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米中関係の将来を占う人権問題

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香港の民主運動風前の灯か

世界中の注目が米国大統領選に注がれている間に、見逃せない出来事が起きています。

香港では中国政府により立法会(香港の国会にあたる)から4人の民主派議員が議員資格を剥奪され、これに反発する民主派議員が全員辞職するという事件がおきました。

今年盛り上がりを見せていた香港の民主化運動は、中国政府による国家安全維持法の導入を契機に、一気に力を失ってしまいました。

今回の民主派議員の除名も、米国が大統領選で混乱している最中を狙った中国政府の一手と言えるでしょう。

バイデン 政権及び同盟国は、中国に対して今後どの様に対処すべきでしょうか。

米誌Foreign Affairsに「Biden Must Stand Up to China on Human Rights - The United States Too Often Finds Reasons Not to Act」(バイデン 氏は中国に対して人権を主題に立ちあがるべきだ - 米国はこの観点で行動する事を避けたがる)と題した論文を掲載しました。

論文の寄稿者は米国のHuman Rights Watch(人権NGO)の中国責任者を務めるSophie Andersonさんです。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要旨

「中国政府高官との会合で、人権について密室ではなく、公けに問題提起して下さい。。」

上記は、Human Rights Watchが何十年にもわたって歴代の米国政権に対して行った要請でした。

バイデン氏が権力を握る準備をしている間、中国政府は、百万人のウイグル人を恣意的に拘留し、ウイグル人とチベット文化を破壊し、少数民族と宗教的少数派を組織的に攻撃しています。

中国当局は活動家や弁護士を攻撃し、監視を強化し、香港の民主主義への希望を粉砕しました。

バイデン政権は、中国の人権侵害を外交政策と国内政策の両方に課す必要があります。

なぜなら、抑圧の大規模なキャンペーンが中国だけでなく、米国でも人々を脅かしているからです。

企業、大学、および移民した中国人らは、中国政府の圧力を受けています。

過去の米国政府は、中国に政治犯を釈放するよう呼びかけ、著名な批評家に亡命を申し出たりしました。

しかし、米国が人権に比較的低い優先順位を置く事や、その一貫性のない努力が災いし、米国政府の試みは成果を生みませんでした。

 

トランプ政権は、中国共産党の支配の虐待的な性質について率直であり、人権侵害を犯したと信じられている中国政府の役人、機関に制裁を課すまでに至っています。

しかし、トランプ政権は、結局のところ、その非人道的な移民政策と人権法に対する無視を通じて、国内外の人権に対する米国のコミットメントを大幅に低下させてきました。

 

米国は、他の問題に関する中国の協力を勝ち取りたいと思うばかりに、人権問題を劣後させてきました。

何十年もの間、米国の政策立案者は中国が貿易と経済の自由化に門戸を開いた場合、人権がその後、擁護される様になるだろうと考えました。

実際は、そのような予測は外れ、人権侵害が急増しています。

バイデン政権は、中国政府の人権侵害について、一貫した立場を取り、他の外交課題に絡めて取引をしない事が重要です。

 

中国政府は、国際規範の侵食に向けて驚くべき成果を上げて来ました。

国連は彼らにとって重要な舞台となりました。

そこで、中国政府は人権専門家に嫌がらせをし、独立した市民グループを訴訟から除外しようとしました。

中国政府は他の政府に圧力をかけ、他国の人権侵害を支持しました。

中国当局者は、国際的な批判に敏感で、熱心に対応します。

たとえば、彼らは、人権侵害を隠蔽し、ウイグル人に対する政策への賛同を得るために、何百人もの外交官、ジャーナリストの現地訪問をアレンジしました。

新疆ウイグル自治区での人権侵害は、国際的な捜査を行い、中国当局者に説明責任を果たさせるべきです。

 

バイデン政権下の米国は、国連での中国の反人権運動に対抗するために、志を同じくする民主主義の連合を主導する必要があります。

しかし、中国への対抗措置は国連に限定されるべきではありません。

昨年の夏、北京は香港に厳格な「国家安全治安法」を課しました。

米国、カナダ、オーストラリア、英国等は、それに対して香港との犯罪人引き渡し条約を一時停止しました。この様な措置は、中国の政策を変更させる可能性があります。 

 

バイデン政権は、中国政府の人権に対する敵意を外交政策の優先事項とするだけでなく、国内政策の優先事項としても扱うべきです。

米国の大学で勉強したり働いたりしている中国人は、中国政府が教室での話し合いを監視し、家族を脅迫するなどして、彼らをコントロールしようとしていると報告しています。

中国で事業を行っている米国企業が、中国で人権侵害を犯す事を防ぐ適切な措置も取る必要があります。

 

中国国内での人権侵害は世界的な影響を及ぼします。

それを明らかにするものがなければ、新型コロナの初期の感染は中国政府の検閲により隠蔽され、更に大きな被害をもたらした事でしょう。(注:中国の医師がコロナの存在をSNSで拡散したため、世界中にその存在が知られたが、中国政府はこの医師の告発を断罪した事を指す。)

習政権は、4年前よりもさらに世界の人権を脅かしています。

バイデン政権はその前に多くの課題を抱えていますが、中国の政策において人権を優先し、同盟関係を復活させ、人権機関を強化することから始めるべきです。

バイデン政権は人権に本腰を入れられるか

米国はナチスドイツや大日本帝国の野望に終止符をもたらす上で、主要な役割を果たしました。

しかし、その後は外交戦略において、お世辞にも成功したとは言えません。

その極め付けはベトナム戦争でしたが、イラクやアフガニスタンにおいても、彼らが残したものは終わりのない混乱でした。

彼らが失敗した理由は何だったのか考えてみると、やはり米国政府が自由民主主義を支援すると言いながら、腐敗した専制的政府であっても親米であれば支持してしまっている事に尽きるのではないでしょうか。

今後の中国との覇権争いは、長く続きそうです。

米国がリーダーの位置を維持するには、同盟国との絆が不可欠で、絆を共有する上で必要な大義は、人権、自由民主主義でしょう。

外国に人権を押し付けられても困ると言われるかもしれませんが、香港やウイグルで人権を抑圧された人々を救えるのは、米国を初めとする民主主義国家しかありません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。