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アラブの春の結末 - 中東に民主主義は育たないのか

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中東の民主化は可能か

アラブの春は行商人のチュニジア人青年が政府に抗議する目的で焼身自殺した事から燎原の火の様に瞬く間に燃え広がりました。

ペレストロイカがきっかけで共産圏の国々に民主化運動が広がり、ロシア始め中東欧の国々の政権が民主化したのと同じ様な展開を期待した人は少なくありませんでした。

しかし、アラブの春はその後、思いがけぬ展開を見せました。

民主化どころか、エジプトの様に専制君主によって民主主義が踏みにじられる国家もあれば、シリアやイエメンの様に大量の難民を出す内戦に突入した国もあります。

イスラム国の様なテロ組織も、アラブの春の結末に失望した若者たちが反政府運動に走った結果と言えるかも知れません。

中東には民主主義は根付かないのでしょうか。

この問いに対して英誌Economistが「Why democracy failed in the Middle East - And how it might, one day, succeed」(何故中東で民主主義は失敗したのか、そしていつか成功するのだろうか)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

チュニジアの警察官は、ムハンマドが営業許可証を持っていなかったために、しかし本当は彼から金をゆすりたいと思ったために、彼の屋台を没収しました。

ムハンマドは「どうやって生計を立てるんだ?」 彼は知事室の前で自らにガソリンを浴びせ、抗議の焼身自殺を行う前に叫びました。

彼の行動に、中東の何百万人もの人々が共鳴しました。

抑圧的な指導者や腐敗した国家に対する彼らの怒りは、アラブの春として爆発しました。

蜂起は、エジプト、リビア、チュニジア、イエメンの4か国の独裁者を倒しました。

一瞬、ついに民主主義がアラブ世界にやってきたように見えました。

 

しかし、10年後、アラブの春はどこに行ってしまったのでしょうか。

チュニジアだけで、民主的な実験が成功したかに見えますが、エジプトでは惨めに失敗し、軍事クーデターで終わりました。

リビア、イエメン、そしてシリアでは、外国の勢力を引き込んだ血なまぐさい内戦に陥りました。

アラブの春はすぐに厳しい冬に変わり、多くの人々が絶望しました。

 

アラブの春以来、多くの変化がありましたが、良い方向ではありません。

アラブ世界の専制君主は決して安全ではありません。

石油価格が低いため、補助金で国民の歓心を買い取る余裕がありません。

多くの指導者は、より抑圧的になっています。

サウジアラビアの最高権力者ムハンマド ビン サルマンは自分の親族を牢屋に閉じ込めています。

エジプトのシシ大統領はマスコミを窒息させ、市民社会を崩壊させました。

アラブの春から学んだ独裁者の教訓の1つは、政府に対する異議申し立てが起こり始めた時は、広がらないようにすばやく消し去らなければならないということです。

 

この地域は2010年よりも自由度が低く、国民の怒りは高まっています。

彼らは戦争、ジハード、難民、そして新型コロナによって揺さぶられてきました。

アラブの春の炎が完全に消えることはなかった、とある人は言います。

2019年にアラブ諸国を巻き込んだ一連の抗議行動に「アラブの春」の様な派手なタイトルはは付けられませんでしたが、アラブの春の指導者と同じ数の指導者を政権から引きずり下ろしました。

 

一部の人が主張するように、アラブ人は民主主義を受け入れる事ができないというのは本当でしょうか

他の人は、イスラム教の厳格な縛りは多元主義と両立しないと言います。

結論を出すのは時期尚早です。

現代の民主主義の種は、アラブ世界ではまだ適切に蒔かれていません。

アラブの人々が支配者を自分たちで選ぶことへの渇望は、他の場所と同じくらい強いです。

彼らが最も必要としているのは、独立した機関、つまり大学、メディア、市民団体、とりわけ裁判所やモスクが、政府に脅かされることなく機能することです。

そうして初めて、人々は政治的紛争が平和的に解決できることを受け入れる事が出来る様になるのです。

 

アラブ人がもっと自由に議論できるようになると良いでしょう。

この地域の学校は、批判的思考よりも暗記を重視する傾向があります。

メディアとモスクは政府の方針を鵜呑みにする傾向があります。

独裁者もソーシャルメディアを利用しようとしています。

これらはすべて、情報自体への不信感を生みます。

アラブ人は、ちょっとした公務を遂行するためにも賄賂やコネを必要とするシステムの為に、政府だけでなくお互いにも不信感を抱く傾向があります。

汚職は国家への信頼を損ないます。

国家が公益を提供することを期待する人はほとんどいません。

専制君主は反対派が権力を勝ち取った場合、彼らがすべてのお金と公の仕事をつかむだろうと国民に語ります。

そのような乾いた土壌で、民主主義が根付かなかったのは当然のことです

しかし、長期的には、それを変える方法があります。

教育の促進は不可欠です。

民主主義国家はより多くのアラブの学生を歓迎すべきです。

アラブのジャーナリスト、人権運動家、NGOのために我々は発言すべきです。

多元主義の文化は成長するのに時間がかかります。

しかし、チュニジアの果物売りが悲劇的に示したように、現状は不安定で持続不可能です。

中東の民主化の可能性

民主主義と言うのはつくづく難しい政治システムと思います。

チャーチルが民主主義について、次の様な名言を残しています。

「実際のところ、民主主義は最悪の政治形態と言うことが出来る。これまでに試みられてきた民主主義以外のあらゆる政治形態を除けばだが。」

行政の効率の面から言えば、民主主義は最悪の部類かも知れません。

新型コロナに対する各国の対策を見れば、それがわかります。

中国の様に国民に有無を言わさず都市封鎖ができれば、効果的に感染症を封じ込める事ができますが、日本は国民にロックダウンを強制する事さえできません。

しかし、効率の悪い民主主義は一方で権力のチェック機能において優れており、独裁者の存在を許しません。

しかしこの政治システムが正常に機能するには、司法の独立、言論の自由などが十分守られる必要があります。

中東の心ある人々は、民主主義の導入に強い関心を持っていると思います。

彼らが自立できる様に、民主主義国は彼らを支援すべきでしょう。

武器を買ってくれるなら国民への圧政には目を瞑るようなダブルスタンダードは厳に慎むべきと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございます。