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アフガニスタンは再びアルカイダの巣窟となるのか

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アフガニスタンが国際社会にもたらすもの

タリバンによるアフガニスタンの制圧は何を今後生み出すのでしょうか。

間違いないのは大量の難民発生です。

既にアフガニスタンからの難民は隣国のイランを経由してトルコに到達している様です。

トルコは既にシリア難民の受け皿となっており、4百万人もの難民を受け入れていますから、更にアフガン難民を収容する余裕はなさそうです。

難民の最終的な目的地はEUとなるわけですが、EUはアフガン難民の受け入れに難色を示すでしょう。

難民の次に心配されるのは、アルカイダ等テロリスト集団がアフガニスタンを棲み家に活動を活発化するのではとの懸念です。

9.11の後に米国がアフガニスタンへ米軍を駐留した理由は、アルカイダの追討でした。

米軍が撤退すれば、アルカイダが復活するのではと心配するのは当然といえば当然です。

この点について、米誌Foreign Affairsが「Will Afghanistan Become a Terrorist Safe Haven Again?」(​​アフガニスタンは再びテロリストの避難所になるか?)と題した論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要約

米国がアフガニスタンから撤退し、タリバンが政権に復帰したことはアルカイダの勝利です。

しかし、それはどれだけの勝利でしょうか?

この質問は、バイデン政権の撤兵という決定の中心に位置します。

バイデン 氏は撤兵という彼の選択を弁護し、月曜日に次のように宣言しました。「アフガニスタンに関する私たちの唯一の重要な国益は、アメリカ本土へのテロ攻撃を防げるかどうかです。」 

 

テキサス州の共和党員のマコール議員は、「私たちは、9.11以前の状態に戻る様だ」と警告しました。

統合参謀本部議長のマーク・ミリー将軍は、アルカイダとイスラム国(ISISとしても知られている)がアフガニスタンのネットワークを迅速に再構築できると警告しました。

 

アルカイダの復活のリスクは現実的ですが、アフガニスタンがジハードテロの安全な隠れ場所としての9.11以前の役割に復帰する可能性は低いです。

タリバンの勝利は間違いなくワシントンの対テロ政策の実行を困難にするでしょうが、アルカイダの弱点、タリバン自身のインセンティブ、そして米国の諜報調整、国土安全保障、遠隔軍事作戦の9/11以降の改善はすべての脅威を軽減します。


アフガニスタン政府の崩壊は、国内のアルカイダの工作員にエネルギーを与えます。

全土を制圧した後、タリバンがアルカイダとの関係を断ち切ると考える理由はありません。

米国の圧力にもかかわらず、2つの組織のつながりは20年以上続いています。

しかし、すべてのジハードがアルカイダほど恩恵を受けるわけではありません。

アルカイダのライバルであるISISも、アフガニスタンで積極的な存在感を示していますが、 ISISはアルカイダとタリバンの両方に激しく対立しており、後者はアフガニスタンのナショナリズムを支持してイスラム教を放棄したと主張しています。

彼らの間には権力闘争があり、タリバンは、ISISを押しつぶそうとする可能性があります。

 

しかし、最も重要なテロ対策の問題は、タリバンがアルカイダに国際テロ攻撃の拠点としてアフガニスタンを使用することを再び許可するかどうかです。

9/11の前に、アルカイダと他の外国のジハードは国内でキャンプを設営し、テロリストはそこで訓練を受け、アルジェリア、インドネシア、リビア、ソマリアでテロ活動を行いました。

米国の諜報機関によると、1996年から2001年にかけて1万人から2万人のボランティアがキャンプで訓練を受けた様です。

 

アフガニスタンを失うことは間違いなく米国の対テロ作戦の努力を妨げ、アルカイダが再び攻撃の出発点として国を使用するリスクを高めるでしょう。

しかし、9.11以前の時代に匹敵する広大な安全な避難所にはなりそうにありません。

西側に対する国際テロを支援するタリバン自身のインセンティブは低いのです。

タリバーンは9.11について相談を受けておらず、1998年の東アフリカ大使館爆破事件など、アルカイダが実施した以前のテロ攻撃を支持していませんでした。

タリバンはまた、9.11に多額の代償を払い、20年間権力を失い、彼らの中核的指導者の多くが米国との戦いで死亡しました。

 

タリバンのスポンサーであるパキスタンも、アルカイダの西側へのテロ攻撃に反対する理由があります。

元米国諜報員のブルース・リーデルは、最近のタリバンの攻撃はパキスタンの支援に依存しており、タリバンは長い間、米国とアフガニスタン政府との戦いの避難所としてパキスタンを使用してきたと主張しています。

パキスタンの同盟国が勝利したことを考えると、パキスタンは現在、米軍の復帰を奨励するリスクを冒す理由がほとんどありません。

これは、西側への壮大なアルカイダ攻撃によって発生する可能性があります。

そのような暴力は、パキスタンの戦略的目的のいずれにも役立ちません。

 

さらに、米国の諜報機関は、ある程度の情報収集能力をアフガニスタンに維持しながら軍事撤退を進めています。

これにより、アルカイダの西側に対する潜在的な陰謀を特定し、テロリストを標的にすることができます。

米軍は、アフガニスタン国外の基地からの空軍力を利用してアルカイダの野営地を攻撃するか、必要に応じて国内で活動する方法を模索してきました。

タリバンが権力を握った今、そのような努力はこれまで以上に必要とされています。

米国がその様な国外からの攻撃を行えば、アルカイダや他のグループが9/11以前のように大規模な訓練キャンプを運営することが難しくなります。

 

最後に、米国の国土安全保障は、9/11以降劇的に改善されており、アルカイダ、ISIS、およびその他のジハード運動を対象とした世界的な諜報活動が行われています。

ボランティアになる可能性のある人は、アフガニスタンに行くのが難しくなり、もし彼らがそれをかいくぐったとしても、帰国時に逮捕されるでしょう。

アフガニスタンの民主化の失敗

タリバンとアルカイダとISSには大きな差がある事がこの論文から理解できました。

タリバンはこの3つの組織の中では、最もましな様ですが、彼らがどの様な統治を行うか明らかにされていません。

願わくば、この論文が指摘する様に、タリバンがアルカイダやISSと一線を画して欲しいものです。

それにしても、今回のアフガニスタンの事件は、中東で民主主義を定着させる事が如何に難しいか改めて認識させました。

1980年代の終わりに東欧の共産圏諸国が相次いで民主化しましたが、あの頃は世界中の国々が東欧の様に民主化と経済成長を同時に達成するものと思いましたが、残念ながら最近の世界の潮流を見ていると、そんな楽観論は過去の遺物である事が良くわかります。

ここら辺りで民主主義国は良く作戦を練り直せねば、非民主主義国がドミノの様に世界中を覆い尽くすかも知れません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。