米国の革命児ジェフ ベゾス
ご存知の通り、Amazonの創始者ジェフベゾスが最初に扱ったのは書籍でしたが、瞬くうちに米国から書店を駆逐しました。
その勢いを駆って電子商取引に本格的に参入し、多くの小売店を閉店に追い込みました。
しかし、現在のAmazonにおいて、稼ぎ頭はもはや電子商取引ではないようです。
クラウドサービスが最も利益を生み出す部門となっています。
この進化を止めないAmazonが、今後もその成長を維持できるかについて、英誌Economistが「Can Amazon keep growing like a youthful startup? - Investors certainly seem to think so」(Amazonは新興企業と同様に成長を維持できるか? - 投資家はもちろん可能だと評価している)と題して記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
ジェフ ベゾスは1994年の創立以来、いつまでも創業直後のスタートアップのように振る舞わなければならないと主張してきました。
このルールを順守することで、Amazonは積極的に革新し、絶え間なく拡大してきました。
同社は昨年、地球上の人間の2人に1人、35億個のパッケージを提供しました。
クラウドコンピューティング部門であるAmazonWeb Services(AWS)を使用し、1億人以上が昼間はズーム通話を行い、夜間はNetflixを視聴できます。
全体として、Amazonは昨年2800億ドル(約30兆円)の売り上げを記録しました。
コロナ感染が拡大する中、Amazonは便利なだけでなく、不可欠なものになりました。
同社の茶色のパッケージは、ロックダウンされたパンデミックの象徴となっています。
リモートの生活は、配信やクラウドベースの作業がなければ想像できず、ビデオストリーミングのような気晴らしがなければ耐えられません。
投資家は、オンライン生活へ後戻りしない傾向が加速していると見なしています。
Amazonの時価総額は2016年から2018年の間に2倍の7,340億ドルになりましたが、それ以来、更に2倍近くになっています。
その株は収益の118倍で取引されていますが、AppleとMicrosoftなどは25-35倍です。
Amazonのように物理的世界とデジタル世界の両方でトップの企業はありません。
物理的な世界では、他に例を見ないロジスティクスシステム(配送システム)を有しています。
Primeサービスに加入している1億5000万人の顧客は、すべての購入品を定額料金で受け取り、一部の場所では同日配達されます。
Amazonは、何億人もの買い物客の欲求と意思決定に関する比類のないデータを提供します。
これは、広告主が好むデータです。
Amazonの広告収入は現在110億ドルです。
世界のオンライン広告市場におけるその7%のシェアは、Google(38%)やFacebook(22%)を除けば他の誰よりも大きいです。
デジタルの世界では、Amazonがクラウドコンピューティングビジネスを支配しています。
このサービスは昨年、Amazonの売上に350億ドル、営業利益に92億ドルの貢献をしました。
しかし、Amazonには問題がないわけではありません。
ライバルは、eコマースとクラウドの両方で出現しています。
また、多くの国の政治家は、それが崩壊することを望んでいます。
Amazonのウェブサイトでの商品の世界的な売り上げの伸びが年率27%から18%に低下したと計算しています。
新型コロナ感染によって急増したオンライン需要にAmazonは十分対応することができませんでした。
Amazonはもはやプライムを頼りに米国での驚異的な成長を促進することはできません。
将来の小売成長は他の市場に依存します。
西ヨーロッパでは、Amazonが定着していますが、高齢化した欧州は、成長の原動力になりえません。
1年前、15年間の試みの後、Amazonは中国市場から撤退しました。
インドへの65億ドルの投資は問題を抱えているようですし、新興国市場ではこれといった成功例がありません。
しかし、投資家はAmazonの世界的な小売りの減速を問題視していません。
理由は単純です。クラウドサービスのAWSが好調でその利益がAmazon全体の 半分をはるかに超えているからです。
しかしクラウドでも競合は激化しています。
世界全体で、クラウドコンピューティングのAWSのシェアは2016年から2018年の間に53.7%から47.8%に減少しましたが、Microsoftはほぼ2倍の15.5%になりました。
AWSクラウドは、信頼性と速度の点で他のクラウドよりも優れていると見なされています。
しかし、ベゾス氏が新しい業界に参入する習慣があるため、データをAWSに提供することに嫌悪感を抱く会社がこれまでになく増えています。
このため、ASWがAmazonから独立した方が良いかもしれないという話が議論される様になりました。
AWSを手放すことは、Amazonの絶え間なく増加する歴史の中で群を抜いて劇的な再編を意味します。
アナリストは、AWSがAmazonの価値の3分の1以上、5,000億ドル(50兆円)に達すると考えています。
成長が鈍化しているとはいえ、10年間で年間20〜30%の成長を遂げた場合、世界最大の利益創出者になる可能性があります。
投資家やインサイダーが会社を分割する1つの方法について話している間、ワシントンでは超党派の政治家たちがAmazonがその市場支配力を乱用したと非難しています。
欧州委員会も独占禁止法の観点からAmazonに対して措置を検討中です。
ベゾス氏は、Amazonの創業以来、ほとんどの企業よりも長く老化するのを防ぐことができました。
しかし、ある日、年をとる日が来るかも知れません。
ベゾス氏の新規事業展開
稼ぎ頭となったクラウドサービスが生まれたきっかけは、クリスマス商戦と言われています。
米国ではクリスマス商戦が年間小売売り上げの2割を占めるほど、注文が集中します。
通常の売り上げの何倍にも膨れ上がるわけですから、電子商取引を処理するコンピューターの容量はこのピーク時に合わせて確保される必要があります。
アマゾンも巨大な能力を有するコンピューターを確保したのですが、クリスマス商戦の時期以外はそのの処理能力に空きが生じます。
この空いた能力を第三者に使ってもらおうと始まったのがクラウドサービスでした。
さすがにジェフ ベゾスは頭が良いですね。
コロナ感染が始まってからというもの、テレビ会議だネットフリックスだオンラインゲームだと巣篭もり需要は全てアマゾンのクラウドサービスが取り込む結果となりました。
このクラウドサービスをベゾス氏がAmazonから分離させるかはともかく、彼は天才的なビジョンを持った経営者ですので、新たな展開を考えていると思います。
それは彼が現在のめり込んでいる衛星サービスやAmazon Goといった新しい分野への進出かもしれません。
彼の事業の成功はインターネットの普及という技術革新に支えられていました。
次に狙う市場もおそらく何らかの技術革新に裏付けられていると思います。
彼の次の一手に注目しましょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。