天体現象に救われた巨大コンテナ船
日本の正栄汽船が保有する巨大コンテナ船「エバーギブン」を座礁したスエズ運河から開放するのに数週間かかるのではと予測する専門家もいましたが、幸運にも昨日船は離礁する事ができました。
予想より早い問題解決には星の巡り合わせが大きな影響をもたらした様です。
この天体現象とスエズ運河の今後の見通しについて、米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)と英BBCの記事をご紹介したいと思います。
WSJ記事抜粋
海上交通の要衝で立ち往生した巨大コンテナ船を離礁させるため、エンジニアが必要としたのは幸運な「星の巡り合わせ」でした。
実際、その日は太陽と地球と月が一直線に並んでいた。
エジプト東部のスエズ運河で座礁した大型船「エバーギブン」を移動させる作業は難航を極めました。
海難救助チームは今週の満月に望みをかけました。
満月の頃、潮位は通常の満潮時より数十センチ上がります。
そのため全長400メートルの船体を運河の岸壁から引き離すのが容易になるはずでした。
限られた可能性を最大限生かすため、エンジニアは迅速に作業する必要がありました。
効果が続くのはわずか2、3日。だが運河の通航を再開させるにはここでベストを尽くすしかありません。
満月や新月のたびに、干潮と満潮の潮位差は大きくなります。
これは月が太陽と直線上に並び、地球と月のどちらかが3者の真ん中に位置する時に起こります。
これによって地球に働く引力が大きくなり、その結果、満潮時には潮位がより高く、干潮時には潮位がより低くなります。
これは大潮と呼ばれ、月に2回発生すします。
しかし今回はその効果が増幅されました。
満月がちょうど、楕円軌道上で月が地球に最接近する時期と重なる、今年最初の「スーパームーン」だったからです。
スーパームーンは年に数回起きますが、3月28日夜にはスーパームーンの影響で、エバーギブン号が浅瀬に乗り上げた23日の満潮時よりも約50センチ潮位が高くなっていました。
遭難船引き揚げの専門家ニック・スローン氏によると、大潮による何センチかの潮位上昇が決定的な違いとなり、数千トンの浮力が加わってエバーギブン号を浮かせることができたと言います。
BBC記事抜粋
今回の事故の影響で、一部の船はすでにこの地域を離れており、アフリカの南端を巡る別のより長いルートを選びました。
必然的に、貨物は計画よりもはるかに遅れて目的地に到着します。
彼らが港に到着すると混雑する可能性があり、将来の航海スケジュールは混乱に陥っています。
「その結果、ヨーロッパへの商品の輸送コストは上昇すると予想されている」とBBCの特派員は報告しています。
海運グループのマースク社は、「世界の生産能力と設備への影響」は顕著であると述べました。
それが二度と起こらないようにするために、エジプト政府は、再発防止策を検討する予定です。
数日前、スエズ運河庁の長であるオサマ・ラビーに、将来そのような巨大な船を運河に送ることを思いとどまらせるかもしれないとの懸念を伝えたところ、 彼は、「スエズ運河に代わるものはない。それは速くて安全だ。」答えました。
しかしセキュリティについての懸念は消えません。
スエズ運河の対テロ対策に不安あり
今回の事故は、大型コンテナ船が座礁しただけで、世界経済に大きな影響を与える事を世に示しました。
もしテロリストが大型船を乗っ取って、故意に座礁事故を起こせば、彼らは比較的低いコストで世界経済に大きな影響を与える事ができます。
エジプトやその周辺国にはテロリスト集団が多く存在します。
彼らの攻撃から大型船を守るのはそれほど簡単ではありません。
今回の事故は、スエズ運河に変わる選択肢、例えば北極海ルートなどを浮上させるきっかけになるかも知れません。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。