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現代版科挙試験によって人材を選りすぐる中国の実力主義

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今年も行われるGaoKao

日本は受験の季節に突入していますが、欧米は受験の時期がそもそも違うので、受験シーズンではありません。

新型コロナ感染が広がる中、欧米ではこれまでの様な筆記試験を行わない様です。

それではお隣の中国はどうでしょうか。

中国版センター試験と言って良い「高考(Gao Kao)」は予定通り行われる様です。

この現代版科挙と言っても良い試験のスケールは凄まじく、日本のセンター試験の昨年の受験者55万人に対して、その20倍の1071万人が受けたと言われています。

英誌Economistが中国人の人生を決めると言われるGaoKaoについて「The benefits of acing China’s most important academic exam - High scorers in the gaokao go to better universities and earn higher wages」( 中国の最も重要な学術試験に合格することの利点 - GaoKaoの高得点者はより良い大学に行き、より高い賃金を稼ぎます)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

今年厳しい大学入試から逃れたいと望んでいる中国の学生には悪い知らせです。

多くの一流大学がコロナの大流行の中で通常のテストを行う事を放棄したアメリカとは異なり、中国は学生に厳しい措置をとりました。

文部省は、6月7日と8日に予定通り、どの大学に通うことができるかを決める国家大学試験を実施すると発表しました。

普通GaoKaoとして知られる大学試験は、世界最大の規模です。

毎年夏に、中国の約1,000万人の学生が、2〜4日間にわたり9時間続く厳しい試験を受けるために、全国の7,000の試験センターを訪れます。

生徒は何年もの間、明確な目標を持って勉強します。

テストで高得点を獲得すれば、良い仕事を得るための前提条件である、国の最高レベルの大学に応募する資格が得られるからです。

この試験は誰でも受験でき、実力主義になるように設計されています。

貧しい家庭の子供たちにとって、良いスコアは農場や工場での生活の苦労から逃れることができます。

スタンフォード大学のHongbinLiとロンドンスクールオブエコノミクスのRuixueJiaによる最近の研究によると、GaoKaoは学生の将来の収入に影響を与えます。

彼らは、中国のトップ100大学に入学する為の足切り点を調べました。

10,000人を超える人々から手作業で収集したデータを使用して、足切り点のすぐ下のスコアの学生は一流の大学に通う可能性が6%しかないのに対し、それ以上のスコアの学生は20〜40%であることがわかりました。

また、大学を卒業後、最初の仕事で5〜9%多く稼ぎます(グラフを参照)。

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出典:Economist

多くの人がGaoKaoの改革を呼びかけ、生徒たちに過度の圧力をかけていると主張しています。

中国の人々はしばしばこの試験を「一つしかない丸太の橋を渡る何千人もの人々」と例えます。

この試験はまた、暗記が多すぎて創造的思考が少なすぎると批判されています。

都市からの裕福な生徒が成功する可能性が最も高いため、その実力主義的な評判も疑問視されています。

結局、GaoKaoは成果を上げないのかもしれません。

侮れない中国

GaoKaoで高得点を上げるために注がれる中国人高校生の労力は半端なものではないらしく、中国は相当な学歴社会である様です。

多くの日本人は、中国は共産党独裁で、共産党幹部の子弟が縁故で偉くなっていくと思っている様ですが(私もそう思っていました)、実は相当な実力社会の様です。

現在、米国の大学で勉強する中国人学生は20万人以上で日本人留学生の10倍以上います。

その殆どは共産党幹部の子弟でもなんでもありません。

優秀な中国人学生の多くは米国で学位を取った後、米国に残らず、中国に帰国する様です。

こういう学生を中国では「海亀」と読んでいる様です。

中国は科挙を生んだ国です。

この科挙の伝統は今も残っていて、出自は問わない、能力さえあれば栄達の道が開けるというコンセプトはGaoKaoにも色濃く反映されています。

国の運命は教育にかかっています。

厳しい受験競争は批判を生むかもしれませんが、若い時に徹底的に勉強するという事は大事な事だと思います。

Economist記事は厳しい見方をしていますが、GaoKaoが象徴する中国の教育熱の高さそして全国から広く俊才を集めることができる実力主義のシステムを持つ中国を侮る事はできません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。