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匿名性の高さが仇に - 犯罪者に好まれる暗号通貨に厳しい視線

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犯罪者に愛されるビットコイン

先日の米国パイプラインに対するサイバー攻撃は、二つの観点から私を驚かせました。

一つは犯罪集団が身代金をビットコインで要求した点です。

以前は身代金と言えば通し番号ではない古い百ドル紙幣というのが通り相場でしたが、今や暗号通貨が身代金の主流となっている様です。

二つ目は実際に支払われたビットコインを米国当局が追跡し、その大部分を差し押さえたと発表した事です。

暗号通貨は足がつきにくい事で有名ですが、米国当局がこれを追跡するノウハウを既に習得していることに驚きました。(しかし全額は回収できていない模様)

暗号通貨の将来についてウォールストリートジャーナル(WSJ)が「Why Crime Could Kill Crypto」(犯罪が暗号通貨を葬り去るかも知れない理由)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

以前、暗号通貨に対する最も厳しい反論は、何の役に立つのかまだ証明されていないというものでした。

今、彼らに対する最も厳しい議論は、それが一つのことであまりにも秀でているという事かもしれません。

それは犯罪を可能にすることです。

 

2009年に最初のデジタル通貨であるビットコインが発売されてから間もなく、犯罪者たちはその魅力を直ぐに認識しました。

当局はビットコイン取引の追跡や、時には不正なお金の差し押さえにますます熟練していることを証明していますが、金融仲介業者なしでデジタル支払いを行う機能により、違法な商品やサービスのオンライン販売やマネーロンダリングなどの活動が促進されています。

2019年、研究者のSean Foleyらは、2009年1月から2017年4月の間に行われたビットコイン取引の46%が違法行為であると推定しました。

 

最近のランサムウェア攻撃はほどんどの場合ビットコインで身代金が払われています。

これはサイバー犯罪者が被害者のネット上のファイルをロックし、ロック解除の対価として支払いを要求するものです。

先月のコロニアルパイプライン社への攻撃により、重要な東海岸のガソリンパイプラインが閉鎖されました。

今月初めにはブラジルの食肉大手JBS社が狙われ、米国最大の食肉工場のいくつかで操業停止に追い込まれました。

 

お金以上のものが危機に瀕しています。

病院などの組織が攻撃された場合、命が失われる可能性があります。

ウォールストリートジャーナルとの最近のインタビューで、FBI長官のレイ氏は、最近頻発しているランサムウェアを、2001年9月11日の同時多発テロと比較しました。

 

法執行機関にとっての問題の1つは、背後にいるサイバー犯罪者を特定できたとしても、かつては金の袋やスーツケースの交換が必要だった身代金の引き渡しが、米国と犯罪人引渡し条約がない国で発生する可能性があることです。

FBIは、コロニアルパイプライン社がランサムウェアギャングの「ダークサイド」に支払った暗号通貨の一部を押収することができましたが、ギャングはロシアで活動していると考えられているため、そのメンバーには手が出せないかもしれません。

 

もう1つは、デジタルセキュリティを強化して、ハッカーをデータ保管庫に入れないようにする簡単な方法がないことです。

そのために、私たちが依存している情報保護システムは複雑すぎて、脆弱性に満ちています。

 

問題を食い止めるための手っ取り早い方法は、中国の当局がやろうとしているように、暗号通貨での支払いや取引を広く禁止することです。

しかし、暗号通貨の合計価値が1.6兆ドル(約176兆円)であることを考えると、少なくとも最初のステップとして同じ様な措置を米国がとるとは想像しがたいです。

しかし、米国当局がとることができる他の措置もあり、これらはまた、商取引における暗号通貨の使用可能性を低下させるか、少なくともそれを使用するコストを上げる可能性があります。

 

一つのアプローチは、盗まれた暗号通貨の使用や転送を困難にすることです。

これは、100万ドルの現金で満たされたスーツケースを、気付かれずに実際に使うのが難しいのと同じです。

米国では、現金で10,000ドル以上支払われた場合に当局に通報することを義務付けていますが、バイデン政権は同様の義務を暗号通貨に採用することを検討しています。

 

政府は監視責任も強化する可能性があります。

すでにいくつかの対策が検討されています。

米国財務省は昨年、「国家安全保障上の義務」の一部を引用し、銀行やその他の規制された金融仲介機関に関連付けられていない、いわゆる「ホストされていないウォレット」への暗号通貨の転送について追加の審査を提案しました。

マネーロンダリングと戦うための世界的な標準設定者である金融活動タスクフォースは、最近、セキュリティ要件をはるかに広い範囲の暗号通貨に拡張するための新しいガイドラインを提案しました。

このような措置により、暗号資産取引の匿名性が低下する可能性があります。

規制の強化はまた、合法的な取引をより複雑にし、暗号通貨の魅力を低下させる可能性があります。

 

しかし、暗号通貨にとっての最大のリスクは、そのような規制の取り組みが、暗号通貨に関する危険な行為を削減するのに効果的ではないということかもしれません。

 

その場合、犯罪は暗号通貨の使用に対するより厳しい制限が政治的に受け入れられる原因になるかもしれません。

法定通貨として認められたビットコイン

先日、南米のエルサルバドルで、世界で初めてビットコインが法定通貨として認められました。

同国の様に自国の通貨安に悩む国は多く、私に取って馴染みの深いトルコでも、多くの国民がビットコイン購入に関心を持っています。

問題は、多くの善良な市民が暗号通貨に関心を持つ一方で、犯罪者集団がマネーロンダリング等に暗号通貨を悪用している点です

今後規制当局そして犯罪者集団の間で、厳しい駆け引きがが行われる事が予想されます。

暗号通貨の市場は既に200兆円の規模に拡大していると言われています。

日本の国家予算が100兆円程度ですから、その市場の大きさが窺い知れます。

もし暗号通貨が当局の厳しい規制をきっかけに暴落したら、これは株式市場等にも甚大な影響を及ぼす可能性があるので、当局は慎重にならざるを得ません。

一方で、当局は暗号通貨の匿名性に挑戦し、米国パイプライン事件の身代金を追跡出来た様に、犯罪者の金の動きを逐一把握できるような体制を築こうとしているかもしれません。

もし当局がこのようなノウハウを身につけた場合、犯罪者たちは暗号通貨に投じた資金を一斉に引き上げようとするでしょう。

現在米国ドルは銀行間の送金の場合、世界中どこで送金が行われても米国当局が把握できるようになっています。

これが米国の金融制裁が極めて大きな威力を持っている秘密です。

この圧倒的な制裁力が暗号通貨で棄損されることを米国が簡単に見逃すとは思えません。

いずれにせよ、暗号通貨は現在、薄氷の上を歩いている事は心に留めておいた方が良さそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。