インドを襲った感染第二波
いよいよ来週にも、東京は非常事態宣言が発出される模様です。
変異体の感染率が高まり、なかなか感染を押さえ込めないのが現状です。
世界を見ると惨状を呈していた米国や英国はワクチンの普及もあり、感染者数が激減していますが、今も多くの国で感染者が増加しています。
その中でもインドはかなりひどい様です。
先日1日の感染者数が世界で初めて30万人を超えました。
日本は22日の全国の感染者数が5499人ですので桁違いです。
このインドの感染者数の急増はインド国内だけでなく、海外に与える影響も大きいと英誌Economistは警鐘を鳴らしています。
「India’s giant second wave is a disaster for it and the world」(インドの巨大な感染第二波はインドだけでなく世界にとって惨事である)と題した記事をかいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
4月14日はインドにとって重要な日でした。
ヒンズー教徒とシーク教徒が新年を祝うために集まりました。
多くのイスラム教徒は、友人や家族との深夜のごちそうでラマダンの初日を祝いました。
ハリドワールでは、今年、世界最大の宗教的集会である断続的なヒンズー教の祭りであるクンブメーラが開催される寺院の町で、100万人から300万人の人々が押し寄せ、ガンジスで儀式に参加しました。
そして、新型コロナ感染者が、初めて1日で20万人を超えました。
それ以来急増を続けており、わずか1週間後に315,000人に達しました。
これは、世界でこれまでに記録された最も高い数値です。
死者も急増し始めており、公式の犠牲者は大規模な過小評価であるという疑いがあります。
遺体の流入に対処するために、火葬場の外の歩道に仮設の火葬場が建設されています。
この恐ろしい第二波は、インドだけでなく世界にとっても大惨事です。
ウイルスがチェックされずに感染することを許せば、危険な新しい株が出現するリスクが高まります。
「二重変異体」と呼ばれる、インドで最初に検出された1つの心配な変異体は、アメリカやイギリスを含む他のいくつかの国ですでに発見されています。
科学者がそれがもたらす脅威の大きさを理解しようと努力している間にも、より多くの変種が現れています。
世界の他の地域に対するインドの第二波のより直接的な結果は、ワクチン供給の混乱です。
インドは世界の薬局になることを望んでいました。
しかし、症例数が爆発的に増加しているため、政府はワクチンの輸出を制限しています。
4月の前半に、インドは、直前の3か月の6400万に対して、海外にわずか120万個しか出荷できませんでした。
アストラゼネカワクチンを製造する民間企業であるSerum Institute of Indiaは、英国、欧州連合、および世界中でより多くのワクチンを供給するスキームであるCOVAXへの約束を反故にしています。
ワクチンの提供においてインドを頼りにしていたアフリカ諸国は、落胆して見ています。
混雑した都市と脆弱な医療体制で、インドは感染症を抑えるのに簡単な場所ではありません。
それでも、国は、感染を遅くすることにしばらくの間成功しました。
9月にピークに達したパンデミックの第一波による死亡者数は、理由は明確ではありませんが、驚くほど少なかったのです。
首相のモディは、およそ1年前に全国的な封鎖を迅速に開始しました。
しかし一つ失策を犯しました。
彼は都市に囲い込まれた何百万人もの出稼ぎ労働者を彼らの村に帰ることを許したのです。
これは後に全国に感染を広げる要因となります。
要するに、今年の初めまで、インド政府は、他の多くの政府と同様に、パンデミックとの闘いにおいて、失策はありましたが、悲惨な結果をもたらしませんでした。
しかし、自己満足に浸ったモディ首相は物事が制御不能になるのを許しました。
1月、彼は「問題を解決しただけでなく、世界が新型コロナと戦うのを助けた」と自慢しました。
しかし3月初旬、野党が運営するマハラシュトラ州で事件が急増し始めたため、その州政府を倒す為、彼の政府は支援を行いませんでした。
モディ氏の党派的優位性への容赦ない探求は、今月選挙を行う4つの州の1つである西ベンガルでも示されています。
彼と彼の副官は、彼らのライバルと同様に、マスクやいかなる形のソーシャルディスタンスもなしに、1週間にわたる選挙期間中に数え切れないほどの巨大な集会を開催しました。
もちろん、これは州の1億人の人々の間でパンデミックを広めるリスクがありますが、それはまた、病気の蔓延と戦うことから政府の注意をそらしました。
モディ氏の右腕で内務大臣のアミット・シャーは、4月の最初の18日間のうち12日間選挙キャンペーンに専念しました。
それは、モディ氏のワクチン政策がなぜ混乱したかを説明するのに役立つかもしれません。
2月中旬までに、政府は人口の3%分しかワクチンを発注しませんでした。
自国の卓越した技術を示す為に、国内産のワクチン(Covaxin)を十分な臨床試験を経ずに承認しました。
現在、人口の10%足らずがワクチンの初回投与を受けています。
これは他の多くの国よりも良い数字ですが、インドは巨大なワクチン生産国であり、もっとうまくできたはずです。
改善の兆しがあります。
4月13日、政府は、さまざまな先進国によって承認されたワクチンの輸入に対する迅速承認を発表しました。
また、遅ればせながら調達に資金を投入し始めました。
今週、Serum Instituteが生産を増やすのを助けるために約4億ドルを拠出すると発表しました。
モディ氏のインド人民党(BJP)は、4月18日に残りの大選挙集会を中止しました。
そして4月19日、政府はワクチン政策を更新し、18歳以上の誰もが来月から接種できるようにしました。
しかし、国のほとんどで供給不足が広がっています。
インドは1日300万人、つまり人口の0.2%にしか予防接種を行っておらず、それは1日の感染数の数をわずかに上回る程度です。
今後、ワクチンの生産量が増えたり、海外からの投与量が増えたりしても、現在の第二波は厳しすぎて、接種だけでは止めることができません。
皮肉なことに、選挙に勝ったモディ氏は、途方もない権力を持っています。
彼は現在の世代におけるインドで最も強力な首相です。
BJPは両方の議会を管理し、ほとんどの州政府を運営しています。
このすべての影響力を利用する瞬間があったとしたら、今こそコロナ対策に注力すべきです。
モディ氏は、彼が推進しているヒンズー教の宗教行事を含め、すぐに大人数の集会に厳格な規制を行う必要があります。
彼はまた、出稼ぎ労働者に国内の移動を制限すべきです。
牛の尿で病気が治ると考えている保健相は交代させなければなりません。
ワクチン生産を増やす方法をすぐに見つけなければなりません。
それは、米国などの国から必要な物資を確保するのを助けることを意味します。
インドの感染第二波がコントロールされない限り、全世界が苦しむでしょう。
日本への影響
インドはワクチンの世界市場への主要サプライヤーとして期待されていましたので、彼らが輸出規制をかけないといけないとなると、我が国の様に海外からのワクチンに全面的に依存している国は、大きな影響を受けることは間違いないでしょう。
一方、インドで一日300万人へ接種が行われているという事実を我々はどの様に解釈すべきでしょうか。
インドにとっては人口の0,2%にしかあたらないかも知れませんが、日本にあてはめれば、3%に相当します。(因みに日本の接種回数は4月21日で16万回)
インドでこれだけの量のワクチンを手当てできているのに、何故日本でできないのか不思議でなりません。
感染症はもはや安全保障上の危機だと思います。
我が国はこれまでこの問題を過小評価してきたつけを払わされていると思います。
今後、ワクチン生産に国が本腰を入れて取り組んでくれる事を期待します。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。