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中国の高度経済成長時代は終わりを告げたか

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期待を下回った経済成長率

中国は先週、今年の経済成長率を6%と発表しました。

これを受けて、我が国のメディアは一斉に、中国は世界的なコロナ感染拡大の中でも、6%と突出した経済成長を実現するという論調で報道しました。

私自身も正直、この6%という数字は高いなと思ったのですが、専門家の間では、全く異なる分析がされている様です。

米誌Foreign Policyが「China’s New Five-Year Plan Is a Disappointment - As domestic problems mount, Beijing’s planners are lowering expectations.」(中国の新しい5カ年計画には失望した - 国内問題が高まるにつれ、北京の計画立案者は期待値を下げている。)

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要旨

先週、中国は最大の年次政治集会「全人代」を開始しました。

この会議から出てくる政策文書は、多くの投資家と政治アナリストを驚かせました。

高い成長率を目指して努力する時代は明らかに終わりました。

むしろ、中国のGDP成長率は、今年以降の予想を下回る可能性があります。

冷静で財政的に保守的な計画立案者が政策を管理している今、北京は債務削減と構造改革の困難な議題に注意を向けています。

変化の最初の兆候の1つは、中国の李克強首相の年次政府作業報告書が6%前後の非常に保守的なGDP目標を発表した事でした。

多くの金融アナリストは、国際通貨基金の予測に従って、8%以上を予想していました。

昨年は、新型コロナ感染を言い訳として、成長目標をまったく設定しませんでしたが、今回北京では、以前の成長目標アプローチに戻るかどうかについて激しい議論がありました。

結局、北京は妥協しました。

李氏は、保守的なGDP目標を発表する一方で、中央政府の財政赤字を2020年のGDPの3.6%から2021年のGDPの約3.2%に削減する目標を設定し、インフラ開発に資金を提供するための重要なメカニズムである地方政府の特別債発行の割り当てを減らす計画を発表しました。

バイデン政権がパンデミック財政刺激策を倍加する一方で、中国は急速にそれを廃止しています。

北京のシフト戦略のもう1つの大きな兆候は、第14次5カ年計画の草案に見られます。以前の計画には、明確な成長目標が含まれていましが、今回それは省略されました。

これは、中国の急増する公的および私的債務水準に取り組みたい、いわゆる「財政の保守派」が政権内部の議論に勝ったことを示しています。

最も著名な2人の保守派は、中国の経済トップである劉鶴副首相と、中国銀行保険規制委員会の郭樹清長官です。

国家発展改革委員会(NDRC)の高官を含む「高度経済成長派」は、現在GDPの280%に相当する中国の膨れ上がる債務水準についてあまり懸念していませんでした。

彼らは8%ものGDP目標を望んでいましたが、それは更に多くの公的インフラ支出によって促進されるでしょう。

 

政府作業報告書と5カ年計画案は中国がいくつかの長年の構造的問題に対処するのに苦労していることを明らかにしました。

北部のラストベルト州が停滞するにつれて、地域間の不平等は拡大し続けています。

昨年と比較して、今年の政府作業報告書は、これらの国内の不均衡により多くの注意を向けました。中国政府はまた、その「低出生率の罠」を認めました。

—昨年以来出生数が15パーセント減少した事は特筆すべき事です。

(出生率は、家族に2番目の子供を産むことを奨励する一連の措置にもかかわらず、70年間で最低レベルに低下しました。)

これらのような根本的な構造的傾向はすべて、北京にとって深刻な問題です。

結婚率の低下、離婚率の上昇、複数の子供を持つことへの経済的阻害要因。李氏は「適切な出生率を達成するために努力する」ことを約束しましたが、具体的なアイデアは示されませんでした。

中国の計画立案者はまた、世帯登録(戸籍)制度の改革も行おうとしています。

戸籍は、仕事を求めて農村部から都市に移動する国の数億人の移民労働者(都市部の労働力の約40%)を管理しています。

どちらかといえば、戸籍の改革は当局者にとってより多くの頭痛を引き起こし、経済的不平等を増大させる可能性があります。

教育を受けた裕福な移民は、より良い公共サービスを備えたより豊かな都市で戸籍を取得します。

貧しい移民は、財政が厳しく、社会サービスの質が低い小さな都市で立ち往生するでしょう。

環境問題においても中国政府の発表は我々を失望させました。

総エネルギー消費量を制限することを約束せず、石炭生産量の増加への扉を開いたままにしました。

自慢の「戦狼外交」とはうらはらに、政府作業報告書と第14次5カ年計画は中国が未だに外国資本と技術ノウハウが必要であり、国内の研究開発努力が不足していると指摘しています。

自給自足を達成するという自国の目標に大きく遅れをとっています。

有名な「中国製造2025」レポートは、中国が2025年までに国内で年間チップ消費量の70%を生産することを目的としていました。

しかし、昨年、国は使用量の6%しか生産しませんでした。

外国のチップメーカーは中国の産業スパイに警戒しており、ワシントンから北京への技術移転を制限するよう圧力をかけられています。

 

一方、中国は国内でCOVID-19のパンデミックを鎮圧した可能性がありますが、ウイルスの亡霊は米国よりも長く中国経済にとどまります。

これは、中国がワクチンの展開に大きく遅れをとっていることが一因です。

2月末までに、中国の14億人の人口のうち少なくとも1回の投与を受けたのはわずか4パーセントでした。

中国のワクチンは西洋のワクチンよりも効果が低く、自然感染によってCOVID-19に対する免疫を獲得した中国人はほとんどいません。

したがって、同じ保護効果を得るには、米国やヨーロッパよりもはるかに高い予防接種レベルが必要になります。

北京は先週、今年は国境管理を緩和する可能性は低く、2022年半ばまで集団免疫に到達する可能性は低いことを認めました。

 

何年もの間、中国の計画立案者は、国が苦痛な改革に取り組むのではなく、国内問題から抜け出すことができると想定して、GDP指標に固執してきました。

中国はこれまで世界を驚かせ、2008年から2009年にかけての世界的な金融危機にも迅速かつ効果的に対応し、昨年のCOVID-19にも対応しました。

しかし、中国の「成長第一」の時代は終わりを告げています。

 

中国経済は今のところ着実に舵を取っています。

トップの政策立案者は、今後の課題を認識していますが、適切に対応するというビジョンをまだ示しておらず、需要の回復に賭けすぎている可能性があります。

消費は依然として弱く、2021年以降、当局が予想するよりも成長が鈍化する可能性があります。

中国のアキレス腱

この記事を読む限り、無敵の勢いで経済成長を続けてきた中国も深刻な国内問題を抱えている様です。

急速に進む少子高齢化、地方と都市間の経済格差の拡大、半導体に見られる様なハイテク技術の遅れなど中国の構造的問題は山積しています。

中央政府が経済をコントロールする中国のシステムが米国を上回る事ができるかこれからが正念場と思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。