MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

アフガニスタンからの全面撤退を決断せざるを得なかったバイデン 政権

f:id:MIYOSHIN:20210417165910j:plain

3.11事件が決断させたアフガニスタンへの派兵

昨日のブログでミャンマーがアフガニスタンの様な破綻国家になってしまう可能性について書きましたが、そのアフガニスタンの現在の状況はどうなっているのでしょうか。

バイデン 大統領はこの14日アフガニスタンからの米軍全面撤退を発表しました。

駐留米軍が完全撤退した後の力の空白を埋めるのはタリバンなのでしょうか、はたまた地域大国であるイランやロシアなどでしょうか。

この問題に関して米誌Foreign Affairsが「The Taliban Are Ready to Exploit America’s Exit - What a U.S. Withdrawal Means for Afghanistan」(タリバンは米軍の撤退を利用する準備万端が出来ている。アフガニスタンにとって米軍撤退の意味は)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要旨

米国は、2020年2月にタリバンと締結した協定に従って、数千人の軍隊を国から撤退させ、過激派が容易に利用できる治安上の空白状態を作りました。

その後6か月間、タリバンは大規模な戦闘に勝利し、広大な領土を奪還し、交渉の席で妥協を渋る様になりました。

確かに、武力で勝つことができる時に、なぜ権力を共有することに同意する必要があるのでしょうか?

4月14日水曜日、バイデン米大統領は、残りのすべての米軍が2021年9月11日までにアフガニスタンから撤退することを発表する予定です。

彼の政権は、タリバンとの合意に基づいて米国の撤退を完了するか、テロの脅威を抑制するために必要な最小限の軍隊で更に駐留を続けるかという難しい選択に直面しました。

しかし、状況の悪化により、和平プロセスの見通しの悪さと相まって、アメリカは撤退せざるを得ない様です。

バイデン政権の方針にかかわらず、タリバンは妥協する事に抵抗し、戦争は激しさを増す事が予想されます。

 

タリバンが追い詰められていた時代はそれほど昔のことではありません。

彼らは2017年から2019年の間、米国の特殊作戦部隊、ドローン、空爆によって、多くの死傷者を出し、軍事的後退に直面しました。

2019年、タリバンの交渉担当者の1人が、米国の空爆が多くのタリバンを殺害し、領土を占領する能力を妨げたことを私に認めました。

この環境は、和平交渉が合意に達する可能性があるという希望を提供しました。

しかし、状況は2020年に著しく変化しました。

その年の2月、トランプ米大統領は、一定のテロ対策の保証、暴力の削減、および和平交渉を開始するというタリバン側の約束と引き換えに、米国が135日以内に8,600人の軍隊を引き下げることを決定しました。

しかし、トランプ政権は約束よりもさらに多くの軍隊を撤退させ、米国がアフガニスタン軍に効果的に助言し、空爆で支援することを不可能にしました。

即座に、2020年10月初旬、タリバーンはヘルマンド州の州都であるラシュカルガーを襲撃し、アフガニスタン軍が過去3年間保持していたその要地を取り返しました。

タリバンは今も前進しています。

彼らは、2018年の60,000から80,000以上に膨れ上がり、アフガニスタン軍の装備を大量に捕獲しています。

一方、アフガニスタン政府軍は混乱しています。

腐敗、消耗から公式に言われている総勢352,000の約50から70パーセントしか稼働していません。

タリバンとイスラム国(またはISIS)の細胞がカンダハール、ジャララバード、カブールなど大都市に侵入しています。

これらの都市の住民は疲弊しています。

彼らは、タリバンの支配が最終的に平和を達成することを意味するのであれば、それを容認することをいといません。

ある高学歴の平和活動家は次の様に語りました。「戦争は人々を殺し続けています。タリバンに関連しているものが、全て悪いわけではありません。 2,000人のアメリカ人が9.11で死んだのに、なぜ何百人ものアフガン人が毎週死ななければならないのですか?」

 

タリバーンの上級司令官が先月ワシントンポスト紙に語ったように、「この戦いは権力を共有することではない。この戦争は、イスラム政府をもたらし、イスラム法を実施するための宗教的な目的のためのものです。」

 

バイデン政権が9月までにすべての米軍を撤退させるという報告された計画を実行した場合、タリバーンはおそらく数ヶ月のうちに国の南部と東部のほとんどを占領するでしょう。

その後、政府は崩壊する可能性があります。

政府、その特殊作戦部隊、および旧北部同盟(タジク、ハザラ、ウズベクの指導者)が、カブール陥落を食い止めるのに団結する可能性はあります。

 

最終的には、アフガニスタンとアメリカ人だけが国の進路を決定するわけではありません。中国、インド、イラン、ロシアはすべてアフガニスタンに関心を持っており、タリバンがイスラム主義の国を作ることを望んでいません。

イランとロシアは、タリバンに反対するハザラ人、タジク人、ウズベク人と長年の関係を持っています。

両国は、米国を裏庭から追い出す方法としてタリバンに資金を提供していました。

米国が撤退すれば、彼らはタリバンと対立するかもしれません。

異なる地域大国が異なる側を支援するため、紛争はリビアとシリアの内戦に似たものになる可能性があります。

そのような地域的介入がタリバンが権力を取り戻すのを防ぐのに十分であるとしても、アフガニスタンの民主化の見通しは良くありません。

すべての地域のプレーヤーの中で、インドだけが民主主義を支持しています。

 

痛ましい真実は、1年前よりも交渉による和解からはるかに遠ざかったという事です。

その変化した現実は、中国との競争の激化、気候変動、パンデミック、およびその他の国内での差し迫った問題とともに、すべてのアメリカ軍を撤退させるという選択肢しかバイデン 大統領に与えません。

米国のアフガン駐留は不要かつ不可能

バイデン 大統領は以前上院外交委員会の委員長を務めていた頃、アフガニスタンへの米軍派兵を支援しました。

3.11事件の後、イスラム過激派を根元から断つといういう意味で、米国はアフガニスタンに多くの米兵を送りました。

しかし、米国の派兵は、アフガニスタンに平和をもたらしませんでした。

かえって反米感情が生まれ、それを利用するイランやロシアといった地域大国によって、内戦状態が生まれました。

上記の論文の中で、アフガニスタンの人が「2,000人のアメリカ人が9.11で死んだのに、なぜ何百人ものアフガン人が毎週死ななければならないのですか?」とつぶやいていますが、これが彼らの本音でしょう。

トランプ前大統領のタリバンとのディールを引き継ぐ事に、バイデン 政権は躊躇したと思いますが、バイデン 政権も米軍が残留しても効果が限定的である事を認識したのだと思います。

その上、米軍には全世界の紛争地帯に米軍を派遣する余裕はもはやありません。

台湾など米国にとって核心的地域以外は手を抜くしかないのが、現在の米国の置かれた状況だと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。