MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

アジアでの戦争を避けるには - 次期国防長官候補の主張

f:id:MIYOSHIN:20201120170817j:plain

国防長官候補が寄稿した論文

バイデン大統領のアジア政策はどの様になるでしょうか。

その鍵を握るのは国務長官と国防長官の人事だと思います。

既にバイデン 氏は閣僚の選定に入っていると伝えられていますが、国防長官の有力候補として名前が上がっているのが、フロノイ女史(Michele Flournoy)です。

彼女はオバマ政権時代、国防次官を務めましたが、今回長官に就任すれば女性として初めての国防長官となります。

彼女は米誌Foreign Affairsに興味深い論文を寄稿しています。

そのタイトルは「How to Prevent a War in Asia」(アジアでの戦争を如何に避けるか)ですが、彼女が国防長官に就任すれば、ここで書かれた事が具体化される可能性があります。

アメリカという国は面白い国ですね。

大臣候補と言われる様な人が、続々と論文を寄稿して、将来の政策案を披露しています。

これもアメリカ型の民主主義なのでしょう。

かいつまんでご紹介しましょう。

フロノイ氏論文要旨

新型コロナによって米中両国の緊張は、明らかに高まりました。

米中の対立において、戦争のリスクを減らすことほど重要なことはありません。

残念ながら、中国の軍事力の増大と米国の抑止力の低下により、戦争のリスクは数十年前よりも遥かに高くなっています。

両国とも、他国との軍事紛争を求めていません。

それでも、南シナ海や、台湾などに関する米国の意欲や能力についての中国の誤算によって、簡単に紛争に陥る可能性があります。

 

過去20年間、人民解放軍(PLA)の規模、能力は急速に高まり、それに伴い米国の抑止力は低下しています。

2008年の金融危機や新型コロナ感染によって高まった米国の社会不安は、米国の衰退と中国の優位性について中国に確信をもたらしました。

さらに、米国政府は口ではアジアを重視すると言いながら、行動に移していません。

この地域の米軍のレベルは、10年前と同じままです。

現政権は、環太平洋パートナーシップ協定交渉から脱退しました。

一帯一路の影響力はアジアをはるかに超えて拡大しています。

また、軍事化された「島」の建設や南シナ海での主権主張などに、米国はほとんど対応できていません。

これらすべてが抑止力の問題を引き起こします。

 

人民解放軍の強化

1991年の湾岸戦争以来、人民解放軍はアメリカの戦争の手法について研究し、米国の軍事力を弱体化させ、米国の脆弱性を悪用する一連の非対称的なアプローチを開発してきました。

最大の懸念は、中国政府が(A2 / AD)と呼ばれる米軍の戦闘管理ネットワークを攻撃するシステムを開発した事です。

その結果、紛争が始まった場合、米国はもはや空中、宇宙、または海上での優位性を迅速に達成できません。

中国軍は、サイバーおよび人工知能においても急速な進歩を遂げました。

高度な電子戦、サイバー機能を配備して敵の戦闘管理システムを破壊することにより、紛争の開始時に敵を不自由にします。

これは、米国の軍事行動に不可欠な衛星が、敵の攻撃から逃れることができないことを意味します。

止力の再構築

抑止力を再確立するために、米国は、中国側の軍事的冒険が非常に高くつく事を彼らに確信させなければなりません。

たとえば、米軍が72時間以内に中国のすべての軍用船、潜水艦、商船を南シナ海に沈めると確実に脅かす能力を持っていた場合、中国の指導者は、台湾の封鎖や侵略を開始する前に、考え直すかもしれません。

国防総省は、将来誰が優位に立つかを決定する新しいテクノロジーへの投資を過小評価しています。

パンデミックの為に、他の優先事項が資金を要求するため、国防費にかなり下向きの圧力がかかるでしょう。

防衛費が減少する場合、米軍の優位性を維持するには、既存のシステムと、軍事的成功を最終的に決定する新機能(弾力性のある戦場ネットワーク、人工知能など)との間で厳しい取捨選択を行う必要があります。

無人システムの艦隊、および超音速および長距離精密ミサイル。これらの新たな能力への過小投資を続けることは、最終的には米国の抑止力に悲惨な結果をもたらすでしょう。

米軍は、中国の対応を難しくさせるため、固定化された基地ではなく、潜水艦や無人水中ビークル、機動性の高い海兵隊など、小型で機敏な部隊により依存する必要があります。

効果的な抑止力を構築するために、軍事力への投資とともに、米国は、インド太平洋地域へのコミットメントを明確にし、誰を、何を擁護する意思があるかを明確にする必要があります。

 

結局のところ、中国との競争は軍事的なものをはるかに超えています。

米国にとって最も重要なことは、国内で競争力の推進に投資することです。

高等教育や、重要なテクノロジーそして5Gなどに投資すべきです。

また、賢明な移民政策を復活させ、国家安全保障にリスクをもたらさない外国生まれの才能を歓迎し、米国に留まり革新的な企業を構築することを奨励する時期でもあります。

米国はまた、世界中に比類のない同盟国のネットワークを持つという独自の利点を活用する必要があります。

中国が提起する課題に対処する最善の方法は、可能な限り、志を同じくする国家連合として、法に基づく秩序の違反に立ち向かうことです。

 

しかし、中国を抑止する能力を強化する一方で、米国政府は、中国政府とのハイレベルの戦略的対話を再開しなければなりません。

結局のところ、抑止力は、誤算のリスクを最小限に抑えるために、継続したコミュニケーションに依存しています。

バイデン政権下のアジア戦略

フロノイ氏の論調は納得できるもので、こういう方が国防長官に就任されると我々同盟国の国民としては安心だと思います。

特に、米国は何を守る用意があるのか明確にすべきだという彼女の主張は重要と思います。

また、彼女の主張する通り、米中の覇権争いにおいて、米国が注力すべきは教育や移民政策だと思います。

米国の最大のアドバンテージは、世界の逸材が高い教育と雇用機会を求めて米国に集まる事です。

アメリカンドリームなんて、所詮夢物語だと批判する人もいますが、現実に人を動かすのはこういう夢や希望です。

様々な人種や宗教を柔軟に受け入れるという本来のアイデンティティを米国が失えば、米国の将来は暗いものになります。

米国がこのアドバンテージを有効に使えるか否かが、勝敗の分かれ目となるのではないでしょうか。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。