ワクチン接種証明は必要か
世界中で驚くべきスピードでワクチン接種が行われています。
高齢者への接種が全く始まっていない日本を尻目に、英国などは全国民の少なくとも3分の1が一回目の接種を済ませました。
当然の様に湧き上がってきた議論が、接種済みの人々にワクチン接種証明(ワクチンパスポートとも呼ばれます)を発行すべきか否かというものです。
米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)が「Covid-19 Vaccine ‘Passports’ Raise Ethics Concerns, Logistical Hurdles」(新型コロナワクチンの「パスポート」は倫理上の懸念を引き起こし、ロジスティックの問題も解決する必要がある)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
WSJ記事要約
新型コロナワクチンの接種が世界的に進む中、各国で接種を証明する「パスポート」の発行を巡る議論が本格化してきました。
ただ、未接種者を排除することにもなりかねず、倫理的な問題や実際の管理方法に関して懸念する声が上がっています。
英政府は先頃、バーの利用やオフィス出勤、スポーツ観戦などにワクチンの接種か、検査での陰性結果の証明を国民に義務づけるかどうか、検討する方針を明らかにしました。
イスラエルでは先週、接種者にホテルやジムの利用を認めるワクチンパスポートの発行が開始されました。
サウジアラビアは接種者に対し、アプリ経由でヘルスパスポートの発行を始めたほか、アイスランド政府は海外旅行を可能にするワクチンパスポートを配布しています。
バイデン米大統領は先月、接種を示すデジタル証明書の構想が実行可能かどうか、政府機関に検討するよう命じる大統領令に署名しました。
パスポートの推進派は、ワクチン接種の途上であっても経済を再開できるとして、その意義を強調します。
パスポートが発行されれば人々が娯楽を楽しむことも、感染リスクを気にせず安心して職場に復帰することも可能になると指摘。
また接種を促す動機にもなると指摘しています。
しかしながら、その見立てには潜在的な落とし穴があります。
調査によると、マイノリティーの人種はワクチン接種を敬遠する傾向があることが分かっており、差別につながる恐れがあります。
また、接種対象として優先順位の低い若者も、同様に不当な扱いを受けることになりかねません。
健康に関する個人情報の入手を企業に認めることについても、倫理上の観点から疑問が浮上します。
「こうした議論の根幹にあるのは、これ(パスポート)を何のために使うかという点だ」。オックスフォード大のミルズ氏はこう指摘します。
「外国旅行のためなのか? 職を得るためか? それとも牛乳を買いにいくためか?」
保健当局者からは、ワクチンパスポートが誤った安心感を与えかねないとの懸念も出ています。
例えば、ワクチンによって他人への感染リスクがなくなるのか、変異ウイルスに対する予防効果が落ちるのかなどの問題については、はっきり分かっていません。
科学者は目下、これらの答えを急いで探し求めています。
欧州連合(EU)は25日開催した首脳会合で、域内全体でのデジタル証明書の導入について、3カ月以内に対策をまとめることで合意しました。
しかし、使用の目的についてはなお意見が分かれています。
オーストリアやギリシャなどは、接種者に旅行を認めるようなパスポートを求めています。
一方、域内でもフランス、ベルギー、オランダは懐疑的です。
マクロン仏大統領は25日夜、当面接種を受けられない若者を差別したくないと述べました。
世界保健機関(WHO)も作業部会を創設し、デジタル証明書導入を巡る方策について検討しています。
世界でも接種が急ピッチで進んでいるイスラエルと英国では、パスポートを巡る議論も各国に先駆けて本格化しています。
英国は7月末までにすべての成人の接種を済ませることを目指していますが、証明書に関する検討を6月半ばまでに完了させる考えを示しています。
イスラエルは20日夜、接種を証明する「グリーンパスポート」の発行を開始しました。
保持者はジムやホテルの利用やコンサートに行くことが可能になります。
向こう数週間に営業を再開するレストランやバーも利用できるようになります。
イスラエル当局者は、できる限り多くの国民にワクチン接種を促す上で、グリーンパスは重要なツールだと話します。
同国ではこれまで、人口の約50%が少なくとも1回目の接種を終えている。
だが、物議を醸す問題も浮上しています。
同国保健相は、まだ最終決定ではないとしながらも、ワクチンを接種していない社員に対して、雇用主が社員の出勤を阻止することを認める法案を検討していると述べました。
イスラエルの公衆衛生関連の労組は、ワクチンの接種状況について情報を共有することはプライバシー侵害への懸念を高めると警告していると指摘しています。
人口のおよそ3分の1が少なくとも1回目の接種を終えている英国では、ワクチン接種を国民に義務づけることは法的に不可能です。
ジョンソン政権の閣僚は当初、ワクチンパスポートに反対する立場を示していましたが、ここにきて政府の姿勢に変化が生じています。
ジョンソン首相は、一部の国で黄熱病の予防接種を入国者に義務づけているように、海外旅行には接種の証明が必要になる公算が大きいとの考えを示しました。
だが、パブや劇場の利用といった娯楽について、政府が国民に証明書の提示を義務づけるべきかどうかは複雑な問題だとして、更に検討する必要があると説明しました。
接種を拒否した人が二流市民として扱われかねないとの懸念に対処するため、英政府は検査で陰性だった人にも証明書の発行を認めるべきかどうか検討している。
具体的には、英国民保健サービス(NHS)の開発したアプリにワクチン接種や陰性結果の証明を表示する案が検討されています。
しかしコロナの接触追跡アプリを開発するのに英政府は半年以上かかった経緯があり、専門家は、実施まで長い時間を要するだろうと述べます。
証明書の発行に伴う社会的、経済的な代償に見合うか疑問が生じています。
難しい問題だが、パスポートは有意義
確かに、接種を拒否した人が二流市民として扱われたりするリスクは排除すべきと思いますが、ワクチンパスポートは海外旅行を可能にし、より安全な環境を作るのに役立ちます。
積極的に導入を検討すべきと思います。
しかし、ワクチン接種者が他の人に感染させる可能性が非常に少ないことが立証される事が前提条件として重要です。
この確認なくして、ワクチンパスポートは無意味です。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。