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豪州ワインに高関税を課した中国に対する欧州の視線

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中豪関係の悪化

オーストラリアと中国の対立は、遂に豪州ワインに200%を超える高額関税をかけるというところまでエスカレートしました。

オーストラリアとQuadと言われる安全保障上の協力体制を作り上げている米国や日本では、中国とオーストラリアの対立はマスコミにもしばしば登場しますが、これまで欧州メディアではあまり注目されていませんでした。

しかし、今回のワインに関する制裁関税は、ワイン大国フランスの肝を冷やした様です。

フランスの経済紙Les Echosの記事を今日はご紹介したいと思います。

タイトルは「La Chine accentue ses représailles commerciales pour faire plier l'Australie」(中国はオーストラリアを屈服させるために経済制裁を強化した)です。

Les Echos記事要約

「世界中の民主主義国家は、オーストラリアに対する中国の行動に注意を払うべきだ」と、中国を専門とするドイツのシンクタンクであるMericsのアナリスト、ポゲッティ氏は述べました。

オーストラリアとの外交的戦いの中で、中国政府はほぼ毎日の様に、オーストラリアへの圧力を強め、報復措置を強化しています。

石炭、銅、牛肉、大麦に続いて、中国当局が標的としたのはオーストラリアのワインです。

今週末の時点で、中国に輸入されるオーストラリアのワインは、最大212%のアンチダンピング追加課税の対象となりました。

この決定は金曜日に中国商務大臣によって発表され、中国のワイン産業に「重大な損害」を示したアンチダンピング調査の結果だと彼は説明しました。

この決定はオーストラリアに驚きを持って受け止められ、政府は世界貿易機関(WTO)に提訴する意向を発表しました。

ワイン業界にとって経済的影響は甚大です。

中国はオーストラリアワインの最大の買い手であり、今年は9月までに7億3500万ユーロ(約900億円)の輸入がありました。

 

オーストラリアが2018年にHuaweiによる5Gネットワ​​ークの構築を禁止して以来、両国間の緊張は高まりました。

オーストラリアのモリソン首相が新型コロナの発生源に関する国際調査を要求した為、関係が更に悪化しました。

「オーストラリアは冷戦時代のイデオロギー的偏見に固執している」と中国外務省の広報官は批判しました。

中国の「戦狼外交(最近中国の外交官が採用する攻撃的外交スタイルを指す)」は豪州に対する公式な非難をオーストラリア政府に提示しました。

翌日、豪紙「シドニー・モーニング・ヘラルド」は、キャンベラの中国大使館から送信された14項目の非難を発表しました。

非難の中には、新型コロナ発生源に関する独立した機関による調査、Huawei事件そしてオーストラリア政府の代理人による「中国共産党に関するスキャンダラスな非難」さえも含まれています。

「中国を敵に回せば、中国が敵になる」と中国の外交官はオーストラリアのマスコミに警告したと伝えられています。

「中国はオーストラリアの主権と民主主義に公然と挑戦しています」と先述のMericsのポゲッティ氏は述べています。

中国の非難リストは、独立した研究、メディア、表現の自由を攻撃し、合法的な外国の政策選択を妨害する試みです。

 

両国関係は行き詰まっています。

オーストラリアは、中国と閣僚レベルの対話を確立しようと何ヶ月も試みましたが、実現していません。

「中国は妥協を望んでいない」と中国政府は警告し、二国間関係の悪化はオーストラリアによる「一連の間違った行動と発言」に起因すると述べました。

オーストラリア政府はモリソン首相の決意が固いため、北京からの圧力に屈することはないでしょう。

米国の伝統的な同盟国であるオーストラリアは、中国と非常に強い経済関係を築いてきました。

オーストラリアにとって、中国は最も重要な輸出市場です。

中国は大国らしい振る舞いを

「中国のワイン産業に甚大な損害を示した」と中国政府は主張している様ですが、そもそも中国に守るべきワイン産業があるのか、何故オーストラリアワインだけを標的にするのか大いに疑問があるところです。

自分に歯向かうものは徹底的に潰すというやり方は、大国らしい余裕を感じさせません。

まあ、トランプ大統領のやり方も似た様なものですので、中国だけを非難するのはフェアではないかも知れません。

注目すべきは、中国のオーストラリアに対する乱暴狼藉ぶりが、欧州のメディアで取り上げられ始めている点です。

フランスやドイツにとっても、中国は大事なお客さんです。

多少の問題には目をつむって、市場としての中国を優先させてきた彼らですが、どうも様子が変わってきた様です。

今日取り上げた記事が掲載された仏紙「Les Echos」のオーナーはルイ ヴィトングループです。

最も中国市場の恩恵を受けているグループが所有する新聞社が、中国に批判的な記事を発表した事自体、欧州が中国のやり方に疑問を感じる様になってきた事を示しています。

情報隠蔽、法の支配の軽視、人権問題、隣国への遠慮ない領海侵犯、そしてオーストラリアの様な国への制裁に関して、欧州の世論も徐々に中国に対して厳しくなっています。

バイデン 政権はこういった欧州や他の民主主義国家と連携して、広範な世論形成を試みるべきと思います。

それが中国を変える唯一の方法ではないでしょうか

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。