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米中新冷戦を煽る声に冷ややかなサンダース議員

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サンダース議員の根強い人気

バーニー サンダース上院議員は、過去二回大統領予備選に参加しました。

2016年の予備選では、絶対の本命とみなされたヒラリー クリントン候補に対して善戦し、あと一歩で民主党大統領候補になるところでした。

トランプ氏が「彼は社会主義者だ」と非難するサンダース氏は、米国で特に若い層に人気があり、今でも強い影響力を持っている様です。

そんなサンダース氏が米誌Foreign Affairsに米中の対立に関して論文を寄稿しました。

「Washington’s Dangerous New Consensus on China - Don’t Start Another Cold Wae」(中国に関するワシントンの危険な新しいコンセンサス- 新冷戦を始めるべきでない)と題した彼の論文をご紹介したいと思います。

サンダース氏論文要約

気候変動、パンデミック、核拡散、大規模な経済的不平等、テロ、汚職、権威主義など、米国が今日直面している前例のない課題は、世界に共通の課題です。

それらは、1つの国が単独で行動することによって解決することはできません。

地球上で最も人口の多い国である中国を含め、国際協力を強化する必要があります。

したがって、米中関係をゼロサムの経済的および軍事的闘争と見なすコンセンサスがワシントンで急速に広がりつつある事は、危険です。

この見方が広まると、世界が切実に必要としている協力を実現することがますます困難になります。

 

中国に対する見方がどれほど急速に変化したかは注目に値します。

20年以上前の2000年9月、アメリカの企業と両政党の指導部は、中国に「恒久的な通常の貿易関係」の地位、つまりPNTRを与えることを強く支持しました。

当時、全米商工会議所、全米製造業者協会、企業メディア、そしてほぼすべての外交政策専門家は、中国市場へのアクセスを米国企業に与えることで競争力を維持するためにPNTRが必要であり。中国経済の自由化は、民主主義と人権に関する中国政府の自由化を伴うだろうと主張しました。

 

当時、この見方は間違いなく正しいと見なされていました。

しかし、それは私には明白ではなく、それが私がその貿易協定に反対した理由でした。

その時私が危惧していたことは、アメリカの企業が中国に移り、そこで労働者をただ同然で雇うことを許すことは底辺への競争に拍車をかけ、アメリカでの組合員は仕事を失い、アメリカ人労働者の賃金を下げる事でした。

そしてそれはまさに起こりました。

その後の約20年間で、約200万人のアメリカ人の雇用が失われ、40,000以上の工場が閉鎖され、アメリカ人労働者は賃金の停滞を経験しました。

2016年、トランプ氏は、米国の貿易政策に反対するキャンペーンを行い、偽りと分裂的なポピュリズムで多くの有権者の経済的闘争を利用することで、大統領選挙に勝利しました。

 

一方、中国の自由、民主主義、人権が拡大していないことは言うまでもありません。

中国がより権威主義的な方向に進んだため、中国は世界的な舞台でますます攻撃的になっています。

ワシントンの常識の振り子は、中国との自由貿易によってもたらされる機会について楽観的すぎる立場から、より豊かで、より強く、より権威主義的になった中国の脅威に対してタカ派への対応へと全く逆に振れています。

数ヶ月前、共和党のコットン上院議員は、冷戦中、ソ連との戦いに備えるために米国の国家安全保障アーキテクチャを再編成したように「米国は経済、技術面での長期的戦略を練り直す。」と主張しました。

そして先月、アジア最高政策責任者であるカート・キャンベルは、「(中国との)関与政策の期間は終わった」と述べ、今後は「競争になる。」と述べました。

 

20年前、アメリカの中国についての見方は間違っていました。

今日、この見方は変わりましたが、それはまたもや間違っています

現在、米国は新しい冷戦の太鼓を打ちたたき、中国を米国の存在への脅威として強調しています。

これを肥大する国防予算の口実として使用すべく軍産複合体の政治家や代表者が動き始めています。

 

