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香港民主派の火は消えるのか

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香港民主化運動の将来

香港で盛り上がった民主化運動は昨年7月に突然公布された国家安全保障法の後、中国政府の厳しい取り締まりによって急速に下火となりました。

西側政府は1997年の英中共同声明に盛り込まれた「一国二制度」「高度な自治」を踏みにじったとして、中国政府に厳重抗議を行いました。

この中国政府の国際法違反は、香港の金融ハブとしての地位を危うくするものになるのではないかとの専門家の予想がなされました。

しかし、その後、中国政府はひるむ事なく、民主運動家の逮捕、反政府系の新聞「リンゴ日報」の廃刊と厳しい措置を矢継ぎ早に繰り出しています。

香港の民主化運動はこのまま終わりを迎えるのでしょうか。

米誌Foreign Affairsが「Hong Kong and the Limits of Decoupling - Why America Struggles to Punish China for Its Repression」(香港とデカップリングの限界 - アメリカが中国を罰するのに苦労する理由)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要約

中国政府は、国外からの抗議にも構わず、香港の取り締まりを押し進めました。

多くの西側オブザーバーは、中国政府の弾圧がグローバル金融センターとしての香港の凋落につながり、結果として中国政府は高い代償を払うことになるだろうと予測しました。

多くのアナリストは、香港経済の混乱は法の支配の悪化の避けられない結果であり、「デカップリング」が米国よりも中国に多くの苦痛をもたらすと予測しました。

 

しかし、これまでのところ、この予測は当たっていません。

2021年の第1四半期に、香港当局が前例のない数の政治犯を逮捕し、中国政府が香港の選挙機関の弱体化をを発表したにもかかわらず、香港の証券取引所は新規株式公開の数で世界第4位を維持しています。

香港で営業している外国銀行は、中国経済に投資する機会を狙って、活発な活動を行っています。

そして、多くの西側メディアの誇大宣伝にもかかわらず、昨年の国家安全保障法公布の後も、中国本土や海外から香港に資金は流入しています。

 

これは政治がビジネス上の決定に殆ど影響を与えないという事実を反映しています。

中国の大国としての引力は強力です。

外国政府は、自国の国益を損なうことなく、香港の人々の生活を損なうことなく、中国を具体的に罰するための手段を殆ど有していません。

香港の状況は、米国とその同盟国が中国との包括的な「戦略的競争」を実施することがどれほど難しいかを示しています。

 

最近の調査によると、香港で事業を行っている先進国企業のほぼ3分の1が、人員または業務の削減を検討しています。

香港でビジネスを行うことの政治的リスクが数年前よりも高くなっていることは疑いの余地がありません。

しかし、今日まで、法の支配に関する懸念については、商法に適用される香港の主要な法的伝統がほとんど変わっていないと主要な外国企業に信じられています。

 

中国が香港の真の「高度な自治」を維持するという約束を破ったことは疑いの余地がありません。

しかし、外国政府は、北京の政策を覆す能力がほとんどないことに気づいています。

 

米国と英国を中心とする西側諸国政府は、制裁を実施し、サミットを延期し、二国間協力協定をキャンセルしました。

オーストラリアやカナダを含む他の国々も、香港亡命者の移民規則を緩和するために英国に加わっています。

しかし、これらの措置は、中国の習近平主席が香港の政治問題に対するグリップを強化するという決意を強めさせただけのようです。

 

たとえば、2020年に米国議会が可決した香港自治法を考えてみましょう。

この法律は、米国財務省が、制裁対象の中国当局者と取引を行う中国の銀行に対して罰則を課すことを認めています。

しかし、これまでのところ、財務省はこの法律に基づいて銀行を罰していません。

財務省は中国の主要銀行に対する制裁が、世界の2大国間の膨大な金融取引を妨害することにより、国際決済システムに重大な問題を引き起こす可能性があることを認識しています。

香港を標的とする金融制裁を行う現実的な方法はありません。

中国の大手銀行に対するいかなる行動も、中国の金融システムに対する本格的な攻撃にエスカレートします。

そのような攻撃は、世界的な金融不安につながり、米国の国民貯蓄を失い、ドルが支配的なSWIFTに代わる決済システムを作成しようとする中国の意欲を強めるでしょう。

これらはすべて、米国経済に重大な損害を与えるでしょう。

 

さらに、香港の金融セクターをターゲットにすることは、北京の政策立案者を傷つけるよりも、香港人を傷つけることがほぼ確実です。

 

ワシントン、ロンドン、その他の首都で、香港に関して中国を罰するという衝動は自然ですが、外部の勢力は中国の政策に影響を与える力を欠いています。

不都合な真実は、香港は民主主義体制の空洞化にもかかわらず、米国や他の西側諸国にとって金融​​市場および中国への経済的玄関口として依然として有用であるということです。

 

西側は、制裁の組み合わせが中国の政策の転換を可能にするという幻想を放棄すべきです。

 代わりに、民主主義国は、中国が約束を破ったことを世界に強調すべきです。

これは、中国の信頼性に疑問を投げかける効果があります。

結局のところ、香港との約束を破ったのなら、なぜ他の場所でも同じことをしないと信じるのでしょうか。

西側諸国は香港での中国の行動を非難するメッセージを定期的かつ一貫して流し続ける必要があります。

 

香港の状況は、地政学的競争を支援するために経済的分離を追求することの限界を示しています。

幸いなことに、バイデン政権はこの限界を理解しているようです。

政権はこれまで、中国経済とのデカップリングを求めるよりも、中国に対する技術的主導権を維持することを優先してきました。

 

米国が中国の成長する力に対抗する方法を模索するのは当然のことです。

しかし、香港の状況は、ワシントンの多くの人が信じるよりも、中国を効果的に罰する事が難しい事を示しています。

民主主義国も反省が必要

言論の自由を抹殺された香港の人々は本当に気の毒です。

民主主義国が外から彼らの政治的環境を改善させる手段は限られている様です。

しかも巨大な中国市場はあまりに魅力的で、西側諸国も中国との関係を捨てきれないのが現実です。

中国はなかなか手強いです。

政権に対する批判を許さない彼らの姿勢は問題ですが、「西側も人種差別や極端な貧富の差など様々な社会問題を抱えているではないか、最貧者の比率を大幅に改善し、優秀であれば立身出世の道が開かれている中国の方が上だ。」との彼らの主張にも一理あります。

西側諸国も自らの社会システムの改善を常に心がけなければ、中国の真似をする国が増えていく事を覚悟しなければなりません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。