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バイデン政権が繰り出した新しい対中経済政策

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バイデン政権の次の一手は

中国の台頭を前に、バイデン大統領はG7やNATO首脳会議といった外交の舞台で、民主主義国の結束を訴えました。

しかし、前途は多難です。中国は国際舞台において、南北対立を軸に反撃を考えていると思います。

経済面では、トランプ政権時代の貿易戦争の様な派手な政策は引っ込められ、バイデン政権がどの様に中国に対抗しようとしているのか明らかではありません。

そんな中、米誌Foreign Policyが「Biden Opens Sneaky New Front in Trade War Against China」(バイデンは中国との貿易戦争で狡猾な新しい手を繰り出した)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Policy記事要約

バイデン政権の中国戦略を理解したいのであれば、ワシントンではほとんど聞いたことがない韓国の会社に注目すべきかもしれません。

韓国を拠点とするMagnachip社は、最新のスマートフォンなど、最先端の画面に必要な種類の半導体を製造しています。

昨年の収益は約5億ドル(550億円)の小さな会社であり、インテルや台湾のTSMCのような半導体業界の巨人と比べれば遥かに小さな存在です。

しかし、バイデン政権は現在、中国のプライベートエクイティファンドによる同社の買収を阻止しようとしています。

これは、米国政府が中国との経済関係についてどのように考えているかについて重要なメッセージを与えるでしょう。

 

バイデン米大統領は1月に政権を握って以来、中国との経済関係を断ち切るというトランプ前米大統領の補佐官たちが提唱した「デカップリング」についての議論を静かに棚上げしてきました。

トランプの課した関税は今のところ残っていますが、中国との貿易戦争の話も放棄されました。

バイデンはトランプ時代のトレンドを継承し、ウォール街と中国との関係の深化を裏書きしています。

バイデン政権の新しいイニシアチブは、アメリカのサプライチェーンに関する新しい取り組みでした。

 

このような文脈においてMagnachip社の件を理解するため、会社の説明から始めましょう。

Magnachipが専門とするディスプレイ技術は、半導体市場のほんの一部です。

Magnachipの技術は進んでいますが、それは特にユニークではありません。

中国の手に渡したくない企業の優先リストを作成する場合、同社はリストのトップには入りません。

 

地域的には、韓国は、スマートフォンに使われる様な最先端のディスプレイドライバーの大部分を生産しています。

これらのディスプレイを搭載したスマートフォンやタブレットを数多く製造している中国は、単にデバイスを組み立てるだけから高価値のコンポーネントを生産するまでののバリューチェーンを構築して、市場に参入したいと考えています。

したがって、中国の投資会社が今年Magnachip社を買収する提案を提出したとき、それは驚きではありませんでした。

 

この買収提案は、北京の国家支援半導体戦略のレンズを通してそれを解釈することも可能です。

中国の共産党指導部は、半導体を外国のライバルとの競争の焦点として位置付けました。

「中国製造 2025」などの政府の計画は、中国の半導体産業に数十億ドルの国家補助金を注ぎ込んでいます。

半導体が高度なコンピューティングから自動運転、新しい軍事技術に至るまですべてに必要な事を考えると、北京の半導体の取り組みはスマートフォンの製造だけではありません。

 

さらにズームアウトすると、米国政府は近年、半導体メーカーを買収しようとする中国企業に厳しい姿勢を示しています。

2015年、米国対米外国投資委員会(CFIUS)は、アイダホを拠点とするメモリチップメーカーであるMicron社の中国のTsinghua Unigroup ofMicronによる買収に待ったをかけました。

2016年、オバマ政権は、半導体装置を製造するドイツの会社であるAixtron社の中国ファンドによる買収を拒否しました。

22018年、トランプ政権はシンガポールを拠点とする企業であるBroadcomによるQualcomm社の買収を停止させました。

 

ただし、Magnachip社はこれらすべての取引とは異なります。

小さな会社ですし、米国にとって核心的ではないテクノロジーに焦点を当てています。

さらに、米国での存在感はほとんどありません。

 

それでも、CFIUSは介入しました。 6月15日、委員会はCFIUSが調査を終了するまで、買収取引をを停止するよう命じました。

翌日、韓国の規制当局は、独自の一連の要求を出しました。

現在、Magnachip社の身売り話は、規制当局が承認するまで棚上げ状態にあります。 

 

米国と韓国の規制当局によるあい前後する介入は奇妙に思えます。

取引を阻止する最初の衝動がワシントンから来たのかソウルから来たのかは明らかではありません。

これは、中国との経済関係に向けたバイデン政権の戦略について何を教えてくれるのでしょうか。

唯一のもっともらしい解釈は、韓国政府と協力して、バイデン政権は事実上、すべての半導体会社を、たとえ小さく、一見無害で、米国とほとんど関係がない場合でも、中国のバイヤーに売却する事を禁止したということです。

これは、外国企業を買収して半導体の専門知識を習得しようとする中国にとっては悪いニュースです。

しかしこれをホワイトハウスがデカップリングと称することはできないでしょう。

米国の厳しい圧力を受ける韓国

バイデン政権の対中経済政策は甘いのではないかと上記論文は主張している様に思われます。

確かにそのきらいがないわけではないのですが、バイデン政権はトランプ政権とは違うやり方で、米国の経済覇権を守ろうとしているのではないかと思います。

彼らの戦略の中で、非常に重要視されているのは、「産業の米」である半導体の様です。

すべてのものがインターネットに繋がる時代において、半導体の優劣は、米国の覇権に大きな影響を及ぼします。

その意味で、米国は米国外の半導体メーカーから中国に技術が流出する事に目を光らせているものと思われます。

その観点から最も重要な米国外のプレーヤーは台湾のTSMCと韓国のサムスン電子でしょう。

現在、韓国は米国のみならず中国からも圧力をかけられ、相当悩んでいると思われます。

バイデン政権は、韓国政府及びサムスン電子に対して、今回Magnachip社の身売りを阻止する事によって、無言の圧力をかけたのではと推測します。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。