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バイデン政権の中国ドクトリンは成功するか

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関与政策の失敗

「関与政策」という政策は米国の為政者により有効だと長く信じられていました。

「中国を世界経済に招き入れれば、国民は豊かになり、豊かになった国民は民主的な政治改革に目覚めるだろう」というその考えは、甘かった事がその後明らかになります。

近い将来、中国は国民総生産で米国を上回る事が確実視されていますが、さすがの米国もお尻に火がついた様で、トランプ政権の後期から中国に厳しい姿勢で臨む様になりました。

バイデン政権も反中で固まる議会の支援を受けて、中国に厳しい政策を打ち出していますが、彼らの中国ドクトリンは成功するのでしょうか。

英誌Economistが​​​​​​​​「Biden’s new China doctrine - Its protectionism and its us-or-them rhetoric will hurt America and put off allies」(​​​​バイデン氏の新しい中国ドクトリン - その保護貿易主義と二者択一を迫る議論はアメリカにとって有害で、同盟国を躊躇させるだろう)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

楽観主義者たちは、中国を世界経済に歓迎することが、中国の政治改革をもたらすことを長い間望んでいました。

トランプ氏はそれを弱腰だととして否定しました。

現在、バイデン氏は、トランプ派のアイデアを、アメリカを中国と戦わせるドクトリンに変えています。

これは、ライバルの政治システム間の闘争であり、勝者は1人だけだと彼は語りました。

トランプ氏とバイデン氏は、ニクソン元大統領が中国に行って以来、50年間で最も劇的な外交政策の変更を行いました。


バイデン氏と彼のチームの戦略は、中国が「共存にはあまり関心がなく、支配にもっと関心がある」という信念に基づいています。

アメリカの政策の主目的は、中国の野心を鈍らせることです。

アメリカは気候変動のような共通の関心のある分野で中国と協力しますが、他の場所では対抗します。

それは、国内で力を築き、その経済的、技術的、外交的、軍事的、道徳的重荷を補うことができる同盟国と協力する事を意味します。

バイデン氏の新しいドクトリンの多くは理にかなっています。

関与政策は、中国の権力の下で崩壊しました。

習近平主席が率いる中国は、南シナ海に進出し、香港に共産党支配を課し、台湾を脅かし、インドと小競り合い、国際機関における西洋の価値観を覆そうとしました。

多くの国は、中国の「戦狼外交」を警戒しています。

 

しかし、バイデン氏の中国ドクトリンは、それが機能する可能性が低いという点に問題があります。

一つの問題は、バイデン氏が脅威をどのように定義するかです。

ワシントンの政治が崩壊しているので、彼は国家目的の感覚を再燃させるために真珠湾の精神が必要であると感じているようですが、 それは誤算です。

共和党員が中国と表現されるものなら何でも飛びつくのは事実です(大統領選挙が盗まれたと言うたびに、彼らは中国の宣伝家の仕事にします)。

しかし、共和党は、表紙に「中国」という言葉が刻印されているという理由だけで、バイデン氏の国内政策を支持するわけではありません。

 

さらに悪いことに、バイデン氏がアメリカ人を連帯させる為に中国に対して厳しい表現を使用すればするほど、同盟国やインドやインドネシアのような大きな新興国と連帯するという彼の仕事を難しくします。

バイデン 氏は彼らに共存ではなく、民主主義と独裁政治の間の二者択一を提示しています。

悲しいかな、彼はアメリカの影響力を過大評価し、中国に背を向けることによってどれだけの潜在的な同盟国が失われるかを過小評価しています。

 

アメリカが如何なる措置を取ろうが、中国は支配的な勢力になるでしょう。

すでに中国を最大の貿易パートナーとする国の数は米国の2倍です。

ヨーロッパの輸出大国であるドイツは、政治的関係が弱まっているにもかかわらず、中国との商業的つながりを維持することを目指しています。

東南アジアでは、多くの国が安全保障のためにアメリカに、繁栄のために中国に目を向けています。

超大国から選択することを余儀なくされた場合、一部は中国を選ぶかもしれません。

 

