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管首相の知恵袋になった英国人ビジネスマン

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首相のブレイン

デービッド アトキンソンさんという外国人ご存知でしょうか。

この人を最初に見たのは、衛星放送番組であるFNNプライムニュースでした。

司会者の反町氏の厳しい質問を論理的に切り返していたのを見て、この人はただものではないと思いましたが、今や管首相のブレインとして活躍している様です。

オックスフォード大学出身のアトキンソンさんは、ゴールドマンサックスのアナリストとして活躍した後、現在は日本の国宝などを修繕している小西美術工藝社の社長を務めています。

ウォールストリートジャーナル(WSJ)が彼を取り上げて「日本の寺院を修復する一人の英国人が日本経済の指南役に」と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要旨

日本に住む多くの外国人と同様、デービッド・アトキンソン氏(55)は、日本経済のより良い運営方法に関してアイデアを持っています。

しかし、ゴールドマン・サックスのアナリストだったアトキンソン氏は、首相に意見できる唯一の在日外国人です。

英国人のアトキンソン氏は、日本政府の「成長戦略会議」を構成する経済専門家8人の中で唯一の外国人です。

彼は、日本語で書かれた12の著書を持ち、寺社のリノベーション事業の経営と、さまざまな会合での政策提言という異なる2つの分野で活躍しています。

会合の場では彼は、統計を駆使する。

アトキンソン氏は、オックスフォード大学卒業の数年後の1990年から日本に住んでおり、流ちょうな日本語を話します。

ゴールドマンで働いていた1990年代には彼は、先見性を持って、日本の銀行業界の弱さが経済を危険にさらしていると警告していました。

より最近の例では、彼は観光業振興の強力な支持者として知られています。

日本のスタグネーション(景気停滞)解消への第一歩は、中小企業の生産性の引き上げだというのが、彼の最新のメッセージです。

日本政府は今月、合併や新規分野参入に踏み切る中小企業に最大1億円を補助する計画を明らかにしました。これはアトキンソン氏のアドバイスの直接的成果です。

新型コロナの大流が世界中で中小企業に大打撃を与える中、アトキンソン氏を批判する人々は、中小企業には合併推進圧力をかけるのではなく、政府の支えが必要だと主張しています。

アトキンソン氏は、日本には他に選択の余地がないと主張します。

世界銀行によれば、日本では中小企業の低い生産性が要因となって、昨年の労働者1人当たりの平均生産額が7万8570ドル(約814万円)にとどまりました。

これは米国の水準を40%近く下回っています。さらに厳しいことに、日本では労働人口の高齢化と減少が進んでいます。

「労働人口の生産性が上がらなければ、日本は自滅します」とアトキンソン氏は語ります。

アトキンソン氏は訪日観光客を増やす戦略の推進者となりました。

この戦略は新型コロナに見舞われるまでうまくいっていました。

海外から日本を訪れる観光客の数は、2011年から昨年までで5倍に増加しました。

アトキンソン氏は、日本にはトヨタなど、その分野で世界有数の力を持つ企業が一握り存在するものの、何百万社もの中小企業が前進を妨げていると主張してきました。

中小企業は成長や技術への投資を嫌うことが多いからです。

彼の意見に耳を傾けていた人が菅義偉氏です。

菅氏は長年、成長を活性化させる方法を探していました。

アトキンソン氏によると、菅氏とは4年前から年に2度面会しており、菅氏はアトキンソン氏の著書を読んでいると述べたそうです。

アトキンソン氏によれば、「彼は私が今までに会った他のどの年長の政治家よりも、数字や分析に興味を持っていた」と言います。

アトキンソン氏は11月に開かれた政府の「成長戦略会議」で、日本商工会議所の三村明夫会頭と激論を交わしました。

三村氏はその時、事業オーナーが従業員の生産性を上げるために最低賃金を上げるなどといったアトキンソン氏の考えの一部を採用すれば、破産や多くの企業の廃業といった結果を招くと述べました。

この議論の結果もまた、異例のものでした。

外国人の意見が通ったのです。

菅氏は中小企業の合併・買収を促す案を盛り込んだ計画発表の中で、「日本企業の最大の課題は生産性の向上だ」と表明しました。

元中小企業庁長官で安倍晋三前首相の首相補佐官を務めた長谷川栄一氏は、小規模な小売業者など一部の企業は、必ずしも利益の拡大を求めていないと言います。

ある企業のオーナーが例えば68歳だった場合、新たな投資をするようこの人物を説得しようとするか疑問だと言います。

民間信用調査機関の帝国データバンクによると、新型コロナの感染拡大が始まって以降、倒産申請を行った500件を上回る企業の約80%が中小企業だった。

アトキンソン氏は、「パンデミックはある意味で、経済分野で生産性の最も低い分野を直撃している」と指摘するとともに、「それはある程度、われわれが話し合っている企業再編プロセスを加速することになるだろう」と語りました。

日本の生産性は上げられるのか

実は私も、このアトキンソンさんの著書「新・所得倍増論」を読んでいる最中です。

日本は一時期GDPで世界第2位になりましたが、アトキンソンさんによれば、これは日本の優れた技術力や研究開発力が原因ではなく、単に先進国の中で人口が米国に次いで多かったからだそうです。

確かに日本はドイツや英国に比べて圧倒的に人口では上回っています。

ジャパンアズナンバーワンと言う本がありましたが、日本が成長神話に踊っていた時も、アトキンソンさんは日本の生産性の低さを的確に問題視していました。

一方で、彼は日本の持つ潜在的成長力には着目しています。

インバウンドの観光客を増やす戦略はコロナ感染で足踏みさせられましたが、日本の観光業の持つ潜在力に着目した彼の非凡さを示すものです。

日本の失われた20年を取り戻すには、こういった異色の人材を積極的に登用すべきだと思います。

前例を踏襲する組織のままでは、日本の明日は描けないと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。