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ミャンマーのクーデターにおける軍部の計算

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軍事クーデター発生

ミャンマーの軍事クーデターは一斉に世界中に報道されました。

ミャンマーは第二次世界大戦直後は東南アジアで最も豊かな国の一つでしたが、その後長く続いた軍政によって、隣国に抜き去られ、地域の最貧国の一つに数えられる様になりました。

そこに民主主義の旗手として現れたのが、アウン サン スーチーです。

彼女は軍の抑圧に辛抱強く耐え、最終的に彼女が率いる政党が国会で多数派を占める事により、軍政に終止符を打ちました。

その後のミャンマーの経済発展は目覚ましいものがあり、日本企業も多額の投資を行う様になりました。

今回の軍事クーデターはミャンマーを過去の軍政に逆戻りさせるのでしょうか。

米誌ForeignPolicyが「Why Myanmar's Coup Is No Surprise」(ミャンマーのクーデターはサプライズではない)と題した論文を記載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

先週、ヤンゴンの西側外交官が懸念を表明しましたが、彼らの恐れは現実のものとなりました。

 軍部は、選挙人名簿と投票者に不一致の疑いがあるとして、新しい議会の召集に反対していました。

1月6日にワシントンで行われたトランプ前大統領の支持者と同じように、彼らは国民民主連盟(NLD)が圧倒的多数で政権に復帰した11月の議会選挙は不正であると主張しました。

ミャンマーの選挙にはいくつかの欠陥がありましたが、国政選挙委員会は広範囲にわたる不正の主張を拒否しました。

私が知る限り、以前の選挙人名簿に基づいて投票が数えられたとしても、軍部に近い政治家は圧倒的に負けていたでしょう。

11月の投票結果は明白でした。 NLDは、民族代表院224議席のうち138議席、衆議院の440議席のうち258議席を獲得しました。

軍部に近い連邦団結発展党(USDP)は、2つの議会でそれぞれ7議席と26議席しか獲得しませんでした。

NLDが2015年ほど人気が​​ないことを考えると、USDPのパフォーマンスはひどいものでした。

一方、NLDの人気の持続性は注目に値します。

1990年には、軍が許可した最初の選挙で簡単に勝利し、党は議会の492議席のうち392議席を獲得しました。

それは、軍部がアウンサンスーチーを何年も自宅軟禁した結果でした。

しかし、現実の政治ははるかに厳しいものです。

アウンサンスーチーは当時、ミャンマーの民主主義の傑出したチャンピオンであり、多くの国際的な栄誉を勝ち取りましたが、彼女は軍隊を味方につけておくように、常に注意を払いました。

彼女は、人気のあるBBC番組のインタビューで、ビルマの軍歌をお気に入りの曲と述べ、父親がビルマ軍を設立したことをリスナーに思い出させました。

軍隊が彼女をどのように扱ったかを考えると、彼女の発言は多くの人にとって驚きでした。

 

彼女は世界的な民主主義の象徴となり、1991年にノーベル平和賞を受賞し、リュックベッソンの映画の主人公となりました。

しかし、彼女は、軍がミャンマーのロヒンギャの少数派に対して犯した残虐行為と、その後の大量殺戮を非難することを拒否したことで、多くの人を失望させました。

NLDが権力を掌握した時でさえ、市民の自由が侵食され、ジャーナリストが逮捕されましたが、彼女は同情を示しませんでした。

ガンビアがミャンマーを大量虐殺で非難した事件についても、彼女は国際司法裁判所で軍部を強く擁護しました。

ミャンマー軍の顔になることによって、国際社会での彼女の信頼は失われました。

彼女は、彼女が軍隊に施した恩恵が報われるだろう、そして彼女がいつかミャンマーで完全な文民支配を確立することができるだろうと計算したかもしれません。

しかし、それは軍が支配を放棄することを前提としています。

ミャンマーの民主化を妨げているものは、軍が引き続き享受している特権と、アウンサンスーチーが外国人と結婚したために大統領になることを妨げる憲法上の規定です。

軍は議会の議席の4分の1を保持しているため、憲法の重要な部分を修正することはほぼ不可能です。

 

しかし、11月の選挙でのNLDの圧倒的なパフォーマンスは、勢力均衡が彼女に向かって傾いていることを示し、軍の最高指導者であるミン・アウン・ラインの大統領へのチャンスがなくなる事を意味しました。

そのため、将軍はクーデターという古いやり方を踏襲しました。

クーデターには誰も驚かないはずです。

将軍は国際的な批判を回避できると計算している筈です。

新しい米国政権は国内問題で手が一杯ですし、世界の大国は新型コロナ対応でおおわらわで、アウンサンスーチーはロヒンギャの問題を黙認したため、1990年代のように世界規模の支援を得られていません。

クーデターのリーダーの計算は当たっているかもしれません。

しかし、その代償は、ロヒンギャに対する暴力を扇動した仏教の僧侶や、軍隊、あるいはアウンサンスーチーによって払われることはありません。

このコストは、代議制民主主義への道が再び閉ざされたミャンマーの国民によって負担されるでしょう。

国際社会はミャンマーの民主的プロセスの回復を助けるために出来る事をしなければなりません。

ミャンマー軍事政権を制裁できるか

欧米政府は直ちに軍事クーデターを非難するメッセージを発しましたが、本格的制裁まで踏み切れるかなかなか判断が難しいところです。

中国は古くから、ミャンマーを支援しており、ミャンマー軍部と太いパイプがあると思われます。

もし欧米が制裁を発動すると、ミャンマーを中国の側に追いやってしまうリスクがあるのです。

ミャンマーの軍部はこの辺りも計算に入れて行動に出たのかも知れません。

ご存知の通り、米国は軍事クーデターに対して必ずしも制裁を発動しません。

エジプトのシーシー将軍のクーデターを容認したのがその良い例です。

アウン サン スーチーもロヒンギャの虐殺で軍部の肩を持った為、以前の様な輝きはありません。

このまま行くとミャンマー軍部の狙いが当たりそうなのが残念です。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。