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日本型資本主義に将来はあるか

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会社は誰のものか

昔、先輩から「会社は誰のためにあるのか」と質問されて、返答に窮した事を思い出します。

社員のためにあるのか、お客様のためにあるのか、はたまた株主のためにあるのか、会社が持つStake Holder(利害関係者)の数は多く、考えれば考えるほど答えを導き出すのが難しい質問です。

英誌Economistがこの難題についてHow Japan’s stakeholder capitalism is changing - Slowly, with stubborn resistance to change(日本のステークホールダー資本主義はどのように変化しているか - 頑強な抵抗にあいつつも徐々に変化している)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

「日本の資本主義の父」として知られる渋沢栄一が再びブームとなっており、彼の経営哲学「論語とそろばん」が流行しています。

17世紀の江戸時代の「三方良し」という教訓を基に、渋沢は儒教の道徳と市場の論理を融合させました。

 

企業は社会的目的に導かれ、株主の利益を最大化するだけでなく、より幅広い利益に奉仕するべきであるという考えは、先進国で支持を得つつあります。

日本はこれを大規模に試みた珍しい大国です。

失業率が低く、不平等が比較的少なく、社会的結束が高い豊かな国になっています。

しかし、このシステムは企業の退廃と低成長も助長しました。

それらはトレードオフの関係にある事を示しています。

日本企業がその内なる渋沢を見出し始めたのは戦後の事でした。

民間部門はセーフティネットの一部となり、多くの場合生涯にわたって雇用を保証しました。

高品質で安定した労働力とサプライヤーとの強い結びつきは、製造業を成功に導き、日本経済が西洋の経済に追いつくことを可能にしました。 

たとえそれが明らかに利益をもたらさないとしても、企業は依然としてサプライヤーや顧客との長期的な関係を維持しています。

取締役会と経営者は、株主の代表として行動することの少ない長年の会社の内部関係者によって支配されています。

友好的な企業がお互いに株式を保有する株式持ち合いの習慣は、外部からの圧力から企業を保護するのに役立ちます。

この様な社会契約は、危機が発生したときに吉と出ます。

パンデミックの間、日本の失業率は3.1%を超えませんでした。

それは、日本がアメリカや他の西側諸国で発生した破壊的なポピュリズムを回避するのに役立ったかもしれないとグロービスビジネススクール創設者の堀義人は考えています。

 

一方、古いシステムの欠点も明らかになりました。

1990年代に日本の成長が鈍化し始めたため、フルタイムの労働者を手放すことに消極的な企業は、サラリーマンに与えられた保護がない短期契約でより多くの人々を雇っています。

「非正規」労働者の割合は、1990年の20%から今日では40%近くまで増加しています。彼らの殆どは若者か女性です。

 

現在、多くの資本は、経営陣に説明を求める方法がほとんどない外国人および機関投資家からのものです。

経営者は、利益を再投資したり株主にお金を返したりする代わりに、危機に備えて現金を蓄えます。

渋沢が生きていたら、日本の経営者に「もっとリスクを冒すように」と促したでしょう。

 

日本は、労働力の縮小と高齢化を補うために、ダイナミックな民間セクターを必要としています。

これを実現するため、安倍前首相は、企業統治を経済改革の中心に据えました。

2014年に導入されたスチュワードシップ・コードは、機関投資家が経営幹部にリターンの改善を促すことを奨励しました。

翌年に実施されたコーポレートガバナンスコードは、取締役会を活性化するために、より多くの社外取締役を招聘するよう企業に迫りました。

「米国では、CEOが過剰なリスクを取る事を制約していますが、日本では、リスク回避的なCEOが重宝されます」と政府高官は語ります。

改革はある程度の効果をもたらしました。

東京証券取引所の最初のセクションに上場している企業の95%以上は、現在2人以上の社外取締役を有しています。

その結果、経営陣は財務実績と株主の要求により多くの注意を払っています。

リターンと資本コストは「彼らの頭の中に常にあります」と、長年の社外取締役であるアーサーミッチェルは言います。

 

M&A活動も活発化しています。

サントリー会長である新浪剛史は、ライバルへの一方的なM&Aはもはやタブーではないと述べています。

アメリカのレベルには全く達していませんが、敵対的買収の中には、昨年、家庭用品チェーンのニトリが小さなライバルである島忠を買収した例など、成功したものも出てきています。

 

株主投票について投資家に助言する会社であるISSは、現在、純資産の20%以上が株式持ち合いである企業の取締役に反対票を投じることを提案しています。

今週の臨時総会で、東芝の株主は、あるファンドによって要求された調査を行う事を認めました。

昨年の年次株主総会で、同社の経営陣が投資家に社長を保護するよう圧力をかけたのではないかと疑われています。

 

それでも、株主の声はそれほど大きくなっていません。

早稲田大学の宮島英昭氏は、上場企業のトップマネージャーの90%以上が社内昇進であると考えています。

投資銀行のモルガン・スタンレーによれば、株式持ち合いは依然として日本の時価総額の32%を占めています。

つまり、多くの場合、「経営陣は株主の​​声をあまり気にしていない」と、アクティビスト投資家であるC&IホールディングスのCEOである村上絢は嘆きます。

 

「日本では、労働者やサプライヤー等ステークホールダーへの配慮は依然重要です」と日本商工会議所の三村会長は言います。

一方、企業が考慮しなければならないステークホルダーの数は多くなっています。特に外国人投資家は、日本が伝統的に無視してきた環境や多様性などにもっと注意を払うように企業に促しています。

女性は管理職のわずか15%、取締役会の議席の11%しか占めていません。

 

キャリアパスへの期待は変化しています。

一部の若い日本人にとって、良い待遇はもはや終身雇用ではありません。

彼らはより良い賃金、柔軟な労働条件、そして単調でない仕事を望んでいます。

労働者の貢献は、もはや彼らが費やした時間ではなく、彼らが付加する価値によって測定されるべきであると、日立での実践を推進した経団連の中西会長は言います。

日本型資本主義は生き残れるか

終身雇用や年功序列といった日本特有のシステムは、右肩上がりの高度成長が前提条件ですので、もはや生き残ることは難しいと思います。

日本型資本主義は否が応でも変わらざるを得ないでしょう。

日本の経営者は近年積み上がった利益を社内留保として、投資に回しませんでした。

これがコロナ感染といった危機には役に立ったのですが、再投資を継続的に行ってきた米国企業との差を生む事になってしまいました。

社員や顧客、サプライヤーといったステークホルダー全てを満足させられる様な経営ができれば、それは素晴らしい事ですが、それは高度成長時代の幻想と言わざるを得ないでしょう。

今後、企業が生き抜いていくためには、企業の成長戦略を確実に実行するために、最重要のステークホールダーである株主の理解、支援を得る事だと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。