英国TPP参加意思表明
英国は、ブレグジット後の計画に基づいて、アジア太平洋地域の11か国で構成される自由貿易協定への参加を正式に申請すると発表しました。
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)には、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの11か国が含まれます。合計で約5億人の市場をカバーし、世界のGDPの13%以上を生み出しています。
ご存知の通り、米国はもともとTPPに参加すべく交渉中でしたが、トランプ前大統領が撤退を決断しました。
この協定への参加表明を英国のメディアはどの様に評価しているでしょうか。
英BBCにコメンテーターのDharshini David氏がコラムを寄稿しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
BBCコラム要約
EUに別れを告げてからちょうど1年後、英国は新しい貿易クラブであるTPP加入を目指しています。
それは双方にメリットがあるように見えます。
これらの環太平洋諸国は世界の収入の13%と5億人を占めており、英国は他の場所で取引を行う自由を保持できます。
基準と規制がどのように設定されるかについては合意する必要がありますが、それらは同一である必要はありません。
ただし、実際には、この協定から得られる短期的利益は限定されています。
英国はすでにTPP参加国11カ国のうち7カ国と貿易協定を結んでおり、さらに2カ国と交渉中です。
合計しても、TPP諸国向けの輸出は英国総輸出の10%に満たず、これはEUへの輸出に比べればほんの僅かです。
しかし、バイデン大統領が示唆したように、将来他の国、特に米国が参加した場合、大化けする可能性があります。
それは、世界の舞台でかなり影響力のある貿易圏を、アメリカとの貿易協定を望んでいた英国に与えるでしょう。
新たな日英同盟関係
日本は米国が撤退した後、誰もが雲散霧消するだろうと思われたTPPを良く合意に漕ぎ着けたと思います。
この辛抱強い努力が今、日英関係に新たな1ページを開こうとしています。
英国は斜陽の老大国と思われるかも知れませんが、この国はそんなに簡単にはくたばりません。
彼らの強みは幾つかあります。
- 優秀な人材が集まる
世界大学ランキングのトップを争う常連であるオックスフォード、ケンブリッジ大学を筆頭に、世界中の俊英が集まる高度教育システムが存在します。
- 巧みな移民政策で人口が伸びている
欧州の大国の中で、最も人口の伸び率が高いのは英国です。
2004年から2016年に至る期間に、平均して年間25万人英国の人口は伸びていますが、その主因は移民の増加です。
彼らは低賃金の労働者不足を移民で埋めているわけではありません。
高学歴で優秀な人材を取捨選択して移民させています。
これは日本などと大きく違う点です。
- 英語
やはり言語が英語なのは大きいです。
東京がロンドンに比肩できる金融ハブを目指すと言っていますが、世界の人材を東京に集める上で一番大きな障害は言語だと思います。
- 米国や旧植民地との特殊な関係
これは言うまでもありませんが、英国がTPPに加盟すれば、彼らは必ずやバイデン政権を交渉のテーブルに引き出すはずです。
英連邦はインドやオーストラリアといったインド太平洋における主要国を含んでおり、大きな経済圏を形成しています。
日本は同じシーパワーである英国を手本とすべきと思います。
明治維新のリーダー達が英国をパートナーとして、日英同盟を結んだのは本当に慧眼だと思います。
日本の国運は英国と同盟関係にあった時は、光り輝いていました。
あの時と今は違うとおっしゃる方もおられると思いますが、共通点はあると思います。
英国は伝統的に孤立を好みますが、日英同盟を結んだ時は彼らに弱みがありました。
彼らはロシアのアジア進出に悩まされていましたが、当時ボーア戦争の最中で、十分極東に戦力を割くことが出来なかったのです。
これが英国が日本と同盟を組む動機となりました。
現在、英国はブレグジットで欧州との関係がギクシャクしており、新たなパートナー作りが急務となっています。
今こそ日本は英国と新たなパートナーシップを構築できる機会なのです。
日露戦争の際に、圧倒的に不利と見られていた日本の国債を外国投資家が買ったのは、英国の支援なしにはありえませんでした。
国際世論形成という面で、この国ほど頼りになるパートナーはいません。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。