バイデン 氏は、他の国に決定を課すのではなく、それを勝ち取る必要があります。

そして、その可能性が最も高いのは、アメリカが国内で繁栄し、成功した開かれた世界経済のリーダーである事を実証する事です。

 

ここでも、バイデン氏の計画の詳細には問題があります。

政権は、グローバルルールの擁護者としてのアメリカの強みを強化するのではなく、中国の脅威を利用して国内の政策を推進しています。

その教義は、産業政策、政府の介入、管理に満ちています。

それは、中国自身が追求しているデカップリングのような不快なものです。

良い例として、先月発行された、半導体、バッテリー、レアアース、重要な医薬品成分の4つの重要なサプライチェーンに関する政府の報告書をご覧ください。

この報告書は、これらの産業への政府の介入に関する国家安全保障面での主張をしているだけではありません。

組合の利益や、社会正義なども包含しています。

これが政府の方針である場合、バイデン氏は、雇用と生産がアメリカの国内にとどまるようにするために補助金と規制を使用することを提案しています。

 

バイデン氏の方針に矛盾が生じることは避けられません。

彼の中国への攻撃の中心は、新疆ウイグル自治区でのウイグル人に対する人権侵害です。

一方、気候変動に関する彼の政策の中心は、再生可能エネルギーへの移行です。

しかし、新疆ウイグル自治区は太陽光発電に使用されるシリコンの45%を生産しているため、この2つは密接に絡み合っています。

 

より根本的な問題は、バイデン 氏の中国ドクトリンの保護貿易主義的性格です。

これは新規参入者よりも既得権益者に有利であり、経済成長を加速させるのではなく、経済を圧迫する可能性があります。

 

第三の問題は、バイデン氏のドクトリンがアメリカの同盟国をさらに警戒させることです。

中国との関係を断ち切る目的がアメリカで労働者の雇用を創出することであるならば、同盟国は何のためにアメリカに協力するのか自問するでしょう。

 

アメリカが世界秩序を再構築しようという中国の野望を阻止したいのであれば、それは今まで成功してきたグローバリゼーションを擁護するべきです。

そのようなアプローチの中心となるのは貿易と多国間システムであり、開放性と自由​​なアイデアの流れがイノベーションの優位性を生み出すという信念を体現しています。

 

アメリカが本当にアジアで中国に対抗したいのなら、2016年に撤退したTPPに参加するでしょう。

残念ながらその可能性は今やほとんどありませんが、環境とデジタル貿易に関する新たな合意を求める可能性はあります。

また、将来のパンデミックに対するワクチンプログラム、デジタル決済システム、サイバーセキュリティ、中国の一帯一路イニシアチブと競争するためのインフラ支援スキームなど、西側の秩序を強化する新しいアイデアを支援する必要があります。

中国のテクノナショナリズムを模倣するのではなく、より自信のあるアメリカは、西側を強くした理由を確認する必要があります。

TPPの重要性

バイデン政権は、中国に対抗する大義そしてメリットを同盟国に示さなければならないと思います。

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)は、Economistが主張する様に、自由で開かれた太平洋、法による支配等を標榜する事から、米国とその同盟国の重要なプラットフォームになるはずです。

英国もこの協定への参加を正式に発表しましたが、米国がこの協定に参加すれば、中国に対して大きな影響力を行使できる様になると思います。

バイデン 政権がTPPへの参加を決定できない理由は、米国の労働者の仕事が減るという事の様ですが、そんな理由でTPPに参加しないのであれば、他国が米国のいう事を聞くはずはありません。

バイデン氏 も国際協調と言いながら、America Firstのトランプ政権と大差ないのではと皆が感じるでしょう。

バイデン政権は、環境と人権を主要なカードとして、中国に対抗しようとしている様ですが、TPPはこの目的を達成するために、お誂え向きのプラットフォームだと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。