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英誌エコノミストが語るワクチン開発の成果と今後の課題

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ワクチン遂に開発される

先週ファイザー社によって発表されたワクチン開発のニュースは世界中を駆け巡りました。

しかも、ワクチン接種で得られる抗体の有効性が90%以上という情報は、期待していた以上のものでした。

これで、多くの人が救われると思いましたが、未だに乗り越えるべき障害いくつもある様です。

この件について、英誌Economistが「The promise of new vaccine is immense」(新しいワクチンは極めて有望だ)と題する記事を発表しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

1954年、はしかワクチンは認可までに9年を要しました。

ポリオワクチンについては20年が必要でした。

新型コロナウイルスは何と1年以内に認可が下りそうです。

 

驚くべきは、認可に必要な時間だけではありません。

ファイザーとBioNTechによって発表された最終段階の試験結果は、ワクチン接種が新型コロナを発症する可能性を90%以上削減することを示唆しています。

これは、40~60%しかないインフルエンザワクチンより遥かに優れています。

暗い冬に突然、希望の光が見えてきました。

 

当然のことながら、このニュースは、株式市場を強気にさせました。

投資家は、すべてコロナの恩恵を受けていたハイテク企業への投資を、ディズニー、カーニバル(クルーズ船運航会社)などに切り替えました。

OECDは、2021年の早期ワクチン接種による世界的な成長は7%であり、そうでない場合より2パーセント高くなると考えています。

 

ファイザーの結果は、他のワクチンも機能することを示唆しています。

320以上が開発中であり、いくつかは最終的な試験段階にあります。

ほとんどの場合、ファイザーのように、ウイルスが細胞に侵入するためのスパイクタンパク質に焦点を当てています。

ファイザーのワクチンは、有望な新技術を使用した最初のワクチンでもあります。

多くのワクチンは、ウイルスタンパク質の不活性フラグメントを導入することによって免疫系を刺激しますが、これは、RNAの形式で遺伝子命令を挿入することにより、体にウイルスタンパク質自体を組成させます。

RNAは編集できるため、スパイクタンパク質が変異した場合にワクチンを微調整できます。

 

このワクチンは国際的な協力で開発されました。

トルコの第一世代の移民によって設立された小さなドイツの会社(BionTech社)は、ギリシャの最高経営責任が率いるアメリカの多国籍企業(ファイザー)とうまく協力してきました。

 

しかし、素晴らしいニュースにもかかわらず、まだ乗り越えるべき障壁はあります。

今回発表された内容は、44,000人のボランティアの中からのcovid-19の94の症候性症例に基づく初期の結果です。

従って、ワクチンが重症または軽度の症例を阻止するのか、免疫系が弱い高齢者を保護するのかは明らかではありません。

接種された人々がまだ接種を受けていない人々に致命的な感染を引き起こす可能性があるかどうかも知られていません。

そして、有益な効果がどれくらい続くかを語るのは時期尚早です。

今後数週間で、試験は安全であると宣言されるはずですが、ワクチンの更なるモニタリングが必要になります。

両社は、免疫は少なくとも1年間続くと予測しています。

90%以上の有効性は非常に高いため、このワクチンはすべての年齢層に少なくともある程度の保護を提供する可能性があります。

 

世界がデータを待っている間、配布に取り組む必要があります。

ワクチンは来年不足するでしょう。

ファイザーのワクチンは2回の投与が必要です。

同社は、2020年には最大5,000万回、来年には13億回の投与が可能になると述べています。それは多い様に聞こえますが、アメリカだけでも、2,000万人を超える消防士、医療スタッフ、介護施設の労働者、および現役軍人がいます。

おそらく、70歳以上の人々の3分の2を含む、世界の78億人の5分の1が、深刻な感染のリスクを負っています。

地球全体に一度にワクチンを接種しようとした例は過去にありません。

接種が増えるにつれ、注射器、スタッフ等が不足する可能性があります。

 

さらに悪いことに、ファイザーのワクチンは、マイナス70°C以下の温度で保管する必要があります。

同社は特別なコールドチェーンを構築していますが、ワクチン搬送は依然として困難です。

ワクチンは一回の搬送で最低でも975人分提供されるため、それだけの数の人々を先ず集め、21日後に二回目の接種のために同じ人々を再び集める必要があります。

どれだけのワクチンが無駄になるかは誰にもわかりません。

 

ワクチンの不足が回避できない限り、政府が優先順位を定める必要があります。

シミュレーションに依れば、50の豊かな国が80%の効果がある20億回分のワクチンを投与した場合、世界の死者の3分の1を防ぐことを予測しています。

ワクチンが豊かな国と貧しい国の人口に応じて供給された場合、防げる死亡者数はほぼ2倍になります。

貧しい国では、特別なコールドチェーンのコストが高すぎると感じるかもしれません。

 

これらの問題に対する国際的な解決法は、各国への平等なアクセスを促進するプログラムであるCOVAXです。

しかし、最終的な解決策はより多くの異なった性質を持つワクチンの開発でしょう。

市販の冷蔵庫で保管できるもの、高齢者に効果的なもの、より長い免疫を与えるもの、一回の接種で良いものなどが期待されます。

十分なワクチンが用意されても、ワクチン接種に対する嫌悪感が障害になります。

初期の報告によると、ワクチン接種は熱や痛みを引き起こし、それが一部の人々に接種をためらわせる可能性があります。救いは、90%の有効性がワクチン接種をより魅力的にすることです。



次の数ヶ月は厳しいでしょう。

世界で記録された死亡率は、4月のピークを超えて急増しています。

政府はワクチン搬送に苦労するでしょう。

アメリカは豊かで、世界クラスの薬を持っています。しかし、ウイルスがそこでは猛威を振るっていて、政権の移行が不必要な混乱と遅延につながる可能性があります。

ワクチンが手元にあるのに、命を奪われる事は特に残酷でしょう。

科学はウイルスを退治するために貢献しました。これからは社会が科学の成果をどの様に使うかが問われています。

ワクチン政策でわかる大国の器量

やっかいな新型コロナに有効なワクチンが漸く開発されましたが、これから人類は誰を最初に助けるのかと言う問題に立ち向かう必要がある様です。

America Firstを掲げるトランプ大統領は他国の人々を助けることなど関心がないと思われますが、米国には大国としての器量を示して欲しいと思います。

コロナで傷ついたイメージを払拭しようとする中国は自国産ワクチンを発展途上国に優先的に配布しようとしており、動機はともかく、彼らは大国としての器量を示していると思います。

バイデン氏にはこの点、期待しています。彼が自国産ワクチンをどう使うかで、彼の今後の国際戦略が占えると思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。