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欧州復興基金にドイツ憲法裁判所が待ったをかけた

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第三波が襲うEU各国

新型コロナ感染は欧州で再拡大しています。

フランスやドイツでは変異種の感染が進み、これに反応したドイツのメルケル首相は先日急遽ロックダウンを発表しました。

しかし、その後準備が整っていなかった事から、ロックダウンを取りやめ、国民に対して不手際を陳謝するという事態に陥りました。

一方で、コロナで大きなダメージを受けたEU各国の経済の復興を支援する目的で90兆円規模の復興資金がEU首脳のマラソン会談で昨年合意に至った事はご存知の通りです。

 

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上記ブログでも以前取り上げましたが、この復興資金が実行に移されるためには、EU27国全てで批准が行われる必要があります。

しかし、ドイツの連邦憲法裁判所で最近判決が下り、再審が行われる様です。

この問題について、仏紙Les Echosが「Coup de frein de la Cour de Karlsruhe au plan de relance européen」(欧州復興資金に連邦憲法裁判所がブレーキを)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

難産に苦しんだ欧州復興基金は現在深刻な後退に直面しています。

ドイツ連邦憲法裁判所は金曜日に、ドイツのシュタインマイヤー大統領に、7500億ユーロ(90兆円規模)のこの救済基金を承認する法律を批准しないよう要求しました。

 

ドイツ議会の2つの議院、木曜日の連邦議会、そして金曜日の朝、連邦参議院が、立法文書に青信号を与えたばかりでした。

足りないのは大統領の署名だけでした。

しかし、公布の前に、カールスルーエの連邦憲法裁判所の裁判官は、復興基金によって想定されている共通の債務のメカニズムを対象を再審査したいと考えています。

 

メルケル首相の挫折

この控訴の原告は、極右党(AfD)の元リーダーであるBernd Luckeが率いる2,250人以上の市民を集めたBündnisBürgerwille(「市民の同盟意志」)です。

彼らは、そのような債務の発生は、ドイツが受け入れられないほど大きな財政的リスクを表すと主張しています。

コロナウイルスの蔓延を食い止めるために新たなロックダウンを課そうとしましたが、アンゲラ・メルケルは失敗し、挫折しました。

彼女は確かに、1年前にマクロン仏大統領と共に、この復興基金の構築に関わりました。

その原則は、EU予算に基づいて共通の欧州債券を発行し、危機の影響を最も受けた国に優先的に資金を再分配し、欧州予算への各加盟国の貢献度に比例して将来返済することです。

BündnisBürgerwilleにより今回提起された問題は、ドイツ全体の共通債務メカニズムへの反対を強化するリスクがあり、これはドイツ基本法と矛盾すると彼らは信じています。

特に、AfD党は、復興基金の違憲性に異議を申し立てる意向をすでに発表しています。

ドイツでは、EU南部の国々が債務を返済する能力についてより広い不信感があります。

 

基金は27の全会一致を要求します

パンデミックがEUの経済全体に大きな打撃を与え続けている為、BündnisBürgerwillの控訴に関する判決には注目が集まります。

欧州委員会は、27のEU加盟国すべてが決定を批准するまで、融資の契約と支払いを開始することはできません。

現在までに、フランス、イタリア、スペインを含む10の加盟国が批准を通知しています。

 

欧州委員会では、今のところ状況を劇的に表現しないように努めています。

広報担当者は、欧州システムの「合法性を確信している」と述べ、「特にパンデミックによる課題を考慮して」加盟国による迅速な承認に進むことが「重要」であることを強調しています。

欧州委員会は、ドイツ憲法裁判所が「迅速に」決定することを期待しており、第2四半期の終わりまでにすべての加盟国により批准されることを想定しています。

EUの抱える根本的な問題

EUは昨年、この復興基金をめぐり、南北が激しく対立しました。

最後に纏ったのは、倹約派のリーダー格であったドイツのメルケル首相が、欧州の分裂を避けるためには、妥協が必要だと歩み寄ったためでした。

しかし、そのメルケル首相も任期終了が迫り、ドイツ国内での支持率が低下しています。

先日のロックダウン撤回は彼女の影響力が低下している事を象徴する出来事でした。

ドイツがもし復興基金の批准をしなかったら、これは本当にEUの危機を迎える事態になると思います。

今後の憲法裁判所の判決に注目しましょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。