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ワクチン接種で浮き彫りになったEUのアキレス腱

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英アストラゼネカ社に責任転嫁したEU

新型コロナ感染の拡大は、世界中で政治家に活躍の場を与えました。

これ程までに政治家がテレビに継続的に映し出された事は、今までほとんど無かったはずです。

小池都知事やニューヨーク州のクオモ知事などは、人気の芸能人よりも登場回数が多かったのではないでしょうか。

ワクチンの接種開始により、政治家の登場回数は更に増えてきた様です。

切り札であるワクチンの確保、その迅速な接種は政治家の評価に直結します。

しかし、政治家は責任逃れも得意中の得意技ですので、物事が悪い方向に動き始めると、責任をなすりつける相手を本能的に探し当てます。

フランスの場合それは永遠のライバル英国のワクチンだった様です。

一昨日のブログでマクロン仏大統領がアストラゼネカ社製ワクチンに責任をなすりつけ、ワクチン接種の遅れを覆い隠そうとした事をお話ししましたが、お膝元フランスの経済紙Les Echosが、アストラゼネカ社ワクチンを一時使用停止にした仏政府の決断を批判しています。

「La suspension du vaccin AstraZeneca semble irresponsable au regard du nombre de vies qu'il sauve. Un nouveau faux pas pour l'Europe.」(アストラゼネカワクチンの停止は、それが救う命の数を考えると無責任であるように思われる。欧州にとってそれは更なる失策である)と題された記事、かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

今日ではなく明日予防接種すれば、全国でさらに数十人の死者が出るでしょう。

唯一必要な予防策は、できるだけ早く全員に予防接種をすることです。

アストラゼネカワクチンを数日間停止するという政治的決定は、それが救う命の数を考えると無責任であるように思われます。

私たちは、基本法に定められている予防の神聖な原則を思い出し、副作用を詳細に調べる必要があります。

しかし、法律は、最近取られたものほど厳しい措置を規定していません。

それどころか、それは起こり得る損害に対して「比例的」措置を課します。

今回の場合、どのように血栓症の発症数に比例した対応をすべきなのでしょうか?

フランスで記録された血栓の症例はたった一つしかありません。

 

合理性を超えた予防原則は、責任からの脱却を引き起こします。

これは、今日ではほとんど犯罪のように思われます。

どんな犠牲を払っても予防接種を続けることを強く求める世界保健機関の声は、周囲の懐疑論に直面して聞こえなくなっています。

イギリス人は、私たちとは異なり予防接種を続け、私たちを見ながらせせら笑っています。

アストラゼネカを投与された1,000万人の英国人のうち、血栓症を報告したのは35人だけで、致命的ではありませんでした。

その割合はヨーロッパで人気のあるワクチンであるファイザーと同等です。

 

透明性を貫こうとした点ではフランスとヨーロッパを非難することはできません。

彼らは、できるだけ多くの市民に予防接種を受けることを奨励したはずです。

しかし、疑いを取り除くと主張する保健当局は国民の疑いを強化しただけであり、彼らと共にワクチン忌避キャンペーンを強化しました。

より広義には、この様な局面で表面化するのはEUの消極的姿勢です。

それは最も慎重な国が常に先導している国の連合です。

実行速度を最重要視した米国とは異なり、欧州では、最も深刻な時期もスピードは二の次でした。

ベルリン、ローマ、マドリッド、パリが月曜日にワクチンを一時停止した不協和音は、私たちの健康の信頼を回復するためにまだ長い道のりが残されている事を物語りました。

コロナで浮き彫りになったEUの弱点

先進国の中で、ワクチン接種が早く進んだのは英国と米国でした。

それに対してEUは大きく出遅れました。

ドイツにBionTechというワクチンメーカーを有していながら、何故これだけ遅れをとってしまったのでしょうか。

それにはEUが国の連合体である事が大きく影響しているものと思われます。

単独の国家であれば、ワクチンの調達、輸送、接種といったプロセスを自分で迅速に決めて行けますが、EUはそうは行きません。

ワクチンをどこから幾らで買い、それをどの様な順番で各国に配布するかといった点において、加盟国のコンセンサスが必要になって来るわけです。

マクロン大統領はおそらくこういったEUの抱える問題を承知の上で、アストラゼネカという英国メーカーに批判の矛先をむけたものと思います。

しかし、自国の新聞にもその企ては見透かされてしまった様です。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。