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超大国の関心が高まる北極圏の戦略的価値

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北極圏の価値高まる

地球温暖化により北極海の氷が溶けているという話はお聞きになった事があると思いますが、一方で、北極圏の戦略的価値は急速に高まっている様です。

何故氷が溶けると北極圏の戦略的価値が高まるかと言うと、船の航海日数が大幅に短くなるためです。

地球儀を見るとわかりやすいのですが、北米、ロシア、欧州は北極を挟んで非常に近い距離にあります。

もし北極海を航海できれば、東南アジアから英国に向かう場合、現在使われているマラッカ海峡からスエズ運河経由のルートに比較して10日程航海日数を短縮できると言われています。

安全保障上も重要性が高まります。

以前、トランプ大統領がグリーンランドを買いたいと言い出して、この人何をとぼけた事言ってるんだろうと思った記憶がありますが、実は北極海の制海権を握ることは対露、対中の観点から非常に重要なのです。

そんな中、米誌Foreign Policyが「Forget Greenland, There’s a New Strategic Gateway to the Arctic - The Faroe Islands have a history of trading with everyone who will buy their fish. With growing tensions in the Arctic region, the islands are now receiving more attention from superpowers.」(グリーンランドは忘れよう。新しい北極圏への戦略的入り口がある。フェロー諸島は魚を買ってくれるなら誰とでも付き合って来たが、北極圏で高まる緊張の中で、超大国から熱い視線を浴びている)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要旨

フェロー諸島の外務大臣であるイェニス.ラナは、7月22日の朝興奮していました。

25年間のキャリアの中で、彼はアイスランドやグリーンランドの外務大臣とは時折会う機会がありました。

しかし、まさか、米国務長官のマイク・ポンペオが彼をデンマークでの会議に招待するとは思っていませんでした。

この招待は、北極圏の国としてのフェロー諸島が戦略的に重要性を増していることの表れでした。

4か月後の11月28日、魚の4分の1をロシアに販売し、中国の通信会社Huaweiと5G契約を結ぼうとしていたフェロー諸島の代表が、米国とのパートナーシップ宣言に署名しました。

フェロー諸島は18の小さな島で構成され、52,000人が住んでいます。

群島は北大西洋の真ん中に位置し、いわゆるGIUK回廊(グリーンランド、アイスランド、イギリス北部を結ぶ北大西洋の通過ルート)の中心にあり、冷戦の間に享受していた戦略的重要性を最近取り戻しました。

2019年に米国国防総省戦略で述べられているように、この回廊は「北極圏と北大西洋の間の海軍作戦の戦略的回廊」になっています。

そして、ロシアと中国の両方が競争相手であるため、この地域は米国の国家安全保障上の利益にとってますます重要になっています。

北極の氷が溶け、海運の交通量が増える中、フェロー諸島は米国とNATOの海上サービス拠点になることを望んでいます。

トランプ大統領が1年前に購入したいと発言したグリーンランドのように、フェロー諸島もデンマーク王国の自治地域です。経済は主に漁業とサケ養殖です。

フェロー諸島の外交政策と安全保障政策は、法的に言えば、デンマーク政府の管理下にあります。

しかし、デンマークが後に1972年にEUに加わったとき、フェロー議会は、EU加盟が漁業権を放棄することを意味するため、従わないことを決定しました。

フェロー諸島政府は、1970年代にソ連と漁業協定を結んだ最初の西側諸国のひとつです。ロシアは依然としてフェロー諸島にとって重要な輸出市場です。

2018年には、フェロー諸島の輸出の27%がロシア市場に向けられ、フェロー諸島にとって最大の輸出市場となりました。

デンマークにはフェロー諸島が誰と取引するかを決定する権限がありません。

デンマーク政府は、貿易や漁業の権利への干渉が王国内の大きな紛争につながる可能性があることを知っています。

近年、中国もフェロー諸島にとって非常に重要な市場になっています。

フェローのサケ養殖大手であるバッカフロストは、2010年の20倍以上のサケを中国に輸出しています。

フェロー諸島はモスクワと北京に代表部を有しており、ポンペオ国務長官はなぜフェロー諸島が米国に外交代表を持たないのかとフェロー諸島の外務大臣に尋ねた様です

フェロー諸島の外務大臣は、彼らが持ち始めている重要性の高まりに気づいており、次の様に語りました。

 「現在の状況は歓迎すべきものです。いくつかの国は天然資源を持っていますが、私たちの資源は私たちの場所です。」

したたかなデンマーク

フェロー諸島の重要性がこれだけ増している事はわたしも寡聞にして知りませんでした。

我が国にとっても北極海航路は大きな意味を持っています。

欧州への航海日数を大幅に短縮できる北極海の航海の自由はシーパワーとしての日本にとって非常に重要です。

シーパワーと言えば、フェロー諸島やグリーンランドを保護領としているデンマークも意外に知られていない重要なプレーヤーです。

500万人を若干上回る程度の人口しか持たないこの小国は、実は世界最大の海運会社を有する根っからのシーパワーです。

グリーンランドを売ってくれとのトランプ大統領の要請を「グリーンランドは売り物ではない」とデンマーク政府は即座に拒絶しましたが、今回の米国とフェロー諸島の合意形成には大きな役割を果たしました。

この国は海運で生計を立てている面もありますので、ペルシャ湾の航行の自由を守るため、ペルシャ湾に軍隊を派遣し米国と共同作戦を行うことを提案した事さえありました。

北欧の国はノルウェーが中東和平の仲介に乗り出し、オスロ合意を演出するなど、小国でありながら、国際政治においても存在感を示しています。

現在、ネットフリックスで配信中の「コペンハーゲン」(原題:Bergen)はデンマークの女性首相を主人公としたドラマですが、このドラマではデンマークが大国の狭間で如何にその位置を苦労しながら保っているかが描かれています。

彼らのしたたかな外交が窺えます。お勧めです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。