タリバンとパキスタンの蜜月
昨日アフガニスタンの首都を掌握したタリバンは、1990年代中頃、イスラム神学校の学生を中心とした集団として台頭し始めました。
彼らは長期間にわたり、隣国パキスタンの諜報機関であるISIから資金面軍事面で支援を受けてきたと伝えられています。
ご存知の通り、インドとパキスタンは犬猿の仲ですが、世俗的な政権をアフガニスタンに樹立する事を望んだインドに対抗する上で、タリバンはパキスタンにとって好都合だったものと思われます。
今回のタリバンの快進撃もパキスタンの支援が影にあった様で、英米のメディアはこれを一斉に取り上げています。
今日は米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)の「A Reckoning for Pakistan - The Taliban’s protector cheers the group’s Afghanistan takeover(パキスタンへの報い - タリバンによる征服を祝福する支援者)と題する社説をご紹介したいと思います。
WSJ記事要約
アメリカのストラテジストは、米国で訓練されたアフガニスタンの治安部隊が、劣っている様に見えたタリバン民兵を前に、何故あっという間に屈したのかしばらく研究する事になるでしょう。
その際に注目すべき場所の1つはパキスタンであり、その指導者は隣国がタリバンによって乗っ取られた事を歓迎しました。
インドのメディアによると、アフガニスタン人は「奴隷状態から開放された」とパキスタンのイムラン・カーン首相は述べました。
カーン氏は米軍のアフガニスタンからの撤兵を歓迎しましたが、文化的支配を促進するものとしてパキスタンでの英語教育を非難しました。
米国の安全保障パートナーがこんな事を大声で言う事は確かに驚きです。
しかし、アフガニスタンでのアメリカの成功に対する主要な障害は、「イスラマバードの仲間たちからのタリバンへの絶え間ない支援」でした。
アフガニスタンの南の国境を越えたところに、タリバンの安全な避難所が存在する事は、タリバンを生きながらえさせ、最終的な軍事的成功に導きました。
過去20年間、米国は中央アジアでの対テロ作戦をパキスタンの基地に依存してきました。
それでも、イスラマバードはこの地域で独自のパワーゲームに参加しています。
その諜報機関はアフガニスタンの支配を望んでおり、タリバンを最高の手段と見なしています。
彼らは、アフガニスタンに世俗的な政府を望む彼らの最大の地域ライバルであるインドの目的を妨げたいと思っています。
イスラム原理主義の影響を受けたパキスタンとの米国の関係は、間違いなく悪魔との取引になっています。
アメリカ人は、10年前、オサマ・ビンラーディンがパキスタンに潜伏している事が判明した時、その事実に気がつきました。
その際容疑者は何ら拘束を受けていない様でした。
現在、イスラマバードは、米国が20年間権力から遠ざけようとしたタリバンに権力を回復させる上で重要な役割を果たしました。
しかし、カーン氏は彼が望んでいた展開を後悔するかもしれません。
ジハード主義者はパキスタンとその核兵器を支配したいと望んでおり、それは即座に危険なイスラム教徒のカリフ制となるでしょう。
カーン氏が頻繁に口にする反米主義は、パキスタンの過激派をなだめるためかもしれませんが、カーン首相は過激派が彼を真っ先に標的にしない様注意する必要があります。
複雑なアフガニスタンと隣国の関係
アフガニスタンを地球儀で見ると、西はイラン、北はトルクメニスタン、ウズベキスタン、タジキスタンといった中央アジア諸国と隣接し、南はパキスタンとの長い国境線を共有しています。
よく見ると、もう一つ隣国があります。
細長い回廊を通じて中国とも接しているのです。
今後、タリバン政権が樹立されるとこの地域の勢力図は大きく変わる可能性があります。
パキスタンそしてその友好国である中国の存在感が高まる可能性があります。
しかし、中国は内心、タリバンの政権復帰を心配しているかもしれません。
中国には新疆ウイグルという問題がありますが、イスラム教徒であるウイグル族の中国での反政府運動をタリバンが支援する可能性があるからです。
過去にイスラム過激派はウズベキスタンでも激しい反政府運動を引き起こしており、中国が危惧するのも無理はありません。
タリバンが今後どの様な政策を行うのか注目しましょう。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。