バイドゥの急成長
バイドゥ(Baidu)という会社ご存知ですか。
中国語では「百度」と書く様ですが、中国で最大の検索エンジンを提供している会社で、そのシェアは何と70%にも上ります。
中国のIT企業といえば、アリババ、テンセント、ファーウエイ辺りが有名ですが、バイドゥも相当な実力を持った会社の様です。
その創始者ロビン リーがバイドゥを創設したのは2000年の事、その後あれよあれよという間に会社は急成長し、その時価総額は10兆円に迫るところまで来ました。
そのバイドゥの今後の成長に関して、英誌Economistが「Baidu turns to personal transport for growth - Will robotaxis and electric cars make up for slowing advertising revenues?」(バイドゥは今後の成長のために輸送事業に目を向けます - ロボットタクシーと電気自動車は広告収入の減速を補うでしょうか?)と題する記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
ロビン・リーは、2014年に、中国で最も裕福な男になるまでの道のりを振り返るように頼まれた際に 「私はただ幸運でした。」と微笑みながら語りました。
北京を拠点とする検索エンジンであるBaiduの共同創設者兼上司であるLi氏は、謙虚さを投影しようとしていたと思われます。
しかし、彼の言葉は文字通りに事実を表しているかも知れません。
政府の介入のおかげで、中国本土ではGoogleにアクセスできません。
そのため、Baiduは中国の検索における比類のないリーダーとなっています。
しかし、広告収入の伸び悩みから、今では別の道を歩もうとしています。
Baiduの検索の優位性には議論の余地がありません。
昨年の月間平均アクティブユーザー数は5億3800万人で、国内のライバル3社の合計のほぼ6倍でした。
Baiduの株価は1年で3倍になり、時価総額は930億ドルになりました。
この投資家の関心は高く、香港で二次上場を申請し、3月23日に取引が開始され、 同社は約40億ドルを調達する予定です。
しかし、Baiduの企業価値の急上昇は不自然に思えるかもしれません。
パンデミックにより中国企業がマーケティング予算を削減せざるを得なくなったため、主な収入源である広告は伸び悩んでいます。
Baiduの主要な検索サービスの広告は、2020年に663億元(96億ドル)をもたらしましたが、これは、前年より5%少ない数字です。
中国経済が回復したとしても、広告がBaiduの成長を以前ほど強力に後押しする可能性は低いと思われます。
Baiduの経営陣も同様に認識しているようです。
会社は急速に多角化しています。
昨年11月、オンラインエンターテインメントでの存在感を高め、快手などと競争するために、動画共有およびライブストリーミングアプリであるyyLiveを36億ドルで購入することに合意しました。
Baiduはまた、中国の2大技術ライバルであるAlibabaとTencentに追いつくために、クラウドサービスに多額の投資を行っています。
しかし、間違いなく最も革新的な推進力は、同社が「インテリジェントドライビング」と呼んでいるものです。
Baiduの新しい目論見書によると、このビジネスは今日の収益にはほとんど貢献していませんが、「長期的な収益化の可能性は非常に高い」とのことです。
ビジネスには3つの可能性があります。
1つ目は、Baiduの社内自動運転技術であるApolloを搭載した全国的なロボットタクシーのフリートの確立です。
同社はすでに北京の一部を含む中国の3つの都市で自動運転タクシーを運行しています。
乗り物は現在無料ですが、Baiduはまもなく課金を開始する可能性があることを示唆しています。
国際的な野心もあります。
1月には、カリフォルニアで自動運転車をテストする許可を得ました。
Baiduは、電気自動車の量産も計画しています。
1月、中国の自動車メーカーであるGeelyと新しいベンチャーを設立し、3年以内に「インテリジェント」(完全に自律的ではないにしても)EVを市場に投入する予定です。
2035年までに、中国政府は販売された他のすべての新車をEVにすることを望んでいます。
Baiduは、すでに10社に販売している高解像度マップや自動駐車技術などのサービスを中国の自動車メーカーに販売することで、即時の収益を得ることもできます。
Baiduは、中国のモビリティ事業への参入が遅れてましたが、少なくとも、投資家は彼らに賭けている様です。
Baiduの先見性
中国のITに関する産業戦略は日本と対照的です。日本はGAFAの市場参入を簡単に許しましたが、中国は自国の企業を育てるまで、GAFAの参入を許しませんでした。
GAFAが参入を許された時には、既に中国企業が市場をコントロールするまでに巨大化しており、結局歯が立たず撤退しました。
現在、中国市場でそれなりの存在感を示しているのはアップルだけです。
今後、米中の経済覇権を巡る争いで注目を集めるのは、モビリティ事業かも知れません。
この分野ではグーグルなど米国勢が一歩先を行っている様に思われますが、中国勢も侮れません。
その中でもこのバイドゥは先頭を走っており、既に大都市で無人運転タクシーが営業中とは驚きです。
中国には無人運転を普及させる上で、二つの大きなアドバンテージがあります。
一つはその巨大なマーケットです。
今や世界最大の新車マーケットですので、テストデータも集まりやすいですし、コスト削減も容易です。
もう一つは安全基準の緩さです。
西側先進国では、無人運転車を市街で走らせようとすれば、厳重な安全基準を突破しなければなりませんが、中国では無人運転で世界一になるという国益を前にすれば、安全基準は二の次三の次になりがちです。
近い将来、東京でも中国製無人タクシーが見られるかも知れません。
それはかなり現実性の高い話だと思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございます。