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米国選挙改革を訴える一人の上院議員

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歴史に汚点を残した大統領選

昨年末の米国大統領選は激戦でしたが、選挙システムの様々な問題が、噴出した選挙でした。

選挙が公正におこなわれなかったのではという疑念は、大統領選挙の結果が出た後も根強く残り、結果として、トランプ氏支持派の国会議事堂乱入という前代未聞の不祥事が生じ、米国の政治史に汚点を残しました。

いまだにバイデン大統領は公正に選ばれた大統領ではないと思っているアメリカ国民が少なくないのは、バイデン氏の政権運営にも暗い影を投げかけています。

これら問題の根源は選挙制度ですが、この改革に一石を投じようとする一人の政治家に関して、英誌Economistが「Joe Manchin’s proposed changes to America’s voting laws deserve wide support - They would help fix three significant defects in how national elections are run」(ジョー・マンチンが提案したアメリカの投票法の変更は、幅広い支持に値する- これは国政選挙における3つの重大な欠陥を修正するのに役立つ)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

ウェストバージニア州選出の民主党上院議員であるジョー・マンチンは理解が難しい人物です。

彼は、気候変動法案からフィリバスター(上院の議決に過半数の51票ではなく60票を要するというルール)の廃止まで、所属する党の最も大切な法案の多くに反対しました。

しかし、仲間の民主党員をまで困惑させる様な政治的意思がなければ、マンチン氏は、ドナルド・トランプが11月に70%近くの投票を獲得した州で選挙に勝つことはできませんでした。

民主党は上院での1票の過半数を彼に負っています。

 

従って、投票法を改革するというマンチン氏の提案は真剣に受け止める価値があります。

今週、彼の党の大部分が支持したHR1と呼ばれるフィリバスターを廃止する法案が却下されたことを考えると、なおさらです。

彼の妥協案には3つの主要なポイントがあります。

ゲリマンダー(特定の政党や候補者に有利な様に選挙区を区割りする事)を終わらせること、有権者の登録を自動化すること、そして直接投票する人々に何らかの形の身分証明書を要求することです。

 

このパッケージは、昨年の大統領選挙で敗北した候補者によって引き起こされた混乱への解毒剤として多くの民主党員が支持する大規模な選挙制度改革ではありません。

しかし、それは選挙運動のための公的資金を野放図につぎ込もうとするHR1とは違います。

過去であれば、それは超党派の良案として歓迎されたでしょう。

 

最初にゲリマンダーを廃止します。

ほとんどのアメリカの州は、選挙で選ばれた政治家に選挙区の境界線を引く権限を与えます。

その結果、奇妙な形の悪い選挙区が生まれます。

マンチン氏は、すでに7つの州で行われているように、選挙区の区分けを無党派の委員会に委ねたいと考えています。

これに異議を唱えるのは難しいですが、上院の共和党指導者であるミッチ・マコーネルは、この計画は「議会から選挙区を取り除いてコンピューターに引き渡す」と批判しました。

 

マンチン氏は、同様に合理的な有権者登録の提案をしています。

理想的なシステムは、有権者が簡単に登録できるようにし、各州で投票できる人のリストが正確であることを確認し、選挙に立候補する政治家の影響を受けない様に管理作業を行うことです。

マンチン氏は、有権者が自ら政治に参加しないと決定しない限り、有権者が自動的に登録されるシステムを提案しています。

そのようなシステムは選挙への参加を後押しするはずであり、それを両党は望んでいるはずです。

 

マンチン氏の提案の最後の部分は、共和党に訴えるように設計されたものです。

少なくとも20年間、共和党員は、有権者が投票所で何らかの身分証明書を提示することが重要であると述べてきました。

この要件は、政治的利益のためにもしばしば争われてきました。

例えば銃の保有許可証は受け入れられますが、学生証は認められないなどです。

「盗まれた選挙」との陰謀説が広まった11月以来、この論争は益々熱を帯びています。

マンチン氏は、共和党議員に彼らが長い間求めていたもののほとんどを提供し、公共料金の請求書が身分証明として役立つことを可能にすることを提案しています。

両党のほとんどのアメリカ人は有権者ID法を支持しています。

それでも、両党の強硬派はマンチン氏の考えを拒否します。

左側では、投票時にある人が別の人になりすますことは非常にまれであるため、身分証明書を提示する必要はないと言う人もいます。

右側の人は、写真付きの身分証明書だけが認められるべき主張します。

これは、国民IDカードがあるフランスのような国では理にかなっています。

しかし、共和党は、英国の保守党のように、イデオロギー的な理由でIDカードに反対しています。

 

この点で、マンチン氏の提案はまさに合理的です。

しかし、アメリカの崩壊した政治を考えると、それが成功するかは明らかでありません。

共和党員はマンチン氏の選挙改革案を拒否する可能性が高いようですが、それは彼らの支持に値します。

強権国家が喜ぶ米国選挙制度の混乱

言うまでもなく選挙は民主主義の原点です。

選挙が公正に行われた結果として、敗者は潔く負けを認め、国民の支持を失った政権は下野するというメカニズムは民主主義の自浄作用であり、これが強権主義国家と民主主義国家を区別する最も重要な差異である筈です。

このメカニズムがしっかり機能するためには、もちろん選挙制度が公正で機能的である必要があります。

選挙人が本当に居住しているか定かでない様な選挙管理を行なっている様では、米国の選挙制度ひいてはその民主主義に大きな疑問符がつくのは避けられないでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。