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個人の投機熱が加熱する中国金属市場

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鄧小平の慧眼

中国は毛沢東時代の経済低迷時代を経て、1978年に経済体制の改革を決定し、対外開放政策を同時に発表しました。

これがいわゆる鄧小平の「改革開放政策」だった訳ですが、それからわずか43年で、中国は米国に迫る経済大国に成長しました。

その経済成長の理由は、端的に言えば個人の金儲けを許したという事だと思います。

毛沢東時代は公益のために働く事を強制されましたが、ソ連のコルホーズでも中国の人民公社でもその様な環境では誰も働きません。

働く人のモチベーションが上がらず、失敗しました。

鄧小平という人は、人間の本質をつくづく知り尽くした人だったと思います。

個人の欲望を押さえつければうまくいかない事を理解していました。

彼が解放したのは社会というよりも、個人の欲望ではないかと思います。

現代の中国ではアリババの創始者ジャック マーの様に世界の長者番付に名を連ねる人間も増え、既に10億ドル以上の個人資産を持つビリオネアーの数では日本を大きく上回っています。

しかし、金持ちが増えるにつれ、様々な問題も起きている様です。

仏紙Les Echosが「Les boursicoteurs de matières premières dans le viseur de Pékin」(中国政府の監視対象に置かれた一次産品への投機)と題された記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

原材料が歴史的なレベルに急上昇することは、中国にとって問題です。

それは生産コストを増加させ、中国の潜在的な成長を脅かすだけでなく、暴走するインフレを助長することによって中国国民の購買力を低下させます。

したがって、材料、とりわけ金属の価格を管理することは、中国当局にとって最優先事項です。

 

価格の変動が否定されるのは中国ではよくあることですが、政府はまず金融市場、そして今回は原材料市場に目を向けました。

なぜなら、先進国とは異なり、大連と上海の先物市場(金属のベンチマーク)は個人投資家によって支配されているからです。

JP Morgan Center for Commoditiesの記事によると、投資家の85%が個人投資家です。

これは、これらの市場が非常に投機的である事を意味します。

 

今回の中国政府の介入の目的は、まず第一に、投機を静めることにあります。

大連先物市場で週初めに鉄鉱石が急騰した後、当局はすかさず対応しました。

彼らは最初に、鉄鉱石取引規則の違反を「厳しく罰する」ことを表明しました。

その後、取引所は1日当たりの最大価格変動幅を狭めました。

最後に、取引による潜在的な損失を吸収するための資本バッファーに関する資格要件が厳しくされました。

これらの要件の増加は、一部の投資家を市場から排除する傾向があります。

 

中国の金属価格のもう1つのベンチマークである上海先物取引所は、鉄鋼に対しても同様の措置を講じています。

これらの措置は、金融市場では短期的に有効であり、需要が供給よりも構造的に大きい物理的な市場ではあまり役に立ちません。

鉄鉱石の価格高騰からも明らかなように、生産を制限することで需要を削減しようとすれば、逆の効果をもたらします。

中国の最大の鉄鋼メーカーである宝山に生産制限を課すことにより、中国の鉄鋼価格は急騰しました。

これらの制限措置の対象ではない国内の他の製鉄所は、膨らんだマージンを利用しようと、大量の鉱石を購入することで、この機会に飛びつきました。

その後、1トンの鉄が200ドルを超えました。北京は市場の緊張を和らげるために戦略的備蓄を利用することができるでしょうが、どの程度放出するのでしょうか?

中国の銅、アルミニウム、大豆の戦略的備蓄のレベルは公表されていません。

中国人の投機熱が行き着くところは

中国の金属取引市場が個人投資家で占められているとは知りませんでした。

先進国市場では機関投資家が多数を占めているのが普通です。

これは中国人が投機を好む民族である事を示しています。

私も華僑のビジネスマンを何人か知っていますが、例外なく賭け事が好きでした。

麻雀でもゴルフでも何でも賭けの対象にしていました。

彼らが賭け事の中で最も力を入れているのが株式やコモディティへの投機の様です。

共産主義の中国が個人に投機を許しているのは面白いところですが、政治に首を突っ込まない限り、金儲けは許すというのが中国政府の方針の様です。

しかしこの方針は、貧富の差を極端に拡大させ、社会を不安定にする可能性があります。

ライバルとして対立している米中両国でいずれも貧富の差が拡大化しているのは面白い共通点です。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。