法で、トランプ政権は中国を打ち負かそうとしていると信じています。
ポンペオ国務長官やナバロ顧問を含む一部のトランプ当局者は、中国の政権交代を要求しました。
中国の指導者たちは、中国に対する米国の敵意がトランプ政権に限定されていないことを理解しています。
共和党と民主党の両方が中国に厳しい矛先を向け、米国のサプライチェーンを中国から切り離すことを提唱しています。
中国の希望
一方、多くの中国当局者は、ワシントンに反中コンセンサスがあるとは思っていません。
ペンス副大統領もカマラ・ハリス氏も、米国が中国をライバル、または敵と見なしているかどうかと言う質問について明確な答えを出すことができなかった副大統領テレビ討論会のやり取りは注目すべきです。
バイデンはまた、トランプの中国政策を失敗として批判しており、次期政権がデカップリングを含むトランプの立場すべてを採用するわけではない事を中国当局は認識しています。
大統領討論会でバイデン氏は習近平と中国共産党について厳しく言及しましたが、中国当局はこれを米国国内向けの発言として理解しています。
中国における米国通は、共和党の方が、民主党よりも友好的で働きやすいということはもはや真実ではないことに気づきました。
多くの米国世論調査は、共和党員が民主党員よりもはるかに中国に対して敵対的であることを示しています。
バイデン氏の外交政策に沿って、中国政府は、世界の公衆衛生(特に新型コロナに対する共通の取組)、気候変動、核不拡散、テロ対策などの問題に協力して取り組むことに関心を持っています。
さらに、アフガニスタン、朝鮮半島、および中東の地政学的課題に取り組む際に米国と協力する可能性を視野に入れています。
リセットの難しさ
しかし、中国政府が米国民主党政権と協力する傾向が強いとしても、二国間関係をリセットするのは難しいでしょう。
中国の指導者たちは、米中関係の悪化が、自分たちのせいだとは思っていません。
米国側では、中国に対する一般市民の敵意が、新政権の和解の試みに対する大きな障壁となるでしょう。
選挙後、共和党が上院を支配する可能性も、対中政策の変更をさらに困難にします。
中国の指導者たちは、党派の分裂を埋めようと、バイデン政権が共和党と共に攻撃的な対中政策を取るかもしれないことを恐れています。
バイデン政権は、香港、チベット、新疆ウイグル自治区での中国の人権侵害についての批判を続けるでしょう。
中国政府がこれらの問題に関して、米国と国際社会の要求を満たすとは思えません。
中国における米国通は、「バイデン政権は米中関係をより生産的なものにする可能性があるものの、最終的に米中の対立を止める事は難しい」と見ています。
世界における中国の影響力の高まりと米国の不安定な国内政治環境は、二国間関係を修正する事をより困難にするでしょう。
妥協の名人バイデン氏
バイデン氏は、上院議員そして副大統領を長く勤めましたが、何かこれといった業績が見当たりません。
その代わり、共和、民主両党のコンセンサスを作る上で、大変貢献したと言われています。いってみれば妥協策を作ることに長けているのです。
政治家としてこの才能は貴重です。
彼が大統領になれば、共和党が多数派をなすであろう上院と妥協策を作らなければ、政権を運営する事ができません。
上下院とも民主、共和の勢力が拮抗しそうですので、彼が持つコンセンサス作りの才能が生かされそうです。
対中政策においても、議会の支持を得て、国としてのコンセンサスを作り上げ、香港や台湾、ウイグルの問題などにしっかり対応してもらいたいと思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。