新しい利用規約が広げた波紋
皆さんは日頃LINEを使用されていると思いますが、LINEは日本では無敵ですが、世界的に見るとそのユーザーはそれほど多くありません。
LINEがメッセンジャーアプリの首位を取っている市場は、日本の他、台湾、タイに限られており、LINEが生まれた韓国でも2位に甘んじています。(LINEは日本生まれのアプリと固く信じていましたが、実際は韓国生まれです。)
メッセンジャーアプリの世界ナンバーワンは何と言っても、WhatsApp(親会社はFacebook)です。
そのユーザー数は20億人と言われており、私も国内ではLINEでやりとりしていますが、外国人とはもっぱらWhatsAppを利用して交信しています。
メッセンジャーアプリはその性格から、ナンバーワンのアプリが市場の総取りをする傾向が強く、世界市場のオセロゲームでは、WhatsAppが一人頭抜けている状態です。
しかし、そのWhatsAppが最近行った利用規約の変更が業界の勢力図に影響を及ぼしそうです。
この点について仏紙Les Echosが「Signal, Telegram, Skred : les messageries alternatives profitent de la méfiance autour des nouvelles conditions de WhatsApp」(Signal、Telegram、SkredなどのメッセンジャーアプリはWhatsAppの新しい利用規約に対する不信感を利用する)と題した記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要約
SignalとTelegramは5月15日に行われるWhatsAppの次のアップデートに対するユーザーの懸念が高まる事を期待しています。
そして、Facebook帝国のメッセージングアプリに代わる選択肢としての地位を確立する事を狙っています。
調査会社のAppAnnieによると、第1四半期に、2つのアプリの月間ユーザー数がすべてのカテゴリで増加しました。
ロシアのTelegramは、期間中に5,000万人のユーザーを獲得し、合計で5億5,000万人になりました。
Signalは数字を示していませんが、Edward Snowdenによって使用され、欧州委員会によって推奨された若いアプリケーションは、現在4,000万人に達している様です。
そのうち200万人が1月6日のWhatsApp発表後の1日で達成されました。
その日、WhatsAppは、InstagramやMessengerなどのFacebookグループのさまざまなプラットフォーム間で関連性を高めることを目的とした新しいプライバシーポリシーを発表しました。
目的は次のとおりです。
たとえば、企業がWhatsAppのユーザーの交信内容にアクセスして、Facebookにターゲットを絞った広告を表示できるようにすることで、WhatsAppでのeコマースを促進します。
Facebookはこれらすべてのインタラクションを使用して広告をさらに洗練することができます。
Facebookグループによると、WhatsAppで企業とチャットする1億7500万人のユーザー(合計20億人のうち)だけがこのアップデートの影響を受ける様です。
しかし、パニックははるかに大きく、多くのユーザーは、このアップデートを拒否した場合に、アカウントを失うことを恐れました。
他の人々は、この新しいプライバシーポリシーの背後に、「歴史的な」WhatsAppの終わりと、その2つの魅力であるデータ暗号化と無広告の終焉を見ました。
その後、SignalとTelegramへの大規模なユーザーの移動が始まりました。
Twitterでは、TeslaのCEO創設者であるElon Muskでさえ、Signalをダウンロードする様に、彼の「フォロワー」に呼びかけました。
1月中旬、世界的な抗議に直面して、Facebookは当初2月8日に予定されていたアップデートを5月15日まで延期することで消火を試みました。
新しい利用規約はヨーロッパ人には適用されず、データの暗号化も変更されない、とFacebookも説明しています。
しかし、騒ぎを収束させるのは困難でした。
Facebookは買収(2012年のInstagram、2014年のWhatsApp)を通じて、サービスの相互運用性を高めることを目指しています。
目標は、中国のスーパーアプリWeChatのような単一のエコシステムを作成し、米国の独占禁止法当局から、Facebookグループが「解体」される事を阻止する事です。
「価値を生み出すのはデータのプールであり、WhatsAppの新しいポリシーは驚くことではなく、Facebookの哲学に完全に適合しています。」とSkredを開発したベレンジャー氏は解説します。
今回の事件とは関係なく、代替メッセージングアプリの「市場」は成長しているようです。権威主義国の反体制派や民主主義国の小さな過激派によって使用されこれらのアプリは、個人データの保護が主要な関心事になるにつれて、ますます「主流」になりつつあります。
たとえば、Skredは、2年間でユーザーを2倍以上に増やし、月間ユーザー数は750,000人に達しました。
その特徴は、メッセージが中央サーバーに保存されることなく、送信者のスマートフォンから受信者のスマートフォンに直接送信されることです。
「20世紀には、表現の自由とはすべての人と話すことができるようになることでしたが、今日では誰がそれを聞くかを選択できる事になりました」とベレンジャー氏は語ります。
もちろん、どのメッセージングアプリもWhatsAppとその20億人のユーザーからかけ離れた存在です。
しかし、Skredの創設者にとって、「意識の高いユーザー」の市場は確実に成長している様です。
メッセージングアプリを選ぶ時代に
WhatsAppが我々が発信するメッセージの中身を分析して、Facebookの広告に活かすというのは気持ち悪いですね。
常にWhatsAppに友人との会話を覗き込まれている様な気がします。
元々、WhatsAppがユーザーを伸ばしたのは、それが end to endの暗号化に対応しており、誰も自分の発するメッセージを覗き見できないという安心感があったからです。
世界には政府が国民を監視している国が沢山あります。
そういう国では、メールやSNSも監視対象になっていますので、end to endの暗号化技術を採用しているWhatsAppは極めて安全な交信手段として重宝されていた訳です。
ある意味WhatsAppは「民主主義」アメリカの象徴だったと思います。
しかし、そのWhatsAppが金儲けのために、ユーザーのチャットを覗き見する事を許せというのはこれもある意味アメリカ的な拝金主義だと思います。
フランスなど欧州の国々は元々Facebookなどアメリカ生まれのハイテク巨人が市場を独占することに批判的ですので、今回のWhatsAppの動きは顧客離れを加速させるかも知れません。
私もTelegram試してみようかと思います。しかしこれもロシア生まれのアプリなんですね。盗聴されないか心配です。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。