予想を上回るタリバンの進撃スピード
アフガニスタンが緊迫した状況に陥っている様です。
米軍の撤退を受けて、タリバンが全国各地で政府軍に対して攻撃を加え、多くの都市がタリバンの支配下に落ちたと伝えられています。
バイデン 大統領はアフガニスタン政府に対して「団結して闘う様に」と呼びかけていますが、政府軍がいつまで持ち堪えられるか疑問視されています。
既に米国政府はアフガニスタンに駐在している大使館員及び家族に国外退去を指示した様です。
この様な状況を招いたきっかけは米軍の撤退と言われていますが、米軍は留まるべきなのでしょうか。
米誌Foreign Policyが「What Went Wrong With Afghanistan’s Defense Forces?」(アフガニスタンの国防軍の何が問題だったのでしょうか?」と題する論文を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Foreign Policy論文要約
タリバンの攻撃に政府軍が敗走する中、アナリストやオブサーバー、そしてアフガニスタン自身が、アフガニスタンの国軍に何か問題があったのかと問いかけています。
米国とその同盟国は、アフガニスタンの軍隊、空軍、特殊部隊の部隊、警察の開発、武装、訓練に数十億ドルを注入してきました。
アメリカだけでも、2001年に9.11の攻撃を受けて以来、アフガニスタンの防衛部門に約830億ドル(約9兆円)を費やしてきました。
しかし、先週、アフガニスタンでは10の州都がタリバンの手に渡りました。
治安部隊と地域筋によると、これらの首都のうち4つは、戦闘を拒否した国軍によって反政府勢力に無抵抗で手渡されました。
専門家は首都カブールが来月には攻撃を受けると予測しています。
専門家は外交政策の欠陥はアフガニスタンに提供された訓練や設備にあるのではないと語りました。
失敗の理由は、アフガニスタン大統領アシュラフ・ガニーの政府に起因しているとのことです。
国防省と内務省は腐敗していることで有名であり、専門家はまた、リーダーシップの欠如、および利己主義を挙げています。
たとえば、情報筋によると最前線で戦っているアフガニスタン警察は、内務省から何ヶ月も給料が支払われていません。
国防省にも同じことが当てはまります。
多くの地域で、兵士と警察は十分な食料、水、弾薬、または武器を供給されていません。
供給ラインでは多くの資材が盗まれ、武器、弾薬、その他の機器が闇市場に売られ、その多くが反乱軍に届きます。
多くの兵士や警察は彼らの家から遠く離れた地域に配置されており、彼らの家族や財産を守るために職場を放棄しています。
アフガニスタンの諜報機関の元高官は、国の治安機関からの離職者数は、300から500人の採用に対して、月に約5,000人であり、その比率は「持続不可能」であると述べました。
ガニー大統領自身はマイクロマネージャーであり、パラノイア状態を示しています、と彼に近い情報筋は言います。
国防大臣や内務大臣、知事、警察署長などの高官は、驚くべき速さで解任されます。
巨額の資金が横領され、市民サービス、健康、教育、およびセキュリティが損なわれます。
大統領と彼の最も近い顧問、国家安全保障顧問のハムドラ・モヒブ、および大統領行政事務長であるファザル・マフムード・ファズリはは、ガニの「三人共和国」と呼ばれています。
全員が海外で長期間過ごしており、多くの上級官僚と同様に、2番目のパスポートを持っています。
大統領の取り巻きの中には、アフガニスタンの2つの公用語、ダリー語とパシュトゥー語のどちらにも堪能でない人もいます。
「正当性の問題は非常に重要です」と、カブールの戦争平和研究所の創設者であるナジャフィザダ氏はは言いました。
彼は、2020年にガニが2期目の当選を果たした大統領選挙は汚職で汚染されていたと述べました。
「 政府とアフガニスタン国民の間には断絶があった」と同氏は述べました。
専門家によると、アフガニスタンの軍隊には能力はあるが、戦う意志が欠けている様です。
全国で、兵士、警察、州および地方の役人、および市民は、ガニー大統領の政府を守るために戦うつもりはないと述べています。
その見解、つまり意欲のない能力は、火曜日にホワイトハウス報道官のジェン・サキが行ったコメントに反映されていました。
サキ報道官は「アフガニスタン国防軍は反乱軍と戦う十分な装備を有しており、反乱軍を退却させる事で、ドーハで行われるタリバンとの交渉を有利に進める事ができる。」
ベトナム戦争の教訓
この論文を読むと、アフガニスタン内戦とベトナム戦争が重なって見えてきます。
当時のアメリカは共産主義の拡大を阻止せんと、南ベトナム政府を支援しました。
しかしその政府は腐敗しており、ベトナム国民の支持を受けていませんでした。
最終的に米国は多くの兵士を失った上に、ベトナムから撤退せざるを得なかったのです。
アフガニスタンから米軍は撤退すべきではないという意見も米国内には根強く残っている様です。
しかし、自分の国は自分で守るのが基本です。
外国勢力によって守られている政権はいつか国民の支持を失います。
これだけ腐敗して国民の信頼を得ていないアフガニスタン政府を米国が支援し続ける事を米国の有権者は許さないでしょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。