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最近欧州がイスラエル寄りになった理由は

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欧州の姿勢に変化が

イスラエルとパレスチナの紛争はエジプトの仲介により、漸く停戦が実現しそうです。

既に多くの犠牲者が出た今回の紛争ですが、興味深いのは米国が国連の安全保障理事会の決議に何度か拒否権を行使した点です。

改めて米国におけるイスラエルロビーの強さを感じさせられた一幕でしたが、一方で、欧州は反イスラエルかと言えば、そうではない様です。

欧州大陸の世論も以前と違い、かなりイスラエル寄りに変化してきている様です。

なぜその様な変化が起こっているのか米誌Foreign Policyが「How Europe Became Pro-Israel - The most recent fighting with Palestinians has revealed a radical change in European foreign policy that’s been years in the making.」(ヨーロッパが親イスラエルになった経緯 - パレスチナとの最近の紛争は、ヨーロッパの外交政策の根本的な変化を明らかにした。)と題する論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy論文要約

先週、オーストリアのクルツ首相は、ハマスのロケット攻撃を受けた国と連帯して、政府の建物にイスラエルの旗を掲げるという異例の決定を下しました。

「私は、ガザ地区からのイスラエルに対する攻撃を強く非難します」と保守派の首相は語りました。

水曜日に、欧州理事会は停戦を求める決議に合意しました(ハンガリーを除く)が、イスラエルへの支持を表明する事に関して、オーストリアの首相だけが例外ではありません。

ドイツのメルケル首相はハマスのロケットを「テロ攻撃」と呼びました。

緑の党党首で次期ドイツ首相有力候補であるベアボックは、イスラエルの安全保障を「ドイツの国益」と呼んでいます。

イスラエルのネタニヤフ首相はこれらの支持声明に対して、バイデン大統領だけでなく、ヨーロッパの指導者、特に「フランス大統領、英国首相、オーストリア首相、ドイツ首相など」に感謝しました。

 

過去はこうではありませんでした。

EUとイスラエルとの関係は何十年もの間冷たいものでした。

2003年の世論調査では、ヨーロッパ人の59%がイスラエルを世界平和への最大の脅威と名付けました。

イスラエルへの抗議活動は日常茶飯事でした。

しかし、雰囲気は変わりつつあります。

 

近年、ネタニヤフはヨーロッパの指導者たちと、特に非自由主義的政権を、同盟国と見なして積極的に関係を築いてきました。

ハンガリーのオルバーン首相は2018年にエルサレムで温かく迎えられました。

しかし、イスラエルに対するヨーロッパの友好的なアプローチは、オルバーンのような少数の非自由主義的な指導者だけではありません。

ヨーロッパ全体が変化しています。

 

経済的、地政学的、およびヨーロッパの国内事情などが、この変化を説明することができます。

ヨーロッパ人はパレスチナ紛争に関する公式の立場を変えておらず、和平プロセスの再開、占領の終焉、そして1967年の国境下での二国家解決を今後の道として支持しています。

EUは、国連パレスチナ難民救済事業庁とパレスチナ自治政府への最も重要な支援提供者です。

チェコとハンガリーだけが、エルサレムをイスラエルの首都として認めるトランプ政権の動きに追随しましたが、ヨーロッパの9か国はパレスチナを国家として認めています。

しかし、パレスチナの問題は、最近優先順位が下げられています。

 

これは、中東の変化によるものです。

イスラエルとパレスチナの問題がこの地域のすべての緊張と紛争を解き放つ鍵であると主張するヨーロッパの外交官を見つけることは今日では困難です。

この見解は、2000年代にヨーロッパでは当たり前でした。

しかし、 2010年のアラブの春、ヨーロッパへの影響(テロ攻撃や移民の増加を含む)を伴うシリア内戦、およびイランの核兵器開発は中東における優先順位を変えました。

 

多くのヨーロッパの外交官は、アブラハム協定(UAE、バーレーンがイスラエルと果たした国交回復)がイスラエル-パレスチナへのヨーロッパの見方を大きく変化させた事を認めています。

