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健康パスに対する反対運動はマクロン大統領をどこまで追い詰めるか

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個人主義の国フランス

フランス人は束縛を嫌う国民です。

誰かに個人の自由が奪われる事をとことん嫌います。

これは私が昔留学していたときに肌で感じました。

深夜シャンゼリゼー通りで信号待ちをしていた時に、周りのフランス人は赤信号を無視してすたすたと横断歩道を渡っていきます。

後で友人に聞いてみると「規則違反だって、とんでもない。法律は歩行者のためにあるのだ。車が来ていないのに立ち止まる必要なんてない。」との答えが返ってきました。

日本だと子供が真似するからやめろとか色々言われそうですが、フランス人は個人主義が徹底していて、人に迷惑がかからない限り何をやっても良いとの考えが主流です。

従って生き方を他人に強制されると、反発する傾向が強いのです。

今回マクロン大統領が発表した健康パス(ワクチンパスとも呼ばれます)の導入に対しても、ワクチンを打つ打たないは個人の自由だと主張する人たちが集まり、パリでは20万人規模のデモが行われたと報道されています。

しかし、フランス人の多数はこの健康パスの導入を支持している様です。仏紙Les Echosが、「Les opposants au pass sanitaire ne réussissent pas à mobiliser l'opinion」(健康パスの反対派は世論を動員することに失敗している)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

カフェ、レストラン、ショッピングセンター、病院、老人ホーム、飛行機、鉄道の利用に関して.憲法評議会は今週木曜日に健康パスの延長について判決を下します。

これは、フランス人が様々な場所にアクセスするために健康パスの使用を許可するか否か最後の判断となります。

ここ数週間、反対デモは毎週土曜日に行われ、先週末は20万人を超えました。

しかし、7月12日のスピーチでエマクロン大統領が提示した「人命を救う小さな道具」の強化は、国民の拒絶を引き起こすにはほど遠いのが現状です。

世論調査によると、フランス人の37%だけが、健康パスへの反対運動に賛意を示しています。

それは、過去の「黄色いベスト」運動との間に類似点があったとしても、全体として、反対運動が世論の支持を受けていない事が世論調査で明らかになっています。

2018年11月においては、フランス人の73%が「黄色いベスト」運動に賛同し、2か月後も60%が支持していました。

 

それでも、健康パスの反対派によって提起された自由の問題を過小評価してはなりません。

反対派に共感する人たちとワクチンを忌避する人たちの間には重複がみられます。

労働者階級において支持者が多く、マリーヌ・ル・ペン(右翼の国民戦線党首)とジャン・リュック・メランション(左翼党党首)の支持者にも重なります。

 

フランス人の大多数にとって、健康パスを提示することは、特に大きな問題ではありません。

旅行のため(63%)に提示を求められる事はカフェやレストラン(55%)よりも違和感が少ない様です。

 

マクロン大統領はワクチン接種の義務化を主張し、「自分自身に問いかけよう」と国民に呼びかけました。

これに対して7月12日時点で、フランス人の10人に4人が反対しています。

「強制ワクチン接種には、ある程度の教育が必要です。 フランス人の80%が賛成した場合のみ、マクロン大統領は義務化を実行する事が可能でしょう」と世論調査会社代表は語りました。

個人主義の国フランスでもコロナだけは例外か

通常であれば、カフェの出入りまで制限される健康パスの導入は、フランスではあり得ない筈ですが、コロナの脅威はそんなフランス人にもお上からの押しつけを受け入れさせた様です。

マクロン大統領は、健康パス導入ばかりか、ワクチンの接種義務化を押し進めようとしています。

しかし、これはさすがに難しいのではないかと思います。

パリに住む人が「フランス人にとってデモはエクササイズの様なものだ」と形容した様に、彼らは頻繁に権力に対して反発し、行動を起こします。

接種義務化は、2018年に生じた黄色いベスト運動の様な大規模なストライキを引き起こしかねません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。