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新型コロナ変種とブレグジットの二重苦に悩む英国

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ウイルス変種英国で猛威を振るう

英国がかなり厳しい状況に陥っている様です。

既に日本のメディアでも取り上げられていますが、新型コロナの変種が見つかり、ここのところの新規感染者はうなぎ上りとなっています。

欧州各国のみならずトルコなど周辺国も英国からのフライトを禁止しました。

一方、ブレグジットに関するEUとの交渉は、期限があと10日を切った現在も合意に達していません。

新型コロナとブレグジット一見関係のない二つの事象が重なった場合、深刻な問題が生じる様です。

英誌Economistが「How covid-19 and Brexit combined to isolate Britain - Border closure in the Channel: continent cut off」(新型コロナとブレグジットを組み合わせて英国を隔離する方法 - ドーバー海峡の国境閉鎖:大陸の遮断)と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

2020年の英国の2つの大きな物語である、ブレグジット新型コロナは、互いに大きな影響を与えることなく、並行して推移してきました。

しかし、12月31日のブレグジット移行期間の終了が近づくと、元法相のデービッド ゴークは、「テレビドラマの最終章のように、筋書きが一つにまとめられた」と指摘しました。

 

2つのストーリーラインを統合した出来事は、伝染性が高いと考えられている新型コロナの変種の出現です。

これにより、ヨーロッパ内外の多くの国が、ブレグジットに関する交渉と同様に、英国からの入国をストップさせました。

英国と欧州連合の間のブレグジット貿易交渉は最終週に入ります。

ドラマの最終章の場所ケントはウイルス変種が最初に特定された場所であり、ドーバー海峡の本拠地でもあります。

EUとのトラック輸送の90%が通過する港は、12月31日に起こりうる問題に対処するために準備してきましたが、12月20日、フランスとの国境が閉鎖されたため、問題は早期に発生しました。

 12月21日、輸送業者の業界団体であるRHAは、ドーバーへの高速道路上のトラックの列は数マイルの長さであると述べました。

影響はケントのトラック運転手だけではありません。

英国の買い物客は新鮮な農産物が不足していることに気付くでしょう。

RHAは「多くのEUの運転手が英国に来ることを拒否している」と述べ、スーパーマーケットのセインズベリーはレタス、キャベツが不足する可能性があると警告しました、

ブロッコリーと柑橘系の果物、これらはすべてドーバー海峡経由です。

フランスは、国境が再び開かれる前に、厳格な新型コロナ検査体制を導入することを求めています。

英国の検査能力に関する既存の問題を考えると、それを達成するのは難しいかもしれません。

 

「地獄からのクリスマス」のエピソードでは、3つのテーマがストーリーを絡み合わせています。

1つは、変異する傾向があるウイルスの性質です。

新型コロナウイルスが経験した突然の変異は、それをより伝染させたようです。

変種が英国で発生したのか、英国の科学者がウイルスのゲノムの変更を頻繁に行ったために英国で特定されたのかは、誰にもわかりません。

しかし、英国ではウイルスの伝染が加速しており、新型コロナの症例は12月20日までの1週間でほぼ2倍になり、他国の政府に英国からの旅行者の入国を禁止させました。

 

ブレグジットに関する交渉もまた、年末の危機の原因となっています。

英国がEU離脱を決議してから4年、英国とEU間の離脱協定が合意されてから1年以上経ち、移行期間が終了するまでわずか10日ですが、未だに交渉が続いています。

主な問題点は、魚と「公平な競争環境」です。

つまり、規制システムが時間の経過とともに変化しようが、両者間の競争を公平に保つ方法についての議論です。

双方は合意を望んでいますが、どちらも譲歩するつもりがないので、交渉は崖っぷちに向かって進んでいます。

英国が合意なしで離脱した場合、、農産物に対して最大40%の関税と、より多くの事務処理に直面することになります。

 

最後に、ゴーク氏が「行き過ぎた楽観主義」として指摘した英国政府の方針も、この危機の一因となっています。

コロナ感染とブレグジットに直面したジョンソン首相は、悪いニュースを配信することを躊躇し、説明が不十分でした。

首相は一貫してポジティブな面を見たために、より暗い結果に備えることができませんでした。

そのため、彼は3月に国を封鎖するのに時間がかかり、感染第一波を悪化させ、検査追跡システムを稼働させるのに時間がかかり、新種のウイルスにも迅速に反応できませんでした。

そしてブレグジットについて、彼の政府は一貫して、この取引は「人類史上最も簡単」であり、「私たちはすべてのカードを保持している」と約束します。

英国は他のどのヨーロッパ諸国よりも「合意なし」の結果に対して脆弱であることを考えると、それは明らかに真実ではありません。

それでも政府は、英国を崖の端っこそして更にその先に連れて行けると信じているようです。

 

ドラマの最終章はほとんどの英国人にとって不快なものになるでしょうが、それでも政府によって違ったトーンで説明される可能性があります。

ブレグジットと新型コロナの混乱が重なった場合、英国政府は食料品の不足を悪天候と卑劣なフランス人のせいだと非難する事でしょう。

後手にまわったジョンソン首相

ただでさえブレグジットの交渉難航で、年明けの食料品不足が懸念されていた英国ですが、その上新種のウイルスのせいで、欧州から物が入ってこなくなれば、かなり大きな混乱に見舞われそうです。

ブレグジットを牽引してきたジョンソン首相はこの局面をうまく乗り切れなければ、政治責任を問われそうです。

EUとの交渉については勝算があったのでしょうが、新型コロナを甘く見たのが現在の厳しい状況を招いていると思います。

自ら感染し、集中治療室にまで入ったのですから、この病気の怖さは身に染みてわかっている筈なのに、なぜ、コロナを過小評価したのでしょうか。

新型コロナは人間が感染症を前にした時、如何に脆弱かという事を明らかにしてくれたと思います。

日本もブレーキとアクセルを両方踏む様な事をやっていれば、英国の二の舞になりかねません。

急がば回れで、まずは目の前のコロナを退治する事に全力をあげるべきと思います。