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ピケティ教授が分析するポピュリスト政党の台頭

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ピケティ教授の新しい論文

フランスの経済学者のトマ ピケティは様々な国の過去の膨大なデータを分析する事によって、貧富の差は放っておけば拡大する傾向にある事を突き止めました。

この著作でノーベル経済学賞を受賞したピケティが、最近政治に関する論文を発表した様です。

この論文について英誌Economistが「Educated voters’ leftward shift is surprisingly old and international - A new paper by Thomas Piketty makes the rise of right-wing populism look like a historical inevitability」(教育を受けた有権者の左傾化は驚くほど古く、国際的な傾向です - トマ・ピケティによる新しい論文は、右翼ポピュリズムの台頭を歴史的必然のように見せています)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

最近、右翼ポピュリズムは人気です。

これらの動きは、2007 年から 2009 年の金融危機やソーシャル メディアの出現などが理由だと主張する人もいます。

 

経済学者のトマ・ピケティは、さまざまな国の富の不平等に関する200年分のデータを分析した本として有名になりました。

今月、彼は新たな論文を発表しました。

この論文は、人口統計学とイデオロギーの関係に同様のアプローチを適用しています。

その調査結果は、2016年のトランプ氏の選挙勝利や英国のEUからの離脱が突然の出来事ではなく、60年にわたる国際的な傾向の結果であることを示唆しています。

 

ピケティ氏は2018年の論文で、英国、フランス、アメリカのエリートは、中道左派政党を支持する知識人と右翼政党を好む実業家の二つに分かれるとしています。

彼の新しい研究では、この調査を上記の 3 つの国から 21 の国に拡大しています。

政党の政策ポジションに関するデータと、人口統計によって区別されるグループ間で投票の選択がどのように異なるかを示す調査を行っています。

 

論文は、収入と教育が政治の決定因子としてずっと前から機能している事を発見しました。

1955 年には、最も裕福な有権者と最も教育を受けた有権者の両方が保守政党を支持する傾向にありました。

逆に、貧しい人々や教育水準の低い人々は、ほとんどが労働党か社会民主主義政党を選びました。

今日、裕福な人々は依然として右に傾いています。

対照的に、教育とイデオロギーの関係は、1960 年代に変化し始めました。

毎年、高等教育を受けた有権者の 10% が左翼政党に転向し、 2000年までこの傾向は長い間続いたため、最も教育を受けた有権者は、教育を受けていない他の有権者よりも左翼になり、ギャップはそれ以来拡大の一途をたどっています。

この傾向は驚くほど一貫しています。

それは 20世紀と同じように 21 世紀にも急速に発展し、研究されたほとんどすべての民主主義国に見られます。

緑の党は教育を受けた有権者を惹きつけ、移民排斥政党は教育を受けていない有権者を惹きつけます。

トランプ氏のような右翼ポピュリストの台頭や、エマニュエル・マクロンやジャスティン・トルドーのような中道左派のテクノクラートの台頭は、歴史的必然のように見えます。

 

著者はこの傾向の原因を特定していませんが、最も単純な説明は、それが教育レベルの向上に起因するというものです。

1950 年には、アメリカとヨーロッパの有権者の 10% 未満しか大学を卒業していませんでした。

このグループにのみ支援を頼っている政党は、選挙に勝つ見込みがほとんどなかったでしょう。

対照的に、今日、西欧の成人の 3 分の 1 以上が学位を取得しており、これは選挙で政党を支えるのに十分です。

そして、候補者と政党が教育を受けた有権者に対応するようになると、リベラルな社会での生活を税金の引き下げよりも優先する事が散見されますが、ライバルの政党は反対の立場をとることで選挙に勝つ事ができます。

米国共和党の悩み

これは面白い分析ですね。

さすが統計学がお得意なピケティ教授です。

これだけ大きな支持層の変化が過去60年間の間に生じていたとは知りませんでした。

ピケティ教授の分析は、トランプ大統領がリベラル派の代表格であるヒラリー クリントン候補を破った理由は、共和党の支持基盤には含まれていなかった低学歴の白人労働者の票を掘り起こした事である事を裏付けています。

もともと彼らは労働者ですから、労働組合に近い民主党を支持していたと思われますが、トランプ陣営はAmerica First」といった大衆に受ける分かり易いスローガンを使って民主党支持層を切り崩したものと思われます。

現在共和党は悩んでいる様です。

共和党の中にはグローバリズムや基本的人権を重要視する人もいますが、トランプ氏が掘り起こした新しい支持層には受けません。

トランプ路線で行くか、元の共和党路線に戻るか今後の共和党の行く末が注目されます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。