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イランの核科学者殺害の真相

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テヘラン郊外での殺害劇

イラン核研究者のトップと言われるファクリザデ博士が何者かにテヘラン郊外で殺害されました。

この殺害にはイスラエルが関与しているとの報道もありますが、何故この時期に殺害が企てられたのでしょうか。

この殺害の狙いや主要プレイヤーの思惑について、欧米メディアの多くが分析を行っています。

今日はその中から米CNNを取り上げます。

CNNの記事を取り上げるのは久しぶりですが、今回の記事「Iran suffers more humiliation with killing of nuclear chief. But no one in the world's most febrile region wants war」(核開発のトップの暗殺はイランにとり屈辱的であるが、世界で最も緊張したこの地域の誰もが戦争を望んでいない)は鋭い分析を加えていると思います。

CNN記事要旨

イランの敵対者の明らかな目標は、米国新大統領が就任する迄の50日の間に、可能な限りイラン当局を挑発する事でした

イランの最高指導者等はイスラエルの関与を非難しましたが、この緊張している地域では、イランの最も著名な核科学者ファクリザデ氏の明らかな暗殺の後でも、利害関係者の誰もが戦争を望んでいません。

まず、米国はどうかといえば、トランプ大統領のチームは、イランの強硬派をけしかけていますが、イランとの広範な紛争は、彼らの望むところではありません。

彼らはアフガニスタンとイラクからの早期撤退に忙殺されています。

イランとの全面的な紛争に踏み切る余裕はありません。

トランプ政権は、バイデン 政権でのイランとの和解を不可能にするために、可能な限り多くの憎悪を生み出したいと考えています。彼らの狙いはそれだけです。

しかし、それは、バイデン 氏に利益をもたらす可能性のあるトランプ政権の誤算かもしれません

次期大統領のバイデン氏は、2015年締結した核合意を再開したいと考えています。

バイデン 氏はトランプ大統領を非難する事が可能で、イランとの交渉はよりまとまりやすくなる可能性があります。

 

イランも、強硬派は騒いでいますが、本格的な紛争に耐える状況ではありません。

新型コロナの影響は甚大で、その経済はボロボロです。

今年1月に米国のドローンによって最も著名な軍人であるソレイマニ将軍を暗殺され、公然と報復することを約束したにもかかわらず、まだ報復していないのですから、ファクリザデ氏の死は開戦の理由にならないでしょう。

イランは明らかに長期戦を想定しています。

ですから、イランが具体的な復讐に出る可能性は少ないでしょう。

 

イスラエルのネタニヤフ首相は、2018年4月に演説で今回殺害されたファクリザデ氏を「この名前を覚えましょう」と語りました。

中東に核を拡散させない強い意欲をイスラエルは持っていますが、イスラエルも現在、良い状態ではありません。

彼は来年、選挙の洗礼を受ける予定で、イスラエルを喜ばせて来た盟友トランプ大統領を失います。

イスラエルはイランに対して一人で対峙したくはないでしょう。

 

今回の暗殺劇には3つのメッセージが託されています。

一つ目は、イランの強硬派を刺激し、イランと米国との外交を困難にする事です。

二つ目は、イランの強硬派が彼らの最も重要人物さえ守れないほど弱いというメッセージです。

そして三つ目は、次期バイデン政権へのメッセージです。

この殺害は、イスラエルがホワイトハウスのために有用で攻撃的なことを行うことができるというメッセージをバイデン 氏に送っています。

しかし、バイデンチームにとって、ネタニヤフ首相は同盟ではなく頭の痛い問題となる可能性が高いでしょう。

悪い警官がイランの最も需要な人的資源も殺害できる事を示しましたが、それはバイデン氏が良い警官になる事を妨げません。

中東は、世界の他の地域とは異なり紛争のリスクが高い緊張した地域です。

しかし、イラン、米国、イスラエルには、緊急に紛争を起こす理由がありません。

バイデン 大統領が就任するまで、戦争を扇動する様な動きが見られるかもしれませんが、実際に戦争が起きない事を祈りましょう。

ペルシャ人の知恵

ポンペオ米国務長官(右)とイスラエルのネタニヤフ首相は今年11月19日にエルサレムで会合しています。

それ以外にもポンペオ国務長官はサウジでネタニヤフ首相と密会したとも伝えられており、両者が今回の暗殺について事前に協議した可能性は十分あります。

イスラエルは仮想敵国であるイランが核弾頭を持つことだけは絶対阻止したいと考えており、今後も挑発的な行為に出る可能性があります。

しかし、イランはこの挑発行為には乗らないと思います。

イラン人は非常に賢い民族です。

ペルシャ人は数千年前から大帝国を築き、商人や官僚として優秀とされてきました。

インドのムガール帝国などは、トルクマーンと呼ばれるトルコ系の軍人とペルシャ人の官僚が支えた帝国と言われています。

彼らは、イスラエル側の挑発には乗らず、バイデン 政権の誕生を辛抱強く待つと思います。

もし核合意が再度合意に至り、イランに対する経済制裁が解除されていけば、イランはそのポテンシャルを発揮する可能性があります。

人口8千万人を超え、優秀な人材と豊富な資源を持つイランは本来、中東をリードする存在です。

米国は中国に対して「関与政策」を適用し、失敗しましたが、イランにはこの関与政策が成功するかもしれません。

何故ならイラン国民(政府ではありません)は、実は米国が大好きだからです。

日本も昔から友好関係を持つイランと米国の関係正常化に貢献できるかもしれません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。