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サラブレッドにもダイバーシティは必要か

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サラブレッドの抱える問題

競馬は日本ではどちらかと言えば大衆の娯楽であり、朝から仕事もせずに赤鉛筆を耳にはさみ、競馬新聞を見ている中年のおじさんを連想させますが(最近はもう少しファッショナブルに変わっているかも知れませんが)、欧州では競馬はもっと高級なイメージで、王侯貴族の嗜む娯楽という感じを受けます。

欧州の主要競馬場で走る馬の種類はサラブレッドです。

サラブレッドとして登録されるためには厳格な決まりがあり、これが今新たな問題を生じさせている様です。

英誌Economistに掲載された「Thoroughbred horses are increasingly inbred 」(サラブレッド種の馬はますます近親交配されている)と題された記事をかいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

真の恋の道は決してスムーズではありません。

あなたの恋人が500kgの重さで、鋼鉄の靴を履いている時、それは特にそうです。

サラブレッドの本拠地として広く知られているサフォークの町、ニューマーケットでは、今繁殖期を迎えています。

牝馬はナショナルスタッドの厩舎の陰に立っています。

彼女のひづめは、キックを弱めるために革のブーツで覆われています。

ナショナルスタッドのディレクターであるティム・レーンは彼女を落ち着かせます。

馬は、トチの実のように輝くまでブラシをかけられ、「見栄えをよくする必要があります」とレーン氏は説明します。

 

サラブレッドは、馬鹿げた世界の貴族です。

奇妙な交配の儀式を受け、近親交配どころではありません。

すべてのサラブレッドは1700年頃にイギリスに持ち込まれた3頭のアラビアの種馬の子孫です。

それらは近親相関で有名なハプスブルク家でさえ遺伝的に多様に見せます。

 

Scientific Reportsに掲載された最近の研究では、「過去50年間に、世界のサラブレッド個体群における近親交配が大幅に増加した」ことがわかりました。

調査対象の10,000頭の馬の3%を除くすべてが、1961年に生まれたノーザンダンサーを祖先としています。

ノーザンダンサーの時代は年に40頭程度でしたが、現在のスーパースターの種牡馬は、年間200頭以上の種付けを行います。

 

当初、馬の飼育者は近親交配の問題を考慮していませんでした。

それどころか、乙女のように、馬もより純粋な方が良かったのです。

三頭の種馬が到着してから一世紀以内に、馬を育てる仕事は非常にうまく行われたので、血統登録簿は新規参入者に対して閉鎖されました。

貴族は彼らの馬の親子関係を管理し、血統登録簿に全ての種牡馬と種付けをされた牝馬をリストしました。

1826年にバークズ・ピアレージが登場し、貴族は自分たちの血統も証明する様になりました。

 

優生学は時代遅れになっています。

サラブレッドは、レースを実行するよりも、子孫を作ることではるかに多くの収入を得ることができます。

ナショナルスタッドでは、一回の種付けに25,000ポンド(約385万円)かかります。

世界最高の種牡馬の一頭であるガリレオは、1回あたり60万ポンド(約9千万円)かかると噂されています。

 

このような料金は、最高のサラブレッド精液を世界で最も高価な物質の1つにし、1リットルあたり約600万ポンド(約9億円)です。

ボトルで販売されておらず(人工授精で作られた馬はサラブレッドとして登録できない)正確な推測は難しいですが、これが収益性の高いビジネスであることは間違いありません。

最高級の種牡馬は1日に100万ポンド(約1億5千万円)を稼ぐことができます。

 

しかし、遺伝的問題が蓄積するにつれて、健康と出産は損なわれます。

このような問題は、犬、人間、牛などの多様な種で発見されており、馬だけがそれらの影響を受けない理由はありません。

「近親交配がどれだけ許容できるか、転換点に到達したかどうか、またはいつ転換点に到達するかはまだわかりません」と、ダブリン大学のヒル氏は述べています。

 

レーン氏は、ヒル氏と同様に、重要なのは外観だけでなく機能でもあると考えています。

見栄えの良い馬は、早く走れないか、うまく繁殖しない可能性があります。

冗談ぽく、彼は別の種との類似性に触れます。 「すべての綺麗な女性が料理がうまい訳ではありませんよね?」

汗血馬の思い出

昔、中央アジアで大きな工場建設に関わりました。

当時私の努めていた会社の会長が工場の完工式で大統領に謁見を賜り、その席上で国の宝である汗血馬を褒美として頂けるという事になりました。

汗血馬は三国志にも赤兎馬として登場し、戦国の英雄が喉から手が出るほど欲しがった馬で、中央アジアが原産と言われています。

会長はその晩、上機嫌でした。

それは当然でしょう。

三国志の英雄も手に入れる事ができなかった汗血馬を自分のものにすることが出来たのですから。

彼は日本の中央競馬会で走らせ、一儲けしようと考えていた様で、子供の様にはしゃいでいました。

ところが座が盛り上がっていた最中に、馬に詳しい私の同僚が「会長、汗血馬は中央競馬会で走らせることはできません。祖先を辿れば三頭に行き着くことができる血統書つきのサラブレッド以外受け入れていません」と会長にささやいたのです。

この一言で、会長の飲む酒はやけ酒に一変しました。

そんな話を今回の記事は思い出させましたが、サラブレッドの近親相関の問題は、やはり三頭の祖先から始まっているものと思います

馬の世界にもそろそろダイバーシティが必要になっていると言うことでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。