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中国の貧富の差は米国以上に拡大している

 

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中国人富裕層の急増

中国人の金持ちと言えば、以前は中国から東南アジアに移り住んだ華僑の人々が有名でしたが、最近は違います。

中国本土で急速に富裕層が増加している様です。

先日フランスの超高級不動産を買っているのが中国人だというお話をしましたが、フランスだけではありません。

東京の不動産にも彼らは多くの投資を行っている様です。

しかし、共産主義を建前にする中国で、外国の高級不動産を買い漁る程の大金持ちが増加した場合、大多数の貧しい人はこの現象をどの様に理解するのでしょうか。

米誌Foreign AffairsChina’s Inequality Will Lead It to a Stark Choice - A New Oligarchy Can Be Restrained Only by the Government That Made It(中国の不平等は厳しい選択を余儀なくさせるでしょう- 新興成金はそれを生み出した政府自身が抑制する他はない)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要約

中国モデルの資本主義は、驚異的な経済成長を実現し、多くの人々を貧困から救い出しましたが、貧富の差を広げることなくしては成立しませんでした。

不平等は中国のシステムのアキレス腱になり、政府が表向き唱える社会主義の信条を覆し、支配者と被支配者者の間の信頼関係を損ないます。

この問題に対処するには、その原因と範囲を理解する必要がありますが、中国ではそれは容易ではありません。

中国の不平等は、一見、急速な成長と都市化の予測可能な産物のように見えます。

しかし、国の富と収入の分配の観点はより重要です。

不平等は中国のシステム内の経済的および政治的権力の結びつきから生じており、国の指導部が新しい経済エリートの成長する力をどのように抑制するかに関して難しい選択に直面していることを示唆しています。

 

構造的起源

1960年代に、アメリカの経済学者クズネッツは、農業から製造業へ、あるいは農村から都市へと移行する経済は、不平等を生じやすい傾向があると主張しました。

その理由は、都市の住人は農業で働く人々よりも高い収入の仕事を選択できるからです。

地方の労働者が都市に移住する時、不平等を増大させる安価な労働を提供します。

しかし、これらの条件は、農村労働者のの供給がある限り続きますが、その供給が終わると、非熟練賃金は上昇し始め、不平等は縮小します。

したがって、中国が不平等の拡大を見たのは、ある意味で驚くべきことではありません。 1970年代後半、鄧小平は経済改革を開始し、不平等と実質所得が一致して上昇しました。

今日の中国の所得格差のレベルは非常に高いです。

公式データによると、中国のジニ係数(貧富の差を測る尺度)は約0.47です。 比較すると、米国のそれは約0.41です。

 

しかし、中国の国全体を一言で言い表す事はできません。

たとえば、2019年には、最も裕福な3つの州と最も貧しい3つの州の所得比率は4対1でした。

米国の豊かな州と貧しい州の比率は2対1未満です。

さらに、中国では都市部と農村部の所得の格差が非常に大きいため、都市部と農村部の所得分布は2つの異なる国に属しているように見えます。

中国の平均的な都市部の人はハンガリーの平均的な人と同じくらい裕福ですが、中国の平均的な農村部の人はベトナムの平均的な人と同じくらい貧しいのです。

 

汚職と政党

多くの国と同様に、中国の不平等は構造的であるだけでなく政治的でもあります。

最も儲かる汚職と、非常に高い収入を確保できる中国共産党のメンバーシップも中国の不平等の大きな要因となっています。こ

のような要因は、地理的な要因ほど広く研究されていません。

しかし、データは存在します。

習近平は2012年に腐敗防止キャンペーンを開始し、横領された金額、違法行為の期間、関係者の数など、特定の腐敗事例の詳細が定期的に収集されるようになり、公開されました。

この情報から、政府のさまざまな行政レベルで横領された金額を計算することができます。

データは2つの法則を示しています。

つまり汚職にはより高い行政レベルでより多くのお金が必要であり、共産党職員はすべてのレベルで最も横領していると言えます。

腐敗はまた、政治的に有利な立場の人々が突然金持ちになるのを見るので、不公平な不平等に対する批判を高め、政治システムを損なう可能性があります。

共産党自体が有用な例を提供します。

私は1988年から2013年までの期間に中国の人口の上位5%のエリートに関する調査を実施しました。

以前共産党のメンバーは通常、産業労働者と政府の役人でしたが、現在、金持ちの党員の約半分は民間部門に属しています。

言い換えれば、共産党の最も裕福なメンバーは主に「新しい」社会階級から来ているのです。

政治的に強力な共産党員が民間部門に移ることを決定するか、あるいは金持ちになった人々が、党のメンバーシップを利用して経済力を強化することが有用であると考えるでしょう。

 

習近平は大規模な腐敗防止キャンペーンを過去に実施しましたが、将来、手ごわい障害に直面する可能性があります。

中国では政治力と経済力が融合したエリートを生み出されています。

そのエリートは、腐敗を制限することにほとんど関心がないでしょう。

そもそも、一党独裁制度の中で腐敗を抑制する事に矛盾があります。

中国の民間部門の力強い発展は、新しい社会階級を生み出します。

政府は党員を通じて彼らの政治参加を呼びかけます。

しかし、その後、彼らは政治的および経済的権力の両方を備えた上流階級になりますが、そのようなエリートの力をどのように制御することができるでしょうか?

独裁者のみがこれを行う事が可能でしょう。

中国がこれから直面する問題

中国のジニ係数が米国を上回っているというのは驚きますね(因みに日本は0.34)。

貧富の差が極度に拡大していると言われる米国よりも貧富の差が大きいのであれば、共産党の掲げる平等な社会の実現というスローガンが色あせて見えます。

まあこれも鄧小平が開放経済を開始した時点である程度予想されていたのかも知れません。

お金が大好きな中国人に金儲けしても良いとお墨付きを与えたのですから、パンドラの箱を開けた様なものです。

人間の富への渇望というのは凄まじいものがありますから、あっという間に中国を激変させてしまった訳です。

しかし、鄧小平の政策が間違った訳ではありません。

彼は中国の経済高度成長を実現させ、多くの貧者を救った訳ですから、評価されるべきでしょう。

今後の中国の課題は、ここまで貧富の差が広がってしまった社会の弊害を如何に抑えていくかでしょう。

この論文の主張する様に、既に社会に変調は見えています。

先日、アリババグループの創始者ジャック マーが拘束されたとの報道が流れましたが、力を増す経済エリート層を如何にコントロールするか見ものです。

今後少子高齢化が急激に進むと言われる中国の経済成長を維持するためには、経済エリートの言う事を聞かざるを得ないし、一方で貧富の差が更に拡大する様な事があれば、国民の不満が爆発しかねないと言う事で、中国は難しい舵取りを迫られそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。