以前、中国に対する見方に反対することが重要だったのと同じように、この新しい見方に反対することが重要だと私は信じています。

中国政府は確かにすべてのアメリカ人が反対すべき多くの政策を行っています。

技術盗用、労働者の権利と報道の抑圧、チベットと香港で起こっている抑圧、台湾に対する北京の脅迫的な行動、そして中国政府のウイグル人に対する残虐な政策などです。

米国はまた、中国の積極的な世界的野心についても懸念すべきです。

米国は、国連人権理事会などで、これらの問題を引き続き取り扱うべきです。

米国が同盟国の人権についても一貫した立場を維持すれば、そのアプローチはより効果的です。


しかし、中国とのゼロサムの世界的対立を中心に外交政策を立案することは、より良い中国の行動を生み出すことに失敗し、戦略的に逆効果になります。

中国と対峙するシナリオには、ごく最近の前例があります。

それは、世界的な「対テロ戦争」です。

9/11の攻撃を受けて、アメリカの政治団体は、テロ対策が米国の外交政策の最優先事項とすべきと直ぐに結論付けました。

ほぼ20年と6兆ドルが費やされた後、一連の「果てしない戦争」を開始するため国家の団結が利用されたことが明らかになりました。

これは、米国の政治に外国人排斥とアメリカのイスラム教徒に対する偏見を引き起こしました。

今日、中国に対する執拗な恐怖の風潮の中で、反アジアのヘイトクライムが増加しているのは当然のことです。

現在、米国は以前よりも分裂しています。

しかし、過去20年間の経験は、敵意と恐れを通して国民の団結を築こうとする誘惑に抵抗しなければならないことを私たちに示したはずです。

 

バイデン米大統領の政権は、権威主義の台頭を民主主義への主要な脅威として正しく認識しています。

しかし、民主主義と権威主義の間の主な対立は、国の間ではなく、米国を含む国の中で起こっています。

そして、民主主義が勝つとすれば、それは戦場ではなく、民主主義が権威主義よりも実際に人々により良い生活の質をもたらすことができることを実証することによって勝つのです。

だからこそ、私たちはアメリカの民主主義を活性化し、勤労者家族のニーズに対処することによって、政府に対する人々の信頼を回復しなければなりません。

崩壊しつつあるインフラを再構築し、気候変動と戦うために、何百万もの雇用を創出しなければなりません。

 

米国政府の最大の関心事はアメリカ国民の安全と繁栄ですが、私たちの安全と繁栄は世界中の人々とつながっていることも認識しておく必要があります。

そのために、他の裕福な国々と協力して、世界中の生活水準を高め、権威主義勢力が自らの政治力を高め、民主主義を弱体化させるために悪用する米国の「グロテスクな」経済的不平等を縮小することは重要です。

バイデン政権は、世界的な最低法人税を要求しました。

これは底辺への競争を終わらせるための良い一歩です。

しかし、私たちはさらに大きく考える必要があります。

世界の最低賃金は、世界中の労働者の権利を強化し、何百万人もの人々にまともで威厳のある生活の機会を提供し、多国籍企業が世界の最も貧しい人々を搾取する能力を低下させるでしょう。

 

アメリカ人は、中国の弾圧、人権の無視、そして世界的な野心について鈍感であってはなりません。

私は、アメリカ人は、米国、中国、そして世界中のすべての人々の権利と尊厳を尊重する世界的な規範を強化することに関心を持っていると強く信じています。

しかし、中国との対立を求める超党派の動きが強まると、これらの目標が後退し、両国の権威主義的で超国家主義的な勢力に力を与えるリスクが生じるのではないかと心配しています。

それはまた、気候変動、パンデミック、核戦争がもたらす破壊などの真に存在する脅威と戦うことにおいて両国が持つ共通の利益から注意をそらすでしょう。

 

中国と相互に有益な関係を築くことは容易ではありません。

しかし、私たちには新しい冷戦よりもましな方法があります。

反対に触れる振り子

サンダース議員は中国と気候変動など国際問題において協力しないといけないと主張しています。

中国がこの様な国際問題において米国や西側民主主義国と本当に協力するつもりがあるか疑問があるところですが、サンダース議員の主張には耳を傾けるべき部分もあると思います。

特に次のフレーズは頷けます。

「民主主義が勝つとすれば、それは戦場ではなく、民主主義が権威主義よりも国民により良い生活の質をもたらすことができることを実証することによって勝つのです。」

最近の米国政界は民主党も共和党も中国にかなり強硬な立場をとっています。

ユダヤ人の格言に「全員が賛成するアイデアは採用すべきでない」というものがあったと記憶しますが、対中政策については、保守もリベラルもなく全員一致している点は少し危険だと思います。

米国の場合、軍産複合体という存在が強力で、彼らのロビー能力は侮れません。

軍事産業自体が巨大ですので、この軍産複合体は常に世界に紛争の種を求めています。

冷戦時代はソ連を筆頭とする社会主義国が敵だったのですが、ここ20年は9.11をきっかけとする中東のテロリストが敵になりました。

中東からの「果てしない戦い」を漸く終える決断をした米国は今新しい敵を必要としているのではないかと思います。

サンダース氏は、中国という敵を等身大の大きさで冷静に評価すべきと警告してくれている様な気がします。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。