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世界最大の貿易協定(RCEP)締結の意味は - 英誌エコノミストの分析

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世界最大の貿易協定

日本を含むアジアの15か国は東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名しました。

8年越しで協議されたこの協定は、世界経済が新型コロナで苦しむ中、最終的な合意に到達しました。

交渉途中でインドが抜けたものの、中国、韓国なども含むこの協定は世界の貿易額の3割を占める大型協定となります。

日本は環太平洋パートナーシップ(TPP)そしてEUとのEPAを締結しており、日米貿易協定と合わせ、これで主な貿易国との協定を締結した事になります。

このRCEPはどの様な意味があるのか、世界に与える影響はどの様なものがあるのかについて英誌Economistが「The meaning of RCEP, the world’s biggest trade agreement- It is unambitious in scope but marks a win for China and a setback for India and America」(世界最大の貿易協定RCEPの意義は何か - 野心的な中身ではないが、中国の前進とインド、米国の後退を意味する)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

英誌Economist記事要約

11月15日に地域包括的経済連携(RCEP)に署名したアジアの15か国は、世界最大の複数国間貿易協定を締結できた事を祝福できるでしょう。

1年前にインドが撤退していなかったら、それはもっと大きかったでしょう。

しかし、その成果の重要性については意見が大きく分かれます。

RCEPは、アジア貿易の劇的な自由化を予告するものではありません。

東南アジア諸国連合(ASEAN)のメンバーとオーストラリア、中国、日本、ニュージーランド、韓国の間の自由貿易協定(FTA)を寄せ集めた様なものです。

 

インドは、国内産業が中国品に圧倒されるのではないかという懸念から撤退しました。

インドはアジアで3番目に大きな経済であり、二国間貿易協定の締約国が非常に少ないため、その離脱により、主要なメリットが今回の合意から奪われました。

中国共産党の機関紙である環球時報iは、インドが「国際化プロセスに統合する最後のチャンス」を逃したと伝えました。

 

RCEPの加盟国は、別の大きな地域貿易協定である環太平洋パートナーシップ(TPP)の加盟国と重複しています。

2018年に11か国によって署名されたこの協定は、もともとアメリカを含むことを意図していました。

 2つの協定が交渉中に、アメリカの当局者は、環境や労働基準、および国有企業に対する規則などをカバーするTPPとは対照的に、関税と貿易円滑化のみに焦点を当てた、古臭い協定としてRCEPを却下しました。

協定がもたらすメリット 

署名者が日本のような裕福な国からラオスのような最貧国まで含んでいますので、RCEPはそれほど突っ込んだ内容ではないのは事実です。

推定では、関税の約90%が撤廃されますが、発効後20年をかけての話です。合意の範囲はまばらで、農業にはほとんど触れていません。

たとえば、日本は、TPPの下でカットされる予定の「政治的に敏感な」農産物(米、小麦、牛肉と豚肉、乳製品と砂糖)に対して高い輸入税を維持します。

しかし、RCEPは、ASEANのさまざまなFTAにおける異なる原産地規則の規定を調和させ、中間財を15か国のいずれかから調達できるようにします。

その結果、RCEPは顕著な経済的影響を与えると予想されます。

ある専門家によれば、2030年に世界のGDPを年間1,860億ドル(TPPからは1,470億ドル)引き上げることが予測されています。

特に中国、日本、韓国にとってはメリットが大きい様です。

中国のメリット

中国は他の形でも利益を得るでしょう。

複数国間貿易協定に初めて参加することで、アメリカがこの地域から距離を置き、中国との貿易戦争を続けている時に、貿易自由化に積極的であるる事を示す事ができます。

中国の李克強首相は、RCEPを「多国間主義と自由貿易の勝利」更には、より叙情的に「雲の中の希望の光」と呼びました。

それは地域の貿易における中国への傾斜を加速するでしょう。

欧米に輸出される前にアジアのさまざまな国にまたがる製造品のサプライチェーンが変化しています。

国際金融協会によると、今年の前半に、中国の最大の貿易相手国としてASEANは欧州連合を追い抜きました。

ASEANの懸念

RCEPが署名されたASEANでは、この合意は、貿易から南シナ海までのあらゆる交渉へのゆっくりとした漸進的なアプローチと見なされます。

しかし、一部のメンバーは、中国の経済、政治、軍事がアジアを支配する可能性を懸念しています。

そのため、ASEANの多くの人々は、バイデン氏の下で、アメリカがこの地域に精力的に再関与することを望んでいます。

それがオバマ政権がTPPを非常に熱心に追求した理由でした。

しかし、バイデン氏がアメリカをTPPに参画させる可能性は低いようです。

彼は他に忙殺される課題が山ほどあります。

アジアは、中国の増大する存在感とアメリカの消極的な関与によって再構成される事でしょう。

米国のTPPへの参画の可能性

Economistも米国のTPPへの参画の可能性は低いと見ている様です。

大統領選でもTPPへの復帰は封印しました。

これは激戦州のラストベルト地帯が市場開放に慎重であった事が理由とされています。

しかし、オバマ政権時代、バイデン 氏はTPP推進派でした。

可能性は残されていると思います。

日本は当然TPPへの米国の参加を求めるべきと思いますが、英国がTPP参加に関心を示していることは見逃せません。

米国に最も近い同盟国である英国が日本と共にバイデン氏を説得すれば、道が開かれるのではないでしょうか。

多くの元植民地を持つ英国のアジアにおける影響力は無視できません。

ジョンソン首相の打ち出す方針に注目しましょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。