昨年の合意後、イスラエルのアシュケナージ外相はベルリンの欧州理事会に招待されました。

地中海東岸でのエネルギー資源採掘に関しては、隣接するトルコの主張に反して、ギリシャ、キプロス、イスラエル、エジプトへの協力をEUは選択しました。

4月、ギリシャとイスラエルは、記録的な16億5000万ドルの防衛契約を発表しました。

 

イスラエルの経済と技術はヨーロッパの関心を引き付け始めました。

イスラエルは、研究技術開発のためのフレームワークプログラムやCERNとして知られる欧州原子核研究機構などの一連のEU科学機関に関連する最初の非ヨーロッパの国でした。

また、EUのナビゲーションシステムであるガリレオにも参加しています。

2011年、フランスは5億ドル相当のイスラエル製ドローンの購入を発表し、1967年の第三次中東戦争後に当時のフランス大統領シャルルドゴールが開始した44年間の武器禁輸を破りました。

2018年、ドイツ政府は、イスラエル製ドローンに関する12億ドルの契約をおこないました。

 

しかし、主な変化はヨーロッパ社会自体から来ており、より深い何かを象徴しています。

過去数年間テロ攻撃を経験して、ヨーロッパ人はますます同様の問題に直面している国イスラエルに同情する様になりました。

フランス議会スポークスマンはイスラエルとEUはイスラムのテロリズムに直面しており、それが両者をより近づけていると語っています。

 

アトランティック カウンシルのシニアフェローであるダミール マルシックが素晴らしいエッセイ「ブリュッセルとエルサレムの間」で述べたように、欧州とイスラエルは、第二次世界大戦とホロコーストの歴史と意味について相反する理解をそれぞれ具体化しています。

欧州は、第二次世界大戦の悲劇から、国家を超越した協力、テクノクラート統治が必要だと結論づけました。

一方、イスラエルは、ユダヤ人の悲劇的な運命が、彼らの無力さを痛感させ、国境と強力な軍隊に支えられた強力な国を築く様に彼らに促しました。

超国家組織であるEUを構築した欧州人は彼らの成功モデルを世界の他の地域に適用しようと考えました。

その際に、イスラエル-パレスチナよりもふさわしい場所が他にあったでしょうか?

 

しかし、物事はそのようにはなりませんでした。

15年前、パレスチナ問題の持続可能で平和的な解決策を見つからなかった場合、オブザーバーがイスラエルの外交的孤立の拡大を予告することは一般的でした。

しかしそれは実現しませんでした。

ヨーロッパと米国だけでなく、インド、ロシア、アフリカ等の新しいパートナーシップが、イスラエルには存在します。

最近、テロ攻撃や移民流入の懸念から緩い国境管理をEUの主流政治家は嘆く様になりました。

一方、フランス社会党やドイツ社会民主党などの中道左派政党は凋落の一途です。

ヨーロッパ人は彼らのモデル実現に疑問を持つ様になりました。

結局のところ、歴史はイスラエルに傾いているのでしょうか?

イスラエルへの傾斜は非可逆的か

ユダヤ人は欧州、中東を中心に世界中に散らばっていますが、その数以上の存在感を各国で発揮しています。

その力の根源は彼らが支配する金融界、マスコミにあるとされていましたが、最近はそれにテクノロジーが加わった様です。

彼らが作るドローンは最近のナゴルノ カラバフ(アゼルバイジャンとアルメニア)紛争においても使用され、アゼルバイジャンの勝利に大きく貢献しました。

金、情報に加えて軍事技術に関しても世界をリードする存在になったユダヤ人に、一見死角は見当たらない様に見えます。

 

昔、高校の世界史の授業で「ドレフュス事件」という事件を習いましたが、いくら説明を聞いてもこの事件の本質が理解できませんでした。

この事件は簡単に言えばフランス陸軍のユダヤ系ドレフュス少尉が敵に情報を漏洩した罪で有罪となりましたが、それは濡れ衣であり、再審の結果、無罪となったというものです。

その後フランスに留学した時、フランス人(大半がカトリック教徒)が持つユダヤ教徒に対する嫌悪に接して初めて、ドレフュス事件の本質が理解できる様になりました。

現在、イスラエルに対する追い風が吹いていますが、これは非可逆的ではないと思います。

ランスやドイツにはユダヤ系を遥かに上回るイスラム系の市民が存在します。

ょっとしたきっかけで振り子は逆に触れる可能性があると思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。