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中国が直面する西側の巧妙な戦略

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中国の地球温暖化対策は本物か

中国は先日習近平主席が2060年までにCO2の排出を実質ゼロにすると宣言しましたが、実際のところ、彼らの地球温暖化対策はどの程度進んでいるのでしょうか。

経済成長と温暖化対策は対立する概念で、高度成長を継続させたい中国としては、厳しい温暖化対策は避けたいところです。

しかし、最近の中国と西側の関係悪化は中国に成長のための猶予を与えてくれそうにありません。

英誌EconomistがChina’s climate sincerity is being put to the test - Until it stops burning coal for power, foreign firms will be reluctant to invest more there(中国の気候変動への誠実さが試されている - 電力のために石炭を燃やすのをやめるまで、外国企業は投資することを躊躇するでしょう)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

中国共産党の話を聞くと、独裁政治の良い点は、支配者が長期的な計画を立てることができるということです。

一党支配の擁護者は、中国の指導者を何世紀も先を考える啓蒙主義のテクノクラートとして礼讃し、退廃的な西側の民主主義は次の選挙しか見ていないと批判します。

この独裁者の論理によれば、中国は気候変動への取り組みに優れている筈です。

何故なら厳しい長期的リスクに直面しているからです。

きれいな水と生産性の高い農地がなく、最も豊かな地域が海岸にある乾燥国として、中国は地球温暖化と海面上昇に対して非常に脆弱です。

どうやら習近平大統領自身が陣頭指揮をとっている様です。

彼は昨年9月、中国のCO2排出量は2030年までにピークに達し、2060年までにカーボンニュートラルになると宣言しました。

中国全体の排出権取引システムが今年の夏に稼働します。 広大な風力発電所とソーラーパネルが建設されています。

 

しかし実際は、中国の気候政策は矛盾の塊です。

おそらく時が経てば、習近平主席は、国のエネルギーの60%近くを供給する石炭などの化石燃料を廃止するために必要な不人気で費用のかかる変更を行おうとしている事がわかる筈です。

しかし、彼らが本気かどうかは疑問です。

中国の石炭消費量は、2015年にパリ協定に加盟して以来、大幅に増加しています。

国内では、2018年に新しい石炭火力発電所の禁止が解除されました

建設中あるいはは建設が承認された石炭火力発電所の総容量は、アメリカ全体の発電容量よりも大きいです。

海外では、アメリカやEUなどからの要請にもかかわらず、国営の巨人である中国工商銀行が段階的に廃止するものの、海外で石炭火力発電所を建設するために毎年数十億ドルも貸し出しています。

 

特に石炭に依存する北東部の州や都市は、炭素の「ピーク計画」の公表に躊躇しています。

彼らは温室効果ガスを抑制する前に成長を追求するため、より多くの時間を望んでいます。

排出権取引スキームを管理する規則が緩和されたため、最初は、ほんの一握りの工場だけが実際の制約に直面することになります。

これは、気候変動にどのように、そしてどれだけ迅速に取り組むかを決定する責任に関して、環境省をさしおいて、経済計画機関に与えられた主導的な役割を反映しています。

一部の大手鉄鋼メーカーは、環境規則に違反していることが判明しましたが、排出量の削減を命じられてから数か月後に、再び生産を拡大することが許可されました。

 

外国企業の中国事業を取り上げてみましょう。

母国の消費者や政治家に対応して、外国企業の多くは、グローバルビジネスをカーボンニュートラルにし、サプライチェーンからの排出量を大幅に削減することを約束しています。

その結果、いくつかの有名な欧州企業の中国代表は、天津と瀋陽の北東部の都市を含む当局者に、電気や暖房が石炭由来で提供され続ける場合、新しい生産拠点を拡張したり開いたりするのは難しいだろうと伝えています。 

瀋陽で最大の納税者はBMWの合弁会社で、2つの工場で年間60万台の自動車を製造しています。

2016年、市には販売できるグリーン電力がありませんでしたが、現在、遼寧省の新しい風力発電所は、グリーンエネルギーの大きな可能性を秘めた沿岸地域であり、BMWの電力の約3分の2を供給しています。

多くのエネルギーは、車両が配達を待つ駐車場の上に構築されたソーラーパネルから得られます。

悲しいかな、中国の何百ものBMW下請け業者は、再生可能エネルギーを入手するのに「大きな問題」を抱えていると同社のエンジニアは言い、外国企業が提供されるほとんどのグリーンエネルギーを利用していることを示唆しています。

鉄鋼メーカーやアルミニウム鋳造所などのエネルギー集約型の中国のサプライヤーは、効率的な技術の導入と低炭素エネルギーの使用を開始する必要があります。

BMWは、「再生可能エネルギーを使用する仕事は持続可能な仕事である」と政府に主張しています。

 

多国籍企業は聖人ではありません。

多くの人は、遠く離れた場所で有益であるが汚れた工場を運営することに満足していました。

あまりにも多くの人が、サプライヤーに透明性を要求することに依然として消極的です。

しかし、欧米の有権者は、気候について、そして政府や企業に説明を求めることについて真剣になっています。

その圧力は中国で役立つかもしれません。

中国に対する西側の武器 - 人権と地球温暖化

今回のG7の共同声明で注目すべき点が二つあります。

それは人権と地球温暖化です。

この二つには、一見共通項がない様に見えますが、実はこの二つは中国の競争力を削ぐために西側が仕掛けた巧妙な罠だと思います。

もちろん二つとも大変重要な世界的問題で、誰もその重要性に異議を唱える事はできません。

一方、これらが中国を標的にしている事は明らかです。

人権問題に関しては、新疆ウイグル族の人たちを強制労働させていると中国は批判されています。

ユニクロが米国向けに輸出したTシャツがウイグル産の綿花を使用している疑いがあるとして、米国税関で差し押さえにあいました。

中国はウイグルだけではなく、チベットなど様々な少数民族を抱えており、今後この問題は中国製品の広範なボイコットに発展する可能性があります。

グローバル企業のイメージダウンにもつながるので、今後中国の安い労働力に着目して中国進出を狙う企業は少なくなるでしょう。

地球温暖化問題は中国にとって更に深刻です。

石炭由来の安い電力を使って作られた製品を西側はボイコットするかもしれません。

ボイコットしなくてもグローバル企業は石炭火力由来の電力を嫌って、中国への投資をためらうでしょう。

西側は地球温暖化というキャンペーンの下、中国への投資を制限し、中国製品の流入もEUが検討中の国境炭素税などを利用して制限しようとしています。

ここ数年、世界でSDG(持続可能な成長目標)だとかESG(環境、社会、企業統治)などというスローガンが頻繁に唱えられる様になりましたが、これらも西側が巧妙に世界ルールを設定し、中国に主導権を渡さない様にしているものと思われます。

例えばESG投資においては、石炭火力に依存している会社は投資対象から外れてしまいます。

そういう西側の戦略構築において重要な役割を果たしているのは英国だと思います。

くしくも今年のG7と地球温暖化に関する世界会議COPの主催国は英国です。

グラスゴーでのCOP会議では、中国と西側の丁々発止の厳しい交渉が予想されます。

京都議定書では、中国は受益者でしたが、今度は同じ立場に留まる事は許されないと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。