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バイデン政権の6ヶ月 - 対中政策の評価

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最初の半年の重要性

バイデン大統領が政権に就いてから6ヶ月が経ちました。

何事も最初が肝心といいますが、米国大統領の場合、最初の6ヶ月は特に重要です。

というのもこの6ヶ月は選挙勝利の余韻もあり、思い切った政策が取りやすいのです。

この期間を過ぎると、国民の支持率は低下し始め、一年半後に控える中間選挙のことが気になり始めますので、大胆な政策は封印されがちです。

この最初の6ヶ月について、米誌Foreign Policyが​​「Biden at Six  Months: How Successful Is His Foreign Policy?」(バイデン政権の最初の半年:彼の外交政策は成功したか?」と題した記事を掲載しました。

この中で中国政策に関して二人の専門家の意見を載せています。一人は元豪州首相のKevin Rudd氏でもう一人はシンガポール国立大学の上級研究員であるKishore Mahbubani氏です

かいつまんでご紹介したいと思います。

Kevin Rudd元豪首相の意見

バイデン米大統領が就任したとき、中国政府の一部の人々は、新政権が米中関係を「リセット」すると期待しましたが、彼らは失望する事になりました。

バイデン政権のアジア政策チームは、ハイレベルの戦略的対話を再開するという中国の招待を拒否し、事実上、トランプ時代の厳しい対中措置を維持しました。

同時に、ホワイトハウスは、外交、安全保障、貿易、技術政策の全範囲にわたる米中戦略の包括的な見直しを推進してきました。

その作業は秋に完了する予定です。

 この作業が複雑さを増す主要な要因は、北京の戦略的思考の変化です。

具体的には、中国のテクノロジー企業DiDiを米国における新規株式公開の段階で罰するという北京の最近の決定は、習主席が米国からのより広範な財政的分離は許容可能であり、おそらく避けられない戦略的競争の結果であると結論付けた事を裏付けます。

それはまた、米国の圧力の高まりに直面して、中国を「自立した」経済にするという彼の長年の信念を強化しています。

言い換えれば、習主席が、米国の経済的、財政的、技術的制裁に対する脆弱性を減らすために、米国と死活的な経済関係を持つ事を避けようとしていることを示しています。

これは、デカップリングが西側だけが有する政策選択であるという米国の思い込みとは異なります。

代わりに、習主席は、中国が米国とのつながりを断ち切り、自立し、以前よりも柔軟な貿易と投資政策を通じてヨーロッパや世界の他の地域との経済的関与を加速し始めることを示唆しています。

これは、これまで米国の対中政策で欠けている重要な要素が貿易と経済である事を示しています。

保護貿易主義の米国政府は、これを素直に認めようとしませんが、率直に言って、米国は、市場をアジア、ヨーロッパ、その他の地域に完全かつ相互に開放し、現在および将来の同盟国に世界経済の巨人である中国に代わるものを提供しない限り、中国との戦略的競争に勝つことはできません。

そのため、世界の多くの国は、現在中国と米国の両国に二股をかけています。

Kishore Mahbubanシンガポール国立大学研究員の意見

バイデン大統領は習近平主席との取引において大きな競争上の不利益を被っています。

彼の主要な関心事は短期的にならざるを得ません。

民主党は2022年11月の中間選挙をどのように生き残ることができますか?

共和党は、バイデン氏が中国にてぬるい場合、そこにつけ込むでしょう。

したがって、米国の消費者、労働者、農民を傷つけた中国との貿易戦争を中止したり、環太平洋包括的進歩協定(TPP)に参加したりするなど、ワシントンの長期的な利益に役立つ賢明な措置は可能となりません。

 

対照的に、習氏は、139か国が登録した一帯一路イニシアチブの拡大や、東南アジア諸国連合が開始した地域包括的経済連携への参加など、長期的な戦略的戦略を自由に実行できます。

ASEAN諸国は、23億人を結びつけ、世界で最もダイナミックな経済エコシステムを構築します。

ASEANは1967年に親米組織として生まれましたが、ほとんどのアメリカ人は、米中対立においてASEANがどれほど重要になるかを認識していません。

2000年の米国のASEANとの貿易額は1,350億ドルで、中国の400億ドルの3倍以上でした。

今日、中国のASEANとの貿易は6,410億ドルを超えており、米国の3,000億ドルの2倍以上に相当します。

貿易が進むと、影響力が増します。

事実上、米国は東アジアから切り離されてきました。中国は統合しています。

 

21世紀の世界は豊かで複雑になります。

多文明、多極、多国間の世界です。

バイデン氏が、世界が民主主義と独裁政治の間の白黒の争いにあるという考えに基づいて彼の政策を立てることは賢明ではありません。

代わりに、私の本「中国は勝ったのか?」に記載しているように、米中の競争は、アメリカの金権政治と中国の実力主義の間のコンテストです。

それは中国が勝つことができるコンテストです。

 

ほとんどの国が中国が間違いなく世界最大の経済大国になる事を受け入れ始めています。

中国を孤立させたり遮断したりする米国のキャンペーンに参加したい人はほとんどいません。

10年以内に、ほとんどの国が米国よりも中国とより多くのビジネスを行うようになるでしょう。

中国が米国から切り離されたとしても、中国は孤立しません。

代わりに、孤立しているのは米国かもしれません。

したがって、北京を扱う場合、バイデン氏はこれまでよりも長期的な計算を行う必要があります。

米国が抱える内政問題

これはなかなか厳しい論評ですが、バイデン政権の対中政策の問題点をかなり的確に指摘していると思います。

バイデン氏は中間選挙を意識せざるを得ません。

内向きになった米国の有権者はAmerica FirstとかBuy Americaと言った保護貿易主義的スローガンに弱いので、バイデン氏もこの様な有権者の意見に耳を傾けざるを得ません。

しかし、これは同盟国と共に対中包囲網を作ろうというバイデン氏の戦略と矛盾します。

Buy Americaなんて標語を掲げている米国と中国に対立しようなんて国はそう簡単に見つからないでしょう。

北京の優秀な官僚はこの民主主義国の間に吹くスキマ風を見逃しません。

ドイツを筆頭とするEU諸国やASEAN諸国と経済関係を強化し、米国を孤立させようと狙っているに違いありません。

それにしても、デカップリングが中国の主導で成されるかもしれないというのは驚きです。

バイデン政権がどの方向に舵を切るか注目されます。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。