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オリンピックが変えられるもの - 日本の多様性

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混血日本人選手の存在感

東京オリンピックが始まりました。日本選手の連日の活躍ぶりはオリンピックに対する見方を一変させたのではないかと思います。

昨日二連覇を果たした柔道の大野選手がインタビューに答えて「オリンピック開催に関して賛否両論がある事は理解しています。でも我々アスリートの活躍を見た方々を少しでも元気付けられれば光栄です。」と語っていましたが、まさにその通りです。

辛い長い練習に耐えて晴れ舞台に臨んだ彼らの活躍はコロナで鬱屈した国民を元気付けてくれました。

メダルラッシュに沸く日本選手団ですが、その中に多くの混血の日本人が含まれていることに気付かされます。

最終聖火ランナーの大坂なおみさんもそうですし、バスケットの八村選手も開会式で旗手を務めました。

日本選手団の混血選手の存在感に関して英誌Economistが​​「Mixed-race athletes reflect broader developments in Japanese society - Their country’s diversity is becoming harder to ignore」​​​​​​(混血アスリートは、日本社会の幅広い発展を反映している -その多様性は無視できない)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

八村塁は、日本人の母親とベニン人の父親の息子として、東京から車で6時間もかかる富山の学校にいた頃、他の子供たちは容貌の異なる彼を罵倒しました。

しかし、バスケットボールコートでの彼の才能は彼が尊敬を得るのを助けました。

現在、アメリカのNBAのスターである八村氏は、7月23日のオリンピック開会式で、チームジャパンの旗を掲げました。

 

旗手としての八村氏の選択は、日本は均質であるとの考えが支配していた国で、人種とアイデンティティに関する態度が変わりつつある事を反映しています。

ハイチと日本の混血の大阪なおみから、ガーナと日本の混血のサニ ブラウン アブデルハキム、そしてイランと日本の野球スターであるダルビッシュ有などは、日本の多様性を示してくれる著名な混血アスリートです。

「彼らは日本人自身が持っていなかったロールモデルになりつつあります。しかし日本の混血の人々はしばしばハーフ(半分を意味する和製英語)と呼ばれます。」とベルギーと日本の混血である写真家の宮崎哲郎氏は語ります。

 

日本は人種的に均質な国であるという考えは常に神話でした。

日本人はアジアの多くの地域から生まれました。

日本には、アイヌ人、沖縄人(かつては日本とは異なっていた島々から来た)、韓国人などが住んでいました。

大日本帝国は多民族社会でした(日本人が階層の最上部に位置していましたが)。

しかし、同質性の神話は、帝国後のアイデンティティを求める日本人と日本の奇跡的な経済発展の説明を求める外国人の両方の間で、熱心な支持者を見つけました。

そのような考えは「多文化の過去を取り除き、マイノリティ集団の存在を排除した」と、「日本のマイノリティ:均質性の幻想」の編集者であるマイケル・ワイナーは主張します。

保守派は今日までこの理論に固執しています。

 

日本人は純粋で同質であるとの議論は、ハーフに存在の余地を残しません。

真の日本人と見なされるということは、日本人の両親がいて、日本語を流暢に話し、「日本風に振舞う」ことを意味する傾向があります。

「私たちのほとんどは、日本人ではないという感覚をいつも持っています」と宮崎氏は言います。

ハーフは、日本のパスポートを持っているにもかかわらず、外国人として認識されることがよくあります。

大阪さんの祖父は、彼女の母親が外国人男性と付き合っている事を最初に明らかにしたとき、母親を離縁しました。

 

今でも、人種差別は大きな問題のままです。

だからこそ、チャンピオンアスリートのお祝いは偽善を生みます。

八村氏は、ソーシャルメディアで「ほぼ毎日」嫌なメッセージを受け取っていると語りました。

日清食品は、コマーシャルで大阪さんの肌と髪を明るくしました。 (批判の後、会社は広告を取り下げた。)

保守派の中には、まだ二人が本当に日本人であるかどうか疑問に思っている人がいます。

混血の子供たちは陰惨ないじめに直面しています。

一部の学校では、まっすぐな黒い髪でない場合、生徒に髪を染めるかまっすぐにすることを義務付ける校則がまだあります。

雇用と住居における人種に基づく差別は広く存在します。

日本の法律はそれを防ぐための規定に欠けている、とハーフを研究している社会学者のシモジ・ローレンス・ヨシタカは嘆きます。

マイノリティは日本の政治において代表者がほとんどいないのです。

しかし、日本のより多様な現実は、特に八村氏のようなスターが存在するため、無視するのは難しいです。

新世代のアスリートはその経験を語る事を躊躇しません。

「そのような人たちが差別について率直に話しているのを聞くと、人々は自分たちだけではないことに気づきます」とシモジ氏は語ります。

 

現在、日本には戦後のどの時代よりも多くの外国人がいます。

日本の人口減少を補うための移民キャンペーンにより、日本に住む外国人の数は、10年前の約200万人から今日では約300万人に増加しています。

これは全人口のわずか2%ですが、その割合は都市居住者と若者の間ではるかに高く、東京の20代の少なくとも10%は外国生まれです。 

 

外国人との結婚をめぐる偏見は薄れつつあります。

1993年には、日本人の30%が国際結婚を認め、34%が認めませんでした。

2013年には、56%が承認し、承認しない人は20%まで下がりました。

現在、50人に1人の赤ちゃんが、(1980年代後半は135人に1人でした)混合カップルから生まれています。

八村氏とその仲間たちが示すように、彼らの可能性は計り知れません。

多様性の重要性

過去の大帝国が異民族を同化させて発展してきた事は歴史を見れば明らかです。

中国においても隋や唐を含む多くの帝国が北方民族による王朝であった事が最近の研究結果で明らかになっています。

中華帝国は異民族の力をうまく取り込む事によって文化的にも経済的にも豊かになっていった訳で、まさにダイバーシティが活力を生むという事だと思います。

私が長く住んだトルコも多民族国家であり、トルコ人の友人の祖先も欧州だったり中央アジアだったり中東だったりしていますが、トルコ語を話し、トルコに住んでいる限り皆等しくトルコ人です。

日本でいう所謂ハーフはトルコでは当たり前で、話題にもなりません。

 

日本に生まれつつあるダイバーシティの灯を消してはならないと思います。

学校や職場で積極的に異文化、異人種を受け入れる機運が盛り上がる事を期待します。

オリンピックがその契機になれば、大きな目的を達成したと言えるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。