激しさを増すワクチン争奪戦
新型コロナ感染に対して、現在我々が有する最も効果的な対策はワクチンです。
ワクチンの接種が世界中で急ピッチで始まった今、大国間でワクチンの争奪戦が始まっている様です。
仏紙Les Echosが「Les vaccins au centre d'une nouvelle passe d'armes entre Londres et Bruxelles」(英国とEUの間の新たな火種となったワクチン)と題した記事を掲載しました。
かいつまんで紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
新型コロナに対するワクチン争奪戦が、英国とEUの間の緊張を煽っています。
火曜日の夕方、欧州理事会のシャルル・ミシェル議長は、英国と米国がワクチンの自国からの輸出を阻止していると述べました。
彼の声明は、先週、イタリアで生産されたアストラゼネカ社製ワクチンのオーストラリアへの出荷を阻止したと批判されたEUを擁護することを目的としていました。
国際的な相互援助の最前線にいると自負し、ほとんど全てのワクチン生産者の輸出要求を承認しているEUは、「輸出を止めたことは一度もない」とシャルル・ミシェルは語りました。
ブルームバーグが発表した数字によると、3月9日の時点で、3,400万回分のワクチンがEUから33か国に輸出され、少なくとも800万回が英国に輸出された様です。
「しかし、EUへの納入量の約束を守った生産者だけが輸出を許された。」と欧州外交官は語ります。
EU本部がそのワクチン輸出管理制度を設定した2月初旬以降輸出はコントロールされています。
英国政府のスポークスマンは火曜日の夕方、「英国のワクチン輸出禁止ついての言及は完全に誤りである」と述べました。
ボリス・ジョンソン首相は水曜日に、「ワクチンやワクチンの成分の輸出を阻止していない」と再確認し、英国のラーブ外相は水曜日の朝、駐英EU外交代表を召喚して「事実を正しく伝える様に」と申し入れました。
英国の否定に直面したEU理事長のシャルル・ミシェルは、これに対抗し、「ワクチンに禁止または制限を課すには、様々なやり方がある」と述べ、英国の反応が透明性の向上とEU及び第三国への輸出の増加を導く事を期待すると述べました。
EUの情報筋によると、アストラゼネカ社のワクチンのみが製造されている英国は、同社との契約における優先購入権を盾に、事実上輸出を阻止すると見られています。
アストラゼネカ社のCEOであるパスカル・ソリオ氏自身がメディアで、2つの英国の工場からの生産は英国向けであると述べました。
EUは、大幅な納期の遅れに直面し、同社に対して何週間も抗議してきました。
アストラゼネカ社とEUの契約には、生産拠点として英国の工場が含まれていると主張しています。
一方、ジョンソン英首相は「私たちはあらゆる形態のワクチンナショナリズムに反対します」とEUの批判を煙に巻きました。
ワクチンをめぐる応酬は、ブレグジット後の合意の尊重をめぐって、すでに緊張が高まっている状況で発生しました。
1月末、EU本部は、ワクチンの輸出を監視するために2つのアイルランド(アイルランドと北アイルランド)の間に国境管理を課すことを望んでいた事で英国を激怒させました。
日本への影響
日本はご存知の通り、英国アストラゼネカ社とファイザーBiontech社の2社と契約を結び、ワクチンの到着を今か今かと待っていますが、良く考えてみると、この2社は英国とEUに生産拠点を持っています。
日本に納入されるワクチンは英国とEUから供給されるのです。
この両者が自国のワクチンの確保に躍起になり、輸出管理まで行っている最中に、日本に十分なワクチンが来るはずがありません。
これは深刻な問題です。
フランス政府は昨日、国民全員(成人)の全てにワクチンが行き渡るのは6月になると発表して、国民の顰蹙を買いました。
フランス国民にしてみれば、英国がその3倍のスピードでワクチン接種を進めている事から、フランス政府の手際の悪さに批判が集中する訳です。
しかし、我が国のワクチン接種は何時になるのでしょうか。
高齢者でさえ何時になるか政府は明らかにしていません。
いや発表したくても出来ないのでしょう。
6月に全員に接種が行われるフランスが羨ましく感じられます。
やはり日本はワクチンの自主開発に今後注力する必要があります。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。