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G7に関する各国報道の違い

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各国メディアの相違点が浮き彫りに

開催中のG7に関する各国の報道を見ていると、同じ題材を扱ってもかなり論調が異なる事がわかります。

昨日、G7では中国の「一帯一路」(新しいシルクロード)政策に対抗して、発展途上国向けの支援策が協議されましたが、各国の報道をお伝えします。

先ずは日本の日経新聞からです。

日経新聞抜粋

インフラ構築を支援する枠組みは具体的な対中戦略の一つだ。

英政府関係者は「中国と摩擦を生むためではない」と断った上で「民主主義諸国で代替の選択肢を示す」と説明した。

今後数年間で数千億ドル(数十兆円規模)のインフラ投資を促進する。G7の理念に沿って、透明性や人権、環境への対応などを考慮して資金を拠出するという。

一帯一路は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が2013年に提唱した中国と欧州を結ぶ広域経済圏構想だ。

巨大な資金をアジアやアフリカなどに投資し、中国の影響圏が広がっている。

中国政府の統計では20年の一帯一路の関係国への投資額は前年比18%増の177億㌦に増えた。

中国が主導して各国にインフラ整備の資金を供給するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の加盟国・地域は100を超える。

一帯一路では「債務のわな」が指摘されている。

天然資源や港湾などのインフラ権益を担保に融資を受け、返済ができずに中国側に権益の譲渡や軍事的な協力をする例がある。

アジアの要衝のインフラを中国が押さえればG7にとって安全保障上のリスクになる。

日本もかねて透明性や債務の持続可能性を重視する「質の高いインフラ」投資を唱えてきた。

日本は政府開発援助(ODA)や人的支援で途上国や新興国から一定の信頼がある。

新たな枠組みができれば日本の国際社会への貢献が増える可能性がある。

英BBC抜粋

中国に匹敵することを目指しているG7首脳は、より良いインフラを構築する上で発展途上国を支援する計画を採用した。

バイデン大統領は、米国が支援する「Build Back Better World(B3W)」計画を、同様の中国のプログラムに代わるより高品質なものにしたいと述べた。

中国の一帯一路イニシアチブ(BRI)は、多くの国で列車、道路、港の資金調達を支援してきた。

しかし、一部の国を借金漬けにしたとして批判されてきた。

G7首脳は、「価値主導型、高水準、透明性のある」パートナーシップを提供すると述べた。

ただし、G7計画の資金調達方法の詳細は不明なままだ。

ドイツのメルケル首相は、グループはまだそのイニシアチブのための資金調達をリリースする段階にないと述べた。

仏Echos記事抜粋

バイデン大統領とG7パートナーは、新しい発展途上国インフラ支援プログラムである「Build Back Better World」プロジェクトを開始することに合意した。

「これは、主要な民主主義国が主導するインフラパートナーシップであり、パンデミックによって悪化した発展途上の世界を支援するものである。」と米国政府は発表した。

このプロジェクトの背後には、中国の「一帯一路」政策に対抗するという野心が隠されている。

このサミットで、バイデン大統領は中国に対抗する米国の陣営に加わるようにG7パートナーを説得​​するはずだった。

しかしその望みは叶えられたとは言えない

サミットの開会直前に、ヨーロッパの指導者たちは、中国に関して明確な線で合意した。

中国は「政治システムにおいてはライバルであり、地球規模の問題についてはパートナーであり、一方競争相手でもある」とフランス大統領は語った。

マクロン大統領は、インド太平洋関係における中国に対する彼の立場について尋ねられたところ、「フランス、ヨーロッパ、そしてすべての同盟国のために私が望む方針は、中国によって侵略されるべきではないが、一方で米国と完全に足並みを揃えるべきでもない。」明らかに、ヨーロッパ人は米国からの完全な独立を維持したいと考えている。

この分野では、ヨーロッパの中でもドイツが先頭に立って、中国に対して微妙な舵取りをしようとしている。

「ドイツは、中国の一帯一路に代わる代替案に躊躇している。彼女は、中国の進歩を制限するために、既に西洋は行動を起こしていると感じている。ドイツはまた、新しいインフラ支援プロジェクトの具体的な金額を定義することに消極的だ。」とドイツ政府関係者は述べた。

EUの商工会議所が明らかにしたところによると、中国の欧州企業は、外国制裁に対する中国の法律が採択された翌日に深い憂慮を表明した。

西側の圧力に直面して、中国は外国の制裁に対する報復を合法化する法的武器を用意した。

この法案は、中国に対して制裁を適用する人々または企業の「財産の押収、凍結」を合法化する。

新聞は各国政府の見方を写す鏡

こうやってみると、単一の新聞から客観的な情報を得る事が非常に難しい事がわかります。

日本の新聞には対中政策に関する欧州と米国の深い溝への突っ込んだ論評が欠けていますし、新しいインフラ支援プロジェクトに関するドイツの躊躇なども書かれていません。

これはおそらく日本政府の公式声明に影響されているところが大きいのではないかと推測します。

英仏両紙の報道もそれぞれの国の思惑が反映されているので、これが全て正しいわけではありません。

改めて複数の情報ソースから物事を見る必要を感じました。

最後まで読んで頂き、有り難うございました。