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米軍が中国に対峙するために必要な改革

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時代遅れの戦法で敗れた旧日本軍

軍隊の戦法というのは日々進化しています。

その進化についていかなければ、負けは必定です。

第二次世界大戦はその事を教えてくれました。

世界が航空母艦を中心とした機動戦略に移っていたにもかかわらず、大鑑巨砲主義に基づいて戦艦大和や武蔵を相変わらず作っていた日本は、米国の航空艦隊の前に破れ去りました。

日露戦争における日本海海戦の大勝利が忘れられなかったのかも知れませんが、新技術を常に開発し、それを用いた戦術を常に磨いていかなければ、戦いに勝てないことは歴史が教えています。

急速に台頭する中国を前に米国も同じ悩みを抱えている様です。

米誌Foreign Affairsが「America’s Military Risks Losing its Edge - How to transform the Pentagon for a Competitive Era」(アメリカの軍事力がその優位性を失う - 競争の時代に向けて国防総省を変革する方法)と題した論文を掲載しました。

著者はバイデン政権の国防長官最有力候補と目されたミシェル フロノイ氏です。

彼女は男性の職場である国防総省でオバマ政権時代次官にまで上り詰めた人です。

長い論文ですので、かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要約

この10年間、列強間の競争が米国の安全保障にとって再び最重要な課題となってきました。

2012年、オバマ政権は米国の9.11以降の防衛戦略からの逸脱を示しました 。

そして2018年、トランプ政権の国防戦略はこの変化を具体化しました。「テロではなく、国家間の競争が現在、米国の国家安全保障における主要な関心事です」と定義し、中国に特に焦点を当てました。

 

このような超党派の合意にもかかわらず、米軍はあまり変化していません。

国防総省は今までどおりのビジネスを続けており、中国の台頭とロシアの修正主義者によってもたらされる脅威の高まりに対応するには不十分です。

防衛の革新を促進するためにいくつかの重要な措置が講じられましたが、官僚的な惰性により、改革は妨げられています。

国防総省自身の机上演習では、将来、中国の侵略を阻止し、打ち負かすことが不可能になるとの結果が示されたと伝えられています。

したがって、国防総省の指導部は、米国の軍事的および技術的優位性を維持するため、はるかに大胆な措置を講じる必要があります。

そうでなければ、米軍は10年以内にその優位性を失うリスクがあり、米国、その同盟国とパートナー、そして世界に深刻で不安な影響を及ぼします。

そのような結果を回避するには、国防総省の運営方法を根本的に改革する必要があります。しかし、組織文化を変化させる事は、防衛戦略の改訂よりもはるかに困難です。

緊急性は明らかです。

米軍は、その戦い方を再考し、その優位性を確保するために必要な投資を行わなければなりません。

それはより多くのお金を使うことではありません。

より賢く支出し、投資を優先して軍の優位性を高めることです。

今後4年間の国防総省の行動、または不作為は、米国が今後40年間、大国の脅威からその利益と同盟国を守ることができるかどうかを決定します。

 

未来の戦争

9/11以降米国はアフガニスタンとパキスタンに対する対テロ作戦を優先しました。しかしこの10年間、戦われた戦争は、将来の戦争に備える能力をほとんど生み出しませんでした。

湾岸戦争以来、中国軍はアメリカの戦争方法を研究しています。

強力な「接近阻止/領域拒否」(中国が台湾有事の際に米軍を阻止するための戦法)機能など、米国の軍事力を弱体化させ、米国の脆弱性を利用する非対称アプローチの戦略を開発しました。

これらの新機能(サイバーおよび電子兵器、防空、対艦兵器などの精密ミサイル兵器)は、米国の指揮系統を破壊し、インド太平洋への米国の戦力投射を阻止するように設計されています。

その結果、米軍は、空、宇宙、サイバースペース、海事の各領域で早期に優位に立つことができなくなりました。

 

米軍が優位を保つために必要な変更の1つは、米軍が配備される場所を再考することです。

中東は、現在でも、駐留米軍の約3分の1を占めています。ただし、

成功するには、この戦略の変更は、軍隊の再配置だけでは不十分です。

それには、戦法、文化、サービスプログラム、および予算の大規模な再調整が必要になります。

これまでの慣習にならって改革しないコストは容認できないほど高くつくでしょう。



では、なぜ変化への抵抗があるのでしょうか。

大規模な官僚組織の変革を推進することは、極めて困難です。

国防総省では、それはほとんど不可能に思えるほどです。

蔓延している官僚的な文化は依然としてリスク回避的です。

さらに、国防総省の最高幹部は通常2〜3年ごとに交代するため、73万人以上の官僚と130万人の軍人に、結果に責任を持つように強制することは困難です。


最初の改革は、より厳しい環境で大国の侵略を抑止し、打ち負かすための新しい戦い方を開発することでなければなりません。

これは、米軍に新しい兵器を装備することと同じくらい重要な作業です。

歴史は、新しい戦法が新しい兵器をさらに強力にさせる事を示しています。

たとえば、戦車は第一次世界大戦中にイギリス軍によって導入されましたが、ドイツ人がこの新しい能力を電撃戦の概念と合致させ、機械化歩兵と近接航空支援を備えた戦車を使用するまで、大きな効果はありませんでした。

彼らはいとも簡単に連合軍の防衛線を突破しました。

 

米軍の戦い方を根本的に改革するには、考え方を大きく変える必要があります。

米軍は、従来の軍事状況で優位に立つことに慣れています。

しかし、近い将来、米軍は作戦全体を通じて、兵力で下回り、攻撃を受け続けることを想定しなければなりません。

この状況下では、敵に非対称的に対抗する方法を検討する必要があります。

これには、サイバー攻撃や信号妨害などの電子戦、敵の監視および標的システムを混乱させたり盲目にしたりするためのドローンの群れが含まれます。

良いニュースは、統合参謀本部が新しい戦闘方法の開発に取り組んでいることです。

悪いニュースは、これらの概念がまだほとんどパワーポイントの段階にあるということです。

国防総省は新しい戦法の開発にかなり多くのリソースを投入する必要があります。






難しい選択

国防総省の指導部はまた、何を買うべきか、そしてそれをどのように決定するかを再考する必要があります。

パンデミックをきっかけに、国防予算は制約される可能性が高く、それは難しい選択とより賢明な支出を必要とするでしょう。

今日、国防総省は、戦術戦闘機や大型水上艦など、伝統的な兵器システムに多額の投資を行っていますが、そのようなプラットフォームが生き残れば、新しいテクノロジーを犠牲にします。

国防総省は、ポートフォリオ管理戦略を採用して、基本的なアプローチを変更する必要があります。

ミッションごとに、許容可能なコストとリスクで最良の結果を生み出す機能の組み合わせを特定する必要があります。

これにより、意思決定者は、競合する調達の優先順位の間で的確な判断を行うことができます。

これらの優先事項に基づいて、国防総省は、米軍の優位性を獲得するために最も重要な技術への民間部門の投資を刺激するために、より明確な信号を業界に送ることができます。

 

近年、人工知能(AI)、自律無人システム、高性能コンピューターなどの分野での国防総省の支出は予測不可能で不均一になっています

優先分野が不明確で、政府と一緒に投資する民間業界に送信されるシグナルが弱まります。

ベンチャー支援の最先端テクノロジー企業を含む業界により強力なメッセージを送り、公的研究開発投資を増強し、資本を引き付けるために、国防総省は、今後5年間で、新興技術に数十億ドルを投資する分野を「大きな賭け」として発表する必要があります。

 

一方で、国防総省は、有望なプロトタイプがいわゆる「死の谷」を越えて生産に到達するのを支援するより良い方法を必要としています。

テクノロジー企業はプロトタイプの競争に買っても、生産契約を争うには12〜18か月待たなければならないと言われています。

この死の谷が埋められない限り、多くの投資家は彼らの会社に防衛市場から遠ざかるように助言するでしょう。



人々も改革すべき
戦略は比較的簡単に変えることができますが、文化を変えることは人間が実際にどのように振る舞うかを変えることを意味し、それはかなり複雑です。

それには、トップからの明確に伝達されたビジョン、持続的なリーダーシップの関与および結果に対する説明責任を持たせることなどが必要です。

簡単な例を考えてみましょう。私が防衛次官を務めたとき、私はスタッフの士気とパフォーマンスを向上させるために訓練と専門能力開発を優先しようとしました。

手始めに、すべての従業員は1年に2週間のトレーニングを受ける様にしました。

しかし、その後の数週間で、トレーニングはほとんどなされませんでした。

このトレーニングを受けない限り、最高の業績評価評価を受け取ることができないことを明確にしたら、行動が変化しました。

数週間のうちに何百ものトレーニングリクエストを受け取りました。

軍隊では、成功に必要な変化に報い、促進するためのインセンティブが調整され、人々がすべてのレベルで結果を提供する責任を負っている場合にのみ成功します。

 

衰退の危険性

国防総省が継承されてきたやり方を踏襲するならば、攻撃を阻止する米国の能力は、今後10年間で萎縮するでしょう。

これは中国に対峙する場合、特に危険です。米国が衰退していると確信している中国の指導者は、ますます攻撃的になる可能性があります。

相対的な軍事力の低下はまた、インド太平洋全体の同盟国やパートナーとの米国の信頼を損ない、彼らの安全保障へのコミットメントを果たす米国の能力への信頼を失わせるでしょう。

一部の小国は、中国の圧力と影響力に屈する可能性があります。

一部の大国は、中国をなだめるか自国で核兵器を取得する事も含むより独立した安全保障政策を追求するかもしれません。

しかし、いずれも米国の利益にはならないでしょう。

全体として、米国の影響力は、アメリカ人の将来の繁栄と安全が最も依存している地域で減少し、米国の権力とリーダーシップに対する世界的な認識を低下させるでしょう。

 

この劣化を警告することは、安全保障上の利点があるだけではありません。

それはまた、米国の衰退の物語を逆転させ、国内での米国の信頼を高めるのに役立つでしょう。

国防総省の変革は、イノベーションやインフラストラクチャから教育や移民に至るまで、米国の競争力の強化のためのより大きな取り組みの一部にすぎません。

今この瞬間は、軍隊を強化するだけではありません、国を強化するチャンスです。

台湾を守れるか正念場を迎える米軍

軍事力の最も重要な目的は、実際に戦う事ではなく、戦争を未然に防ぐ事です。

そのためには、相手に戦争を起こす事を躊躇させる圧倒的な戦力を持つ国が存在することが必要です。

戦後、長い間、パクス アメリカーナと呼ばれる時代においては、世界の頂点に立つ米軍の脅威が、例外はありますが、多くの戦争を未然に防いできました。

しかし、そのバランスは今崩れかかっています。

台頭する中国軍には明確な目的があります。

それは台湾です。

中国の軍隊は人民解放軍と呼ばれますが、これは中国を日本軍から解放する目的で付けられた名称です。

現在、唯一解放できていない地域が台湾です。

中国の人口は減少を始めました。

彼らの経済成長は長くは続かないと言われています。

この現実と台湾を解放して歴史に名を刻みたいという野心が一緒になった時、中国の指導部が台湾に侵攻するという判断を行う可能性はゼロではありません。

この危険な賭けを未然に防ぐためにも、米軍の近代化は待ったなしだと思われます。

それは日本の将来にも大きな影響があると思われます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。