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来年に迫った北京冬季五輪のボイコットはあるのか

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ボイコットの可能性

次の冬季オリンピックは来年2月に北京で行われる予定です。

最近の新疆ウイグルや香港での中国の行動に対して、西側諸国から制裁措置が発表される中、北京オリンピックのボイコットという事態にまで発展するのでしょうか。

1980年のモスクワオリンピックに対するボイコットはソ連のアフガニスタン侵攻に抗議するものでしたが、柔道の山下選手やマラソンの瀬古選手が、ボイコットを決定した日本政府に対して涙ながらに抗議する姿は忘れられません。

来年に迫った北京オリンピックに関して、英誌EconomistがWill countries boycott China’s Olympics in 2022? - Outrage about Xinjiang is fuelling calls to stay away(2022年の中国のオリンピックをボイコットしますか?新疆ウイグル自治区に対する怒りは、大会を敬遠しようという呼びかけを煽っている)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

2015年、国際オリンピック委員会(IOC)が2022年の冬季オリンピックの開催地を北京に決定した時、一部の人々は中国の人権問題を理由にその決定を批判しました。

しかし、中国の競合候補は、同じく権威主義国家であるカザフスタンでした。

ノルウェーなどの民主主義国は競争から撤退しました。

そして、2年以内に、中国が新疆ウイグル自治区に、100万人以上のウイグル人を投獄するための収容所を建設することを想像した人はほとんどいませんでした。

西側諸国の中国に対する態度は、最近、硬化しました。

1月、米国政府は新疆ウイグル自治区での弾圧を「大量虐殺」と呼びました。 3月22日、これに英国、カナダ、欧州連合が加わり、残虐行為に関与した中国当局者に対する制裁を発表しました。

中国の人権問題をめぐって圧力をかけることは、西側諸国によるまれな協調的試みでした。

彼らもまた、香港での中国の弾圧とリベラルな規範に対する挑戦の世界的な高まりによって窮地に立たされています。

2月4日に開始される予定の冬季オリンピックは、オリンピック史上最も物議を醸すものの1つとなるでしょう。

 

これまでのところ、ソ連のアフガニスタン侵攻に抗議してモスクワオリンピックをボイコットしたアメリカのように、選手の派遣を拒否する可能性は低いようです。 (東側諸国は、ロサンゼルスでの1984年の夏季オリンピックをボイコットしました。)

また、アメリカ、カナダ、ヨーロッパの活動家や一部の政治家によるそのような行動の呼びかけにもかかわらず、大会が他の場所に移されるとは予想されていません。

IOCは、ゲームは政治ではなくスポーツに関するものだと主張しています。

企業スポンサーにも、支援を中止するという動きはみられません。

しかし、ゲームが近づくにつれ、さまざまな種類のボイコットの呼びかけが増えるでしょう。

2008年、北京が夏季オリンピックを主催したとき、一部の活動家は、中国がダルフールで大量虐殺を行ったスーダンを支援したことから、そのイベントを「ジェノサイドオリンピック」と名付けました。

 

一部の国の指導者は、一部の選手と同様に大会を敬遠する可能性があります。

バイデン大統領は、彼が何をするかまだ明確にしていません。

しかし、新疆ウイグル自治区での中国の行動を彼らがどのように説明しているかを考えると、彼や他の米国の高官が大会に出席する可能性は低いでしょう。

共和党の上院議員ミット・ロムニーは今月、米国は選手を派遣するが、選手の家族以外の観客には行かないようにするべきだと主張しました。

中国は、新型コロナの復活を恐れる場合、厳格な国境管理を維持することを決定するかもしれません。

日本は3月20日、パンデミックのため、7月に始まる東京オリンピックから海外からの観客を締め出すと発表しました。

 

大会を後援している企業は、ますます強い圧力に直面するでしょう。

ドイツに本拠を置く世界ウイグル会議のアーキン女史はこれらの企業にチベットの人権団体と共に「1つずつ」アプローチしており、必要に応じて「その対応を公表する」と述べています。

彼らは、アメリカの民泊サービス会社であるAirbnbから始めましたが、この会社は、コカコーラ、サムスン、VISAなど主要なオリンピックスポンサーの一つです。

 

IOCの当局者は、ボイコットは選手を罰するだけで、効果が無いと言います。

ソ連によるアフガニスタンの占領は、モスクワオリンピック後8年間続きました。

IOCは、アパルトヘイト時代に南アフリカの参加を禁じましたが、それは国連決議に基づいて行われたものでした。

IOCの力には限界があり、今月、IOCの会長であるトーマス・バッハは、彼の組織は「超国家政府」ではないと述べました。

 

活動家たちは、中国がオリンピックを利用してを国威を誇示した2008年の繰り返しを恐れています。

開会式には数千人の中国軍が参加し、チベットや中国の他の少数民族を代表する伝統的な衣装を着て中国の旗を掲げた子供たちも参加しました。

それは、台頭する大国のお披露目式でした。

 

最近、国としての自信を持ち始めた中国は新たな敵を作っています。

ファーウェイの幹部がカナダで拘留されたことを受けて中国で逮捕された2人のカナダ人が拘留されたままでいると、冬季オリンピックの超大国であるカナダで大きな反対運動が生じるでしょう。 (最近、この二人は二年以上拘留された後初めて法廷に出廷しました。)

中国がオーストラリアに対する経済的圧力を維持する場合、ボイコットを求める声が高まる可能性があります。

ヨーロッパは、EUの新疆ウイグル自治区の制裁に応じて3月22日に中国が課した制裁に立腹しています。

オリンピックのボイコット運動が勢いを増すならば、それは国内での虐待と同じくらい海外での中国の行動が原因かもしれません。

政治に振り回されるオリンピック

オリンピックの創始者クーベルタンの理想は大会から政治色を排除するというものでした。

今でもその精神はIOCに受け継がれています。

しかし、過去の大会を見てみると、オリンピックは政治に翻弄されてきました。

ナチスドイツ時代のベルリンオリンピックは、ヒトラーによりゲルマン民族の優秀さを誇示する大会となりました。

彼が大会の華である男子100メートル競走決勝で、ドイツ人選手がアメリカの黒人ジェシー オーエンスに敗れた際に、ヒトラーが地団駄踏んで悔しがる姿は映像に残されています。

クーベルタンの唱えた理想とは裏腹に、政治が絡めば絡むほど大会は熱を帯びるのがオリンピックです。

東西冷戦の時代には、共産圏の選手と西側諸国の選手の4年に一度の真剣勝負が見られるという事で大いに盛り上がりました。

ヒール(敵役)である共産圏諸国の選手がいなければ、面白くないのです。

興行としてみた場合、オリンピックは共産圏やナチスドイツの様な独裁国家が存在した方が盛り上がるのですが、大会を後援するスポンサーには大きな圧力が掛かってくるでしょう。

彼らは人権問題等に対して態度を明らかにする必要があり、今後なり手が少なくなるでしょう。

ホスト国の国威発揚に利用されるオリンピックは、それ自体自己崩壊する種を抱えている様です。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。