金融緩和の流れに棹を刺したジョンソン首相
昨年来、コロナ感染の広がりとともに、多くの国が歴史上例を見ないほどの金融緩和に踏み切りました。
その結果、実体経済は低迷しているにもかかわらず、株や不動産価格は上昇するという不可思議な現象が生じています。
一部の経済学者は、インフレにならなければ、財政赤字に悪影響はないというMMT(現代貨幣理論)を唱えています。
本当にそうなのでしょうか。
雪崩を打って金融緩和に踏み切った大国の中で、最近逆の動きを見せた国がありました。
それは英国です。
法人税の増税をロックダウンの最中に決定したこの国の政策を、海の向こうフランスの経済紙Les Echosが「Audace britannique」(英国の勇気)と題した記事で論評しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
すべてのポピュリスト指導者の中で、ボリス・ジョンソンは、信頼を得る事ができる唯一の人間ではないにしても、数少ない一人の様です。
彼のボサボサ髪の後ろには、欧州が多くの教訓を得るべき効率性の怪物が潜んでいる様です。
英国は、フランスの3倍のスピードでワクチン接種を続けています。
行政のスピード、実用性(多額の支払いを行っても、迅速にワクチン接種する方が良い)、研究所と大学を協力させる能力などすべてにおいて、私たち欧州が欠けている強みを持っています。
水曜日に大蔵大臣によって提示された予算の方針から、彼らの厳格さに驚かされました。
ロックダウンが解除されていないのに、これだけ厳しい条件を国民に課すのは英国だけです!
他に誰が、わずか2年で法人税を6ポイントも引き上げ、何百万もの世帯に打撃を与える所得税支払猶予の停止を発表しますか?
予算規律が時代遅れの言葉になりつつあり、各国が恥知らずに経済回復のために数百億ユーロを供出している今、英国は蓄積された巨額の債務を返済し、次のステップを準備している唯一の大国です。
このような発表は、真の政治的勇気を証明しています。
第一に、保守党は法人税の引き上げに反対しているため、その支持の一部を失うリスクがあるからです。
第二に、ブレグジットが英国をタックスヘイブンにするという幻想を打ち砕くためです。
今のところ、彼の作戦が成功する可能性が浮上しています。
ボリス・ジョンソンがどの程度不人気に耐えることができ、彼の財務大臣を支援するかはまだ分かりません。
しかし、彼に運があるのは、2024年までに国政選挙がなく、今回取った厳しい措置がそれまでにその効果を生み出すことを期待出来る事です。
ドイツやフランスは来年までに政権を更新するため、同じ様な改革を行う事はできません。
借金を返した人が最後は報われる
国にしても、個人にしても借金を返した人が報われるのが筋であり、インフレにならなければ、どれほど財政赤字になっても問題ないとの議論は納得がいきません。
国民に対して、税金を上げ、負担を強いるのは政治家として大変勇気のいる事です。
日本の首相も、増税を決定した首相は概ね短命です。
ジョンソン首相の場合、小さい政府を志向する保守党の政治家でもありますので、自分の党の支持者からもそっぽを向かれるリスクがあるのです。
彼の勇気ある判断が2024年の総選挙で国民からどの様な評価を受けるか大変興味があります